お奈良さま / 坂口安吾

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奈良

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お奈良さま

を当てるのがそもそもよろしくないのであるが、こればかりは奈良の字を当てたいという当人の悲願であるから、その悲願まで無視する

さまと云っても奈良の大仏さまのことではない。奈良という漢字を当てるのがそもそもよろしくないのであるが、こればかりは奈良

お奈良さまと云っても奈良の大仏さまのことではない。奈良という漢字を当てるのがそもそもよろしく

お奈良さまと云っても奈良の大仏さまのことではない。奈良という漢字

お奈良さまはさる寺の住職であるが、どういうわけか生れつきオナラが多かった。

のんだような静夜もあって、せめてその文字だけはお奈良さまをあてたいと身を切られるような切なさで祈りを重ねた年月

モノイリがかさむ。というのは、檀家全部が彼のお奈良を快く認めてくれたわけではないから、告別式やお通夜に大音の発生

私ももう長いことはございませんのでね。近々お奈良さまにお経もオナラもあげていただくようになりますよ」

をして力をノドにこめようとした時に、お奈良さまはその方面に全力集中して聞き耳たてたばかりに例の戸締りが完全

連呼して隠居の返事をうながしていたお奈良さまは、ようやく異常に気がついた。脈をとってみると、ない

は見たことも聞いたこともない。これもみんなお奈良さまのオナラのおかげだ。ありがとうございました」

こういうわけでお奈良さまは意外にも面目をほどこし、お通夜や葬儀の席では口から口

姿を見せることが少くなった。そのあげくソメ子はお奈良さまにこう申し渡したのである。

旗色はわるかった。ために葬式が終ると春山家のお奈良さまに対する扱いは打って変って悪くなり、唐七は距てられてか

お奈良さまの末ッ子に花子という中学校二年生があった。ところが春山唐

この糸子がソメ子にまさるお奈良さまギライであった。葬儀の直後、葬場から一室へ駈けこんで無念の涙

お奈良さまもソメ子にトドメをさされて戻ってきたところであった。

花子には悲しい思いをさせたくないから、お奈良さまも意を決し、放課の時刻を見はからい、学校の門前で校門を出

かみついたのである。法衣のスソがボロボロになり、お奈良さまは足に負傷した。必死に争っているところへ犬の主家の

が住んでいたから、思いがけない闖入者に慌てふためいて、お奈良さまの足にかみついたのである。法衣のスソがボロボロになり、お

とお奈良さまは急いで逃げた。というのは、自責の念にかられて

お奈良さまを自分の居間へ案内して、遺骨や位牌を運んだ。

。ホトケの最後の言葉が、近々あの世へ参りますからお奈良さまにお経もオナラもあげていただきますよ、というのだから、

いるうちにお奈良さまの事件が起った。そこでお奈良さまを口実にして実は私のオナラを差し止めるのが何よりのネライ

がかねての望みでして、時機を見ているうちにお奈良さまの事件が起った。そこでお奈良さまを口実にして実は

それで通してきました。ところが隠居の葬式以来お奈良さま同様に私もオナラの差し止めをくいまして、自分の部屋に自分一人

。これが家内の気に入らなかったのですな。お奈良さまの場合はこれは別格ですが、私どものオナラは人がいやがる

ことについては私にも原因があるのです。お奈良さまほどではありませんが、私もかねてオナラのケがあるところから

説く妙諦がまだ充分には味得できなかった。なぜならお奈良さまの一生はあまりにもオナラに恥の多い一生で、唐七のよう

てうつむいた。まことに悲痛な様ではあるが、お奈良さまは彼の説く妙諦がまだ充分には味得できなかった。なぜならお

なるほどお奈良さまのお寺ではその女房も花子も遠慮がちではあるがオナラを

七。その人こそは悲劇中の悲劇的な人だ。お奈良さまは思わずすすりあげて、

女房子供にオナラの差し止めをくったということだ。お奈良さまもソメ子にトドメを刺されたけれども、自分の女房子供にオナラ

お奈良さまが何よりもその悲痛さに同感したのは、唐七が女房

お奈良さまは涙をふいて、ホトケに読経して寺へ戻った。

その晩からお奈良さまは深刻に考えたのである。自宅においてすらもオナラの差し止め

お奈良さまは胸をかきむしった。アブラ汗が額からしたたり流れている。目を白黒