金華山 / 大町桂月
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に赴くには、鹽釜より氣仙沼行きの汽船に乘り 鮎川に下り、山一つ越えて、牡鹿半島の最端に出で、二十四町
とする賽者多く、雜沓甚しきに辟易して、せめて鮎川の漁家なりともと思ひしが、幸なる哉、石ノ卷鹽釜行きの汽船
杯をかたむくる程に、微醺を催し來りぬ。船、鮎川にとまりたるに、下る客なくして、乘る客あり。赤毛布來りて上等
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金華山
鹽釜の繁昌するは、一半は松島と金華山とある故也。松島と金華山ありて、東北の天地爲に寂寞ならざる
は、一半は松島と金華山とある故也。松島と金華山ありて、東北の天地爲に寂寞ならざるを覺ゆ。余は松島に遊び
ざるを覺ゆ。余は松島に遊びしこと二度、金華山に遊びしこと一度、暫らく未遊者の爲に東道の主人たらざるべからず
ほ十分なりとせず。松島に遊ばむものは、必ず金華山に遊ばざるべからず。大小數十の島、島として松を戴かざる
はず。塵外の別天地、東海の最大壯觀として、金華山を取らむとする也。
金華山に赴くには、鹽釜より氣仙沼行きの汽船に乘り 鮎川に下り、山
ずして、乘客を主とす。その乘客も金華山參詣者多し。成田鐵道、成田の不動にて成立ち、琴平鐵道、琴平祠にて成立ち
鐵道、琴平祠にて成立ち、氣仙沼通ひの汽船は、金華山にて維持す。迷信の交通を助くること亦大なる哉。
島を左に見て、外洋に出づれば、船頭遙に金華山の峰尖を認む。松島灣口をふさげる、桂、野々、宮戸、寒風澤の
灣を過ぎて、波あらき牡鹿半島の一角をめぐれば、金華山、面に當る。船は朱華表の下に到りてとまる。船のこゝ
之に應ずるものなかりき。それもその筈なり。金華山の奇は、裏山にあり。裏山を廻らざるものは、金華山に遊びたり
の奇は、裏山にあり。裏山を廻らざるものは、金華山に遊びたりとは云ふべからず。路は東に下る。斧斤入らざること
に浮沈し、手をのばさば、之を捫すべし。金華山の奇觀こゝに至りて極まれり。
て、話しあうて見れば、人に鬼はなし。われも金華山を下りたる時、一杯をと思ひたれど、祠官にねだることも出來ず。
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立派なる旅館あり。瑞巖の古刹を訪ふべし。五大堂、雄島の間に逍遙すべし。されど、これ未だ松島を見たるものと云ふべからず
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鹽釜の繁昌するは、一半は松島と金華山とある故也。松島と金華山ありて、東北の天地爲に
繁昌するは、一半は松島と金華山とある故也。松島と金華山ありて、東北の天地爲に寂寞ならざるを覺ゆ。余は
、東北の天地爲に寂寞ならざるを覺ゆ。余は松島に遊びしこと二度、金華山に遊びしこと一度、暫らく未遊者の
松島に遊ばむには、鹽釜にて汽車を下り、停車場前にて、舟をやと
二里、幾十の島嶼、舟を送り、舟を迎ふ。松島には、立派なる旅館あり。瑞巖の古刹を訪ふべし。五大堂、雄島の
。五大堂、雄島の間に逍遙すべし。されど、これ未だ松島を見たるものと云ふべからず。眞に松島を見むとせば、舟
、これ未だ松島を見たるものと云ふべからず。眞に松島を見むとせば、舟をやとひて四大觀めぐりをなさざる
されど、これのみにてもなほ十分なりとせず。松島に遊ばむものは、必ず金華山に遊ばざるべからず。大小數十の島
十の島、島として松を戴かざるはなく、松島の景、奇にして穩也。金華の一島、周圍數里、六十八峰
帆影をも見ず。西は近く牡鹿半島を望み、遠く松島の群島を望む。北は重なれる峯にかくれて見えず。南は遙に
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上野公園の新緑に送られて、來て鹽釜神社に詣づれば、祠側の
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島中の最高峯にして、四方の眺望極めて佳也。富山の眺望之に次ぎ、扇谷之に次ぐ。多聞山最も劣れり。多聞は
めぐりをなさざるべからず。四大觀とは、大高森、富山、扇谷、多聞山、これ也。大高森とは、宮戸島中の最高峯
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の突撃に當り、濤怒り、巖叫ぶ。前面には江ノ島の列島波間に浮沈し、手をのばさば、之を捫すべし。金華