鎌倉 東京

を得て、清一は漸くの事で、之から直ぐに鎌倉の叔父さんのところへ行きたいといふ意味を母に伝へる事が出来た。

な気がしてならなかつた。それで、彼は鎌倉の叔父さんの家へ行つて、誰も人が居さうもない海辺で、

水筒――そんなものをカバンの中へ入れて、清一は鎌倉へ写生の旅に向つた。

「鎌倉へ来てよかつた。」と、清一は沁々さう思ひながら静かに筆を

答へて了つたのである。――写生をするなら東京ぢやとても駄目だ、と清一は思つた。何故なら彼は恥かしがりの性分

「清ちやん、お前は海が随分好きだね。東京から来るとそんなに珍しいかね。」

同じ日の夕暮時、東京の自家の門をこつそりくゞつたのは、心身共にぐつたりと疲労れた