北海道 山梨 関西 神奈川 九州 千葉 神田 東京 有楽町 銀座

北は北海道、南は九州の果にいたるまで、淋しい漁港は何々銀座という通りがある

。アルジのカリの名は神奈川、左近のカリの名は山梨と定まった。左近は明晩八時に某所で千葉ウジと会い、そこで金庫

は商用と、ぶん殴られから身をまもることを兼ねて、関西へ旅行にでていた。葉子とタコスケが目をまるくしておどろいたの

名を千葉とよぶのである。アルジのカリの名は神奈川、左近のカリの名は山梨と定まった。左近は明晩八時に某所で

「貴公は海の底しか知らねえらしいな。神奈川ウジなる人物が貴公に名言を説いてるではないか。東京は往年の上海

北は北海道、南は九州の果にいたるまで、淋しい漁港は何々銀座という通りがあるものだ。ま

指示をうけることになっている。まんまとマタハリクンにおびきだされた千葉ウジが相棒でその指示に従うとなってはタヨリないことおびただしいが、山梨

名は山梨と定まった。左近は明晩八時に某所で千葉ウジと会い、そこで金庫爆破や適当に眠らせる品々などを受けとって目下

改めて先刻の青年に紹介された。そのカリの名を千葉とよぶのである。アルジのカリの名は神奈川、左近のカリの名

た。ここが午後八時左近のいわゆる都内某所に於ける千葉ウジとの会見場所だ。葉子は大胆不敵にも二十分も前からここ

いないとはフシギであるが、夏川左近という人物が千葉ウジなる人物と会見するのは八時だというからそれまでどこかで

七時チョッキリに千葉ウジが手さげカバンをぶらさげて現れた。一番おそかったのは左近である。

その時はもう千葉ウジの姿はいずこともなく消え失せていたのだ。思わずタコスケの

重大な何物かだね。タコスケがあんな慌てて駈けこまなければ千葉ウジが相当に具体的な何かを左近クンにもらしたかも知れないが

たというから、ここも伏魔殿の出張所で、とうていここで千葉ウジを捕える見込みがつかなかったことは察せられるのである。

左近も千葉ウジをとり逃したのは残念だと思ったが、洋次郎の話では

か見とどけた上できめるつもりでした。あるいは金庫の代りに千葉ウジをなぐり倒して戻ることも考えていました。もっとも、ピストルかなんか突きつけ

「神奈川氏や千葉氏の顔を知ってるから、東京をうろつかせちゃアうるさいと思うのは

いきなり本にしてもらえると思ってもいないが、ちょうど神田へでたついでだから冷やかし半分に大竜出版社を訪ねる気持になったので

夏川左近は久方ぶりで上京のついで古本あさりに神田へでた。そのときふと思いだしたのは大竜出版社のことだ。終戦後

にしか珍しくもなかった。しかし浜の人たちに上乗の東京ミヤゲができそうだ。と考えて、彼自身もまんざらでない気持であっ

「キミは現在の東京が往年の上海だということを知らないようだね。世界の各国から

「キミの見ることのできない世界がこの東京にはあるのだね」

左近の名を知っていたのは、なぜだろう？　東京のあらゆる住人の名を知っていても、彼の名こそは知られ

そこで永遠に消えてしまうのさ。夏川左近なんて漁師が東京のマンナカで消えてなくなったって誰も騒ぐはずはないね」

ウジなる人物が貴公に名言を説いてるではないか。東京は往年の上海だ、とね。まさにこれが真実なんだ。ボクなんぞ

「東京はそんなところかね」

「東京が昔の上海だと知ってる者だけがその恐しさも身にしみて

「分りました。まもりますよ、お言葉を。まるで東京は戦場だね。ボクはもう戦争には行きたくないからな」

妹の身にも危険が及ぶかも知れない。キミさえ東京から立ち去れば、万事すむんだよ」

「キミが東京にいると、困ったことになるんだよ。ボクは脅迫されてる

「キミが東京から立ち去るのが社長のためにもなるのだよ。それを理解して

「とにかく、キミが東京にいると、妙に忙しくなるばかりらしいね。だから、妹の身の

「ボクが東京から立ち去らなければ、あの人は次から次へとさらに困ったことを脅迫

社長がボクに用がないというなら、ボクはよろこんで東京を逃げだしたいや」

それ出動だと大そうなハリキリようである。左近はこれが東京最後の朝飯と冷たいメシにミソ汁をぶッかけて食っているところであった

は二日にわたる怪事件、ならびに昨夜、洋次郎がきて東京をひきあげてくれと頼まれたことに至るまで語りあかしたのである。

でも嗅ぎつけるには骨の折れるものなのだ。キミが東京を立ち去れば自然に葉子は戻ってくる。キミがいま去れば今夜のうち

「キミは東京を立ち去ってくれ。葉子の行方を探したってムダなんだ。奴らの

信じられないのだよ。葉子さんが戻るまではボクは東京を立ち去るわけにいかないよ。キミでダメなら、ボクは自分で必ず葉子

「妹をさらうなんて卑怯じゃありませんか。夏川左近を東京から追いだすためにボクは今日も一日奔走してたんですよ。それ

根が素直な荒海育ちの男ですから、納得できればおとなしく東京を出て行くのです。ただ奴を納得させることができないでしょう。

葉子をさらったものですから、葉子が無事に戻るまでは東京を立ち去らないと怒りだした始末です。ヤブヘビじゃアありませんか」

のです。葉子さえさらわれなければ、彼は自発的におとなしく東京を立ち去る腹になったところなんですよ。今ごろは汽車で東海道を走っ

マスターに談判して敵にレンラクをたのんだところだよ。東京を立ち去るはずのキミが敵の本拠かも知れない場所へノコノコ現れちゃア

「近々東京を立ち去ることになったから、一ぺんぐらい銀座の風にも当りたくて

は平凡なただの出版社にすぎないようだね。キミに東京を立ち去れという誰かの策謀は、もしやキミと葉子さんの恋愛関係

のために一切の謎のセンギをやめましたし、また東京を立ち去りますが、それが同時に葉子さんに捧げる愛情の全部なのです

「思いませんね。完全に。なぜなら、東京を立ち去るべきだからです。一度はトコトンまで突きとめてみたいような気持に

「アナタの兄さんに手をまわして夏川さんを東京から立ち去るようにと企んでるのは私なのです。そのワケをお話して

「夏川さんが東京を立ち去らなければならないワケは話して下さると仰有ったわね」

だ！　しかし、ただ一ツ残る疑問は、夏川左近が東京にいてはいけないという理由である。これが解ければ全てが解ける

「そして、夏川さんと申す方に必ず東京を立ち去るようにとすすめてあげて下さいね」

しかし、おことわりしておくが、この仕事は夏川左近が東京を立ち去ってからだぜ。それまでは絶対にこの話をきりだしちゃアいけ

左近を海へ帰したくはないけれども、どうしても東京の地にとめておいては彼の命の問題だという考えで胸

「これは明日の早版の朝刊だ。東京の朝刊にはもっと尾ヒレがつくはずだがね。住田の野郎どこへ雲がくれ

であり、カツレツだのカツドンなどを食べさせるのである。東京の銀座とはまるで趣きがちがう。

左近にとっては、まっくらな何々銀座の方がなつかしい。東京の銀座がむしろ名をかりたニセモノのような気がするぐらい寂れはてた

釣りたい気持になる。これがホンモノの魚ならと左近が東京の銀座でふとシンミリ考えたのはそれであった。

東京の銀座は何々銀座とちがって、道ではなくて海の底だ。

、御無事で戻りましたね。これでボクも明日は東京にオサラバだ」

にキズだが、いいものだよ。二三日滞在して東京の垢を落すんだな」

「神奈川氏や千葉氏の顔を知ってるから、東京をうろつかせちゃアうるさいと思うのは当り前さ。生かしておいちゃア危い

なさったから全員至急有楽町まで来いというお電話でして、有楽町で降されまして、どこできいても衝突のあった様子がありませ

のお車が衝突して皆さんケガをなさったから全員至急有楽町まで来いというお電話でして、有楽町で降されまして、どこできい

午後七時四十五分。銀座裏の飲食店街にある中華料理芳々亭の隅のテーブルにただ一人、今

たのは左近である。仕方がない。海の男が銀座八丁の中から一軒の中華料理店を見つけだすのは大仕事なのだ。

「銀座にはりこんでる模様ですよ。奴は生れつきタンテイのマネが好きなんだ。

は女の方とレンラクがあってのことにきまってる。銀座のキャバレーなんてのは白雲荘的な伏魔殿と密接なレンラクがあるのが当然

「近々東京を立ち去ることになったから、一ぺんぐらい銀座の風にも当りたくて来たのだよ。キミの店ならまさかの

事は現ナマの支払いだから、この役目にしくじるようでは銀座のマンナカでオマンマは食えない。

左近は酒店をでると氏家と別れ、銀座の人波にもまれて歩いた。

、カツレツだのカツドンなどを食べさせるのである。東京の銀座とはまるで趣きがちがう。

は何々銀座という通りがあるものだ。まッくらな銀座である。まれに一二軒ネオンのついた店があって、それが女

北海道、南は九州の果にいたるまで、淋しい漁港は何々銀座という通りがあるものだ。まッくらな銀座である。まれに一二

しなければならないことが多いのである。しかしうらぶれた銀座通りをスキ腹をかかえてサッソウと歩くのはわるくない。それが海の

はめったに大漁がなくなったから、せっかくオカへあがっても何々銀座の焼芋屋で十円の芋を買うのが精一パイといううらぶれた銀

はてた何々銀座に心がなじんでいるのである。その銀座はふだんは八時すぎると人ッ子一人通らぬような道であるが、

をかりたニセモノのような気がするぐらい寂れはてた何々銀座に心がなじんでいるのである。その銀座はふだんは八時すぎると

とっては、まっくらな何々銀座の方がなつかしい。東京の銀座がむしろ名をかりたニセモノのような気がするぐらい寂れはてた何々銀座

しかし左近にとっては、まっくらな何々銀座の方がなつかしい。東京の銀座がむしろ名をかりたニセモノのような気

気持になる。これがホンモノの魚ならと左近が東京の銀座でふとシンミリ考えたのはそれであった。

だ。深刻な色彩と複雑な模様にいろどられた深海魚は銀座人種によく似ているし、フグに似た肥満型、イシダイに似た

東京の銀座は何々銀座とちがって、道ではなくて海の底だ。深刻な色彩と複雑

東京の銀座は何々銀座とちがって、道ではなくて海の底だ。深刻な