行乞記 03 (二) / 種田山頭火

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地名一覧

福岡地方

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いつぞや福岡地方で同宿したことのある妙な男とまた同宿した、私を尊敬し

武雄町

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て風が強くなつた、行程六里、途中行乞、再び武雄町泊、竹屋といふ新宿(三〇・下)

秋吉台

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秋吉台の蕨狩は死ぬるまで忘れまい。

彼杵

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彼杵(むつかしい読方だ)まで三時、行乞三時間、また一里歩いてこゝ

折尾町

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四月廿日 曇、風、行程四里、折尾町、匹田屋(三〇・中)

安岡町

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五月廿七日 晴、行程七里、安岡町行乞、下関、岩国屋(三〇・中)

香港

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灯火のうつくしさ、灯火の海(東洋では香港につぐ港の美景であるといはれてゐる)。

可部町

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地名は意味ふかい――それから、湊へ、呼子町へ、可部町へ、名護屋へ。

深江

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一月十七日 また雨、行程二里、深江、久保屋(二五・上)

行乞して宿に着いたのは三時過ぎだつた、深江といふ浦町はさびしいけれど気に入つたところである、傾いた家並も、

四月十一日 晴后曇、行程六里、深江、久保屋(二五・上)

後藤寺町

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四月廿七日 雨、后曇后雨、後藤寺町、朝日屋(二五・中)

四月廿九日 晴、後藤寺町行乞、伊田、筑後屋(三〇・中)

後藤寺町の丸山公園はよろしい、葉桜がよろしい、それにしても次良さんをおもひ

田島神社

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片島へ渡る、一時間ほど行乞、蘭竹の海岸づたひに田島神社へ参拝する、こゝに松浦佐用姫の望夫石がある、祠堂を作つて、お

飯盛山

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飯盛山福泉寺(解秋和尚主董、鍋島家旧別邸)

香春岳

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香春岳は見飽かぬ山だ、特殊なものを持つてゐる、山容にも山色に

香春岳にはいつも心をひかれる、一の岳、二の岳、三の岳、

といふやうなお天気である、かたじけないお日和である、香春岳がいつもより香春岳らしく峙つてゐる。

天気である、かたじけないお日和である、香春岳がいつもより香春岳らしく峙つてゐる。

鹿島

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へ参拝、九州では宮地神社に次ぐ流行神だらう、鹿島から一里、自動車が間断なく通うてゐる、山を抱いて程よくまとまつ

下関市

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五月三日 晴、行程七里、下関市、岩国屋(三〇・中)

宇治

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嬉野茶の声価は日本的(宇治に次ぐ)、玉露は百年以上の茶園からでないと出来ないさうである

筑前

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筑前の海岸は松原つゞきだ、今日も松原のうつくしさを味はつた、文字通り

筑前の海岸一帯は美しい松原つゞきだが、殊に津屋崎海岸の松原は美しい、津屋崎の

芦屋町

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一月八日 雪、行程六里、芦屋町   (三〇・下)

近松寺

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近松寺に参拝した、巣林子に由緒あることはいふまでもない、その墓域が

九州

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朝、裕徳院稲荷神社へ参拝、九州では宮地神社に次ぐ流行神だらう、鹿島から一里、自動車が間断なく

を得意とする店ばかりだ(久留米の六軒屋と共に九州のボクチン代表街だ)。

福岡は九州の都である、あらゆる点に於て、――都会的なものを感じるのは

点に於て、――都会的なものを感じるのは、九州では福岡だけだ。

が少いのである、安宿がかたまつたゐるのは、九州では、博多の出来町、久留米の六軒屋、そしてこの勘六だらう。

加津佐町

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春、行程五里、海ぞひのうつくしい道だつた、加津佐町、太田屋(三〇・中)

大宰府

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十二月廿七日 晴后雨、市街行乞、大宰府参拝、同前。

大宰府三句

福済寺

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・すつかり剥げて布袋は笑ひつゞけてゐる(福済寺)

佐世保駅

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骨となつてかへつたかサクラさく(佐世保駅凱旋日)

佐志

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月廿二日 晴、あたゝかい、行程一里、佐志、浜屋(二五・上)

一月廿五日 晴、行程三里、佐志、浜屋(二五・上)

行乞相は、湊ではあまりよくなかつたが、唐房、佐志ではわるくなかつた、――たとへば、受けてはならない三銭を返し、

下関

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は寄港しないし、時間の都合もよくないので、下関へ渡つていつもの宿へおちつく、三時前とはあまりに早泊りだつた

五月廿七日 晴、行程七里、安岡町行乞、下関、岩国屋(三〇・中)

ないので袈裟を預けて置く、身心鈍重、やうやく夕暮の下関に着いた。

曇が雨となり風となつた、小倉まで三里、下関から風雨の四里を吉見まで歩いた、関門通有のシケで、全身びしよ

唐津市

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一月十九日 曇、行程二里、唐津市、梅屋(三〇・中)

こゝで泊る、唐津市外、松浦潟の一部である、このつぎは唐房――此地名は意味ふかい

四月十日 曇后晴、行程八里、唐津市、梅屋(三〇・上)

観音寺

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鎮西三十三所の第二十四番、田結の観音寺に詣でる、つまらないところだつた。

第二十六番の札所の観音寺へ拝登、堂塔は悪くないが、情景はよろしくない、自然はうつくしいが人間

島原

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大きな榕樹(アコオ)がそここゝにあつた、島原らしいと思ふ、たしかに島原らしい。

榕樹(アコオ)がそここゝにあつた、島原らしいと思ふ、たしかに島原らしい。

二月十六日 廿二日 島原で休養。

嬉野

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嬉野はうれしいの(神功皇后のお言葉)。

早くどこかに落ちつきたい、嬉野か、立願寺か、しづかに余生を送りたい。

嬉野はうれしいところです、湯どころ茶どころ、孤独の旅人が草鞋をぬぐによいところです

もし不幸にして嬉野に落ちつけなかつたら、私はこゝに落ちつかう、こゝなら落ちつける(海を好かない

川棚温泉――土地はよろしいが温泉はよろしくない(嬉野に比較して)、人間もよろしくないらしい、銭湯の三銭は正当だけれど

嬉野と川棚とを比べて、前者は温泉に於て優り、後者は地形に於

に於て優り、後者は地形に於て申分がない、嬉野は視野が広すぎる、川棚は山裾に丘陵をめぐらして、私の最も好きな

宗像神社

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赤間町一時間、東郷町一時間行乞、それから水にそうて宗像神社へ参拝、こんなところにこんな官幣大社があることを知らない人が多い。

福岡市

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わざと中洲――福岡市に於ける第一流の小売商店街――を行乞した、行乞相はよかつ

名古屋

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さんから、神戸の事、大阪の事、京都の事、名古屋の事、等、等を教へられる、いゝ人だつた、彼は私の『

思案橋

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思案橋といふのはおもしろい、実は電車の札で見たのだが、例の

佐世保市

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三月廿二日 曇、暖か、早岐町行乞、佐世保市、末広屋(三五・中)

雲心寺

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夜は三杯機嫌で雲心寺の和尚を攻撃した、酒、酒、そして酒、酒よりも和尚はよ

赤坂

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一月十五日 曇、上り下り七里、赤坂、末松屋(二五・中)

大阪

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床をならべた遍路さんから、神戸の事、大阪の事、京都の事、名古屋の事、等、等を教へられる、いゝ人

有家町

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二月十四日 曇、晴、行程五里、有家町、幸福屋(三五・中)

佐賀市

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月三日 晴、春だ、行程わづかに一里、佐賀市、多久屋(二五・中)

佐賀市はたしかに、食べ物飲み物は安い、酒は八銭、一合五勺買へば

川上といふところは佐賀市から三里、電車もかゝつてゐる、川を挾んだ遊覧地である

に似てゐる、いはゞ遊覧地で、夏の楽園らしい、佐賀市からは、そのために、電車が通うてゐる、もう一度来てゆつくり遊びたい

だけれど)を迎へるのに一村総出で来てゐる(佐賀市で出征兵士見送の時もさうだつた)、これだけの銃後の力が

小城町

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三月十日 雨となつた、行程二里、小城町、常盤屋(二五・上)

小串町

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五月廿三日 晴、行程六里、小串町、むし湯( ・ )

油山

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雷山の水もよかつたが、油山には及ばなかつた、この宿の水はよい、岩の中から湧いて

諫早町

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二月廿四日 廿五日 行程五里、諫早町、藤山屋(三〇・中)

福川

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五月七日 晴、行程二里、福川、表具屋(三〇・上)

街は祭の、世間師泣かせの雨がふる(福川)

平戸

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此宿もうるさい、早く平戸から五島へわたらうと思ふ、それにしても旅はさみしいな、行乞も

わるいかは知らない、また知らうとも思はない、しかし平戸はよいところ、何だか港小唄でもつくりたくなつた。

平戸にはかなり名勝旧蹟が多い、――オランダ井、オランダ塀、イギリス館の阯

平戸よいとこ旅路ぢやけれど

博多

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九時の汽車で博多へ、すぐ市役所に酒君を訪ねたが、忙しいので、後刻を約して

博多名物――博多織ぢやない、キツプ売(電車とバス)、禁札(押売、

ある、安宿がかたまつたゐるのは、九州では、博多の出来町、久留米の六軒屋、そしてこの勘六だらう。

波多津

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八時から六時まで歩きつゞけた、黒川と波多津とで行乞、海岸路山間路、高低曲折の八里を歩いて来たの

和銅寺

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九州西国第二十三番の札所和銅寺に拝登、小さい、平凡な寺だけれど何となし親しいものがあつた、

岩戸山

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町としても風景としてもよい、海岸一帯、岩戸山、等、等。

佐世保

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佐世保はさすがに軍港街だ、なか/\賑やかだ、殊に艦隊が凱旋して来

佐世保の道路は悪い、どろ/\してゐる(雨後は)、まるで泥海だ、

ては困るけれど、受けなければなほ困る(いつぞや佐世保で志だけ受けるといつたら、その子供が泣きだした)、ハンカチーフでいたゞいた

西新町

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へ)、と白地に赤抜で要領よく出来てゐる(西新町のそれはあくどかつた、字と絵とがクドすぎる)。

福島

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十二月廿四日 晴、徒歩八里、福島、中尾屋(二〇・上)

京都

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をならべた遍路さんから、神戸の事、大阪の事、京都の事、名古屋の事、等、等を教へられる、いゝ人だつた、

神戸

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床をならべた遍路さんから、神戸の事、大阪の事、京都の事、名古屋の事、等、等を

熊本

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申の歳、熊本の事を思ひだす、木の葉猿。

后晴、足と車とで十余里、姪ノ浜、熊本屋。

日 曇つて寒かつた、霙、姪ノ浜、熊本屋(二五・中)

そして宿は屋号が示すやうに熊本県人だ、お互に熊本の事を話し合つて興じた。

新聞へは私は好感を持つてゐないけれど、それが熊本といふ観念を喚び起してなつかしかつた。

入雲洞君はなつかしい人だ、三年ぶりに逢うて熊本時代を話し、多少センチになる。……

今日の昼食は豆腐屋で豆腐を食べた、若い主人公は熊本で失敗して来たといふ、そこで私独特の処世哲学を説いて

長崎

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といふ、墓を流したものはないさうな、それだけ長崎人の信心を現はしてゐる。

長崎では、家屋敷よりも墓の方が入質価値があるといふ、墓を

長崎はよい、おちついた色彩がある、汽笛の響にまでも古典的な、同時

このあたり――大浦といふところにも長崎的特殊性が漂うてゐる、眺望に於て、家並に於て、――

・けふもあたゝかい長崎の水

二月四日 曇、雨、長崎見物、今夜も十返花居で。……

もののありがたさ、あたゝかい友に案内されて、長崎のよいところばかりを味はゝせていたゞいてをります、今日は唐寺

友へのたよりに、――長崎よいとこ、まことによいところであります、ことにおなじ道をゆくものの

長崎の句として

つて、そしてまた上つて下つて、――そこに長崎情調がある、山につきあたつても、或は海べりへ出ても。

長崎の銀座、いちばん賑やかな場所はどこですか、どうゆきますか、と行人

長崎の人々、殊に子供は山登りがうまからうと思ふ、何しろ生れてから、石の

上へと伸びてゆく、山の家、――それが長崎市街の発展過程だ。

ひきとめられるのをふりきつて出立した、私はたしかに長崎では遊びすぎた、あんまり優遇されて、かへつて何も出来なかつ

とにもかくにも、長崎よ、さようなら、私は何だか、すまないやうな、放たれたやう

今朝は烟霧といふものを観た、それは長崎港にふさはしいものだ、街の雑音も必ずしも悪くない。

長崎から坂を登つて来て登り尽すと、日見墜道がある、それを

今日は県界を越えた、長崎から佐賀へ。

さんは着物は持つてゐるが銭は持つてゐない、長崎からはる/″\門司にゐる息子を尋ねてゆくといふ、同宿の人々

鮮人が多いのだらう、檣のうつくしい港として、長崎が灯火の港であることに匹敵する如く。

佐賀

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福岡佐賀の県界を越えた時は多少の感慨があつた、そこには波

佐賀へは初めて来たが、市としては賑ふ方ぢやない、しかし

、天候も妙だつたが人事も妙だつた、先づ、佐賀を立つて一里ばかり、畦草をしいて一服やつてゐると、

今日は県界を越えた、長崎から佐賀へ。

福岡

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福岡佐賀の県界を越えた時は多少の感慨があつた、そこには

いつぞや福岡地方で同宿したことのある妙な男とまた同宿した、私を

夜来の雨が晴れを残していつた、行程二里、福岡へ予定の通り入つた、出来町、高瀬屋( ・中)

て、――都会的なものを感じるのは、九州では福岡だけだ。

福岡は九州の都である、あらゆる点に於て、――都会的なものを

だつた(まだ雲のゆくやうではないけれど)、しかし福岡は――市部はどこでも――行乞のむつかしいところ、ずゐぶんよく歩いた

大浦天主堂

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・冬雨の石階をのぼるサンタマリヤ(大浦天主堂)

新宿

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此宿は悪くないけれど、うるさいところがある、新宿だけにフトンが軽くて軟かで暖かだつた(一枚しかくれないが)

、行程六里、途中行乞、再び武雄町泊、竹屋といふ新宿(三〇・下)

銀座

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長崎の銀座、いちばん賑やかな場所はどこですか、どうゆきますか、と行人に訊ね

浜町

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浜町行乞、悪路日本一といつてはいひすぎるだらうが、めづらしいぬかるみで