碓氷峠 鞍馬山 愛宕山 小石川 高尾山 千駄ヶ谷町 東京 新宿 千駄ヶ谷 吉祥寺 荻窪 高尾 江ノ島

養ふ處、生死尊卑の別はあれど、これやこの、碓氷峠ならぬ高尾山、大正の日本武尊と、裸男馬鹿ながらも、人に背いて、

謠に堪能なる檜葉菩薩、鞍馬山を聯想し給ひけむ。『先生はまだ此處にか』と打ち伴れて、行け

む』。『こゝの清水で、一寸休みませう』。愛宕山と稱する處にて、まづ一と休み。半ば頃とおぼしき處にて、『裸男

小石川の小日向臺に、檜葉菩薩と稱する賢人あり。門内の檜葉の樹、偉大

夜の高尾山

。山登りの一事は、我等に敵する能はざるべし。高尾山に誘ひて、一つ困らせて見ては如何に』と。夜光命眉を顰めて

、山行を勸む。六一菩薩、裸男を顧みて、『高尾山の高さは如何ばかりにや』と問ふ。『勾配は九段坂よりも緩やかなり、路程

辭を卑うして、やうやつと思を果したるこゝで高尾山の絶頂、西に富士、東に日光、關八州は寸眸の中に收まる。

驛より程近き千駄ヶ谷町に、六一菩薩と稱する洋畫の聖あり。六十一歳になりて初めて一

る賢人あり。門内の檜葉の樹、偉大にして、東京に冠たるを以て、斯く名づく。啻に其の檜葉が偉大なるのみ

、然るに裸男事故ありて、豫期の時刻より後れて新宿驛に駈け付く。爲に一と汽車後れたり。驛前の旗亭に團

驛より程近き千駄ヶ谷町に、六一菩薩と稱する洋畫の聖あり。六十一歳になりて

寅藥師が一切取揃へて汽車に乘る。中野、荻窪、吉祥寺の諸驛を經るほどに、一望茫々、昔の武藏野の俤なしとせ

蕭何の寅藥師が一切取揃へて汽車に乘る。中野、荻窪、吉祥寺の諸驛を經るほどに、一望茫々、昔の武藏野の俤なし

氣位を高尾の山に上り來て

雙眼鏡を取出して、身動きもせず、ぢつと見入り給ふ。江ノ島のこなたの片瀬は、菩薩の夫人の病を養ふ處、生死尊卑の別

六一菩薩の挨拶。それで馬鹿者も大願成就。『あれが江ノ島なり』と指させば、檜葉菩薩ポケツトの中より雙眼鏡を取出して、身動き