大井町 本郷 下落合 尾瀬沼 満洲 上高地

大井町で別れると、その時から、私はもう不安と苦痛に堪えがたい思いであっ

あった思いがするが、母の住む家をでて、本郷のＫホテルの屋根裏へ引越した。

（そのころ私は早稲田の第二学院の生徒でした）下落合の矢田津世子さんのお宅で雑誌「作品」の御作拝見しました。たしか

旅行をうながし、二人だけで上高地をブラブラしたいとか、尾瀬沼へ行ってみたい、などと頻りに誘ったものである。それは時が

「四年前に、私が尾瀬沼へお誘いしたとき、なぜ行こうと仰有らなかったの。あの日から、

私の住む日本にいるのが堪えられないと、今は満洲に放浪し、呑んだくれているのですけど、私のことを一生に一人

いるのです。日本も、そして全てのものを捨てゝ、満洲へ、あの人のところへ、とんで行きたくなることがあります。あの方

そして、日本も、又、すべてのものを捨てゝ、満洲へ行ってしまいたいのだ、という。

名声も、日本も、すべてを捨てゝ、満洲へ去りたいなどゝ虚栄児にも時には孤独者の夢想ぐらいはあるだろう

津世子は、私に二人だけの旅行をうながし、二人だけで上高地をブラブラしたいとか、尾瀬沼へ行ってみたい、などと頻りに誘った