早稲田 戸塚 東京 高田馬場 上野 神田 高円寺 大久保

、見ると、自分には矢張り下町生活は不適当であるから早稲田へ戻る、世話になつたことの感謝は云ひ切れぬから君から重々申しつた

ことから私達は知合ひになつて、彼は直ぐ近くの戸塚の下宿にゐるから寄らないか、弁当は俺の部屋に来て喰はないか

いふ肩書が誌されて、また左隅の住所のところには東京市――区――町――番地――方――電話――番

東京市　　区　　町

は二のあしが踏まされたのであるが、また東京に戻つて見ると、何となしに彼の筒抜けたやうな奇体な嗤

に小鐘が懐しくなつて来たので不図また或る朝高田馬場の近くとあつた彼の名刺を当にして尋ねて行つたのだ。

彼は、下町の地理が全く不案内で、朝のうちに高田馬場を出発してあちこちと借間を物色しながら神楽坂を降り、九段へ出

と思つたが、酷く私は寂しくなつてそのまゝ独りで上野へ廻つて動物園へ這入つた。

と借間を物色しながら神楽坂を降り、九段へ出て神田界わいをまはつたのだが、どうも思はしいところが見つからぬの

横切つて大久保へ渡つたが、そこで更に、彼は高円寺の先の何某といふ寺に移つたと聴かされた時には、私

を書き容れてあつた。或る時の手紙には、昔高円寺の寺に棄てゝ来た手車を思ひ出したなどといふことも書いてあつ

下戸塚を二軒訊ねて、それから戸山ヶ原を横切つて大久保へ渡つたが、そこで更に、彼は高円寺の先の何某といふ寺