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泣くので、栃木の方へ歸してしまい、父は青山で一人きりで自炊生活をしていたそうです。終戰から一カ月も

徳富と言う共産黨の女の人で、もう一人は、山梨の田舍で百姓をしている久子という人です。

に思つていたら、どういうわけか急に、もう一度、山梨縣の久子の家に行つて見たいような氣がした。……ところ

して僕は再び寢ころがつたのです。その瞬間に山梨の山内久子のことをフッと思い浮べました。そして急に、もう一度そこへ

あれからズッと僕は山梨の久子さんの家に厄介になつていました。いろんな百姓仕事にも馴れ

のたびに、僕はあちこちと歩きます。そして疲れ切つて山梨へ戻つて行くのです。あの女の事を除いては、僕の生活は

行き、春子さんに僕の所在をたすね、こうして山梨へやつて來たのです。

――遂に僕は我慢が出來なくなりました。そして山梨を逃げ出したのです。ルリにはもちろん、久子さんにも默つて、僕は

山梨の久子さんの事も考えましたけれど、あそこにはルリが居ます。行く

こちらを向いてルリが立つていたのです。例の山梨での身なりと同じで、顏色は、附近の樹の葉の色の反射の

ん。しかし、東京へ戻つたら、一度ルリと二人で山梨の久子さんの所へ行き、それから高圓寺のルリの家へ行つて親

路はだんだん上野公園の裏の方へ※りこんで行く。そのうちに、言葉を止めてヒョイ

…御存じの通り、こんなことになりまして、……もと京都から來た貧乏華族の家でして、それだけに又融通が利かないと

僕は今これを、妙な所で書いています。千葉縣の海ぞいの宿屋です。猛烈な波の音で家がブルブルふるえます。

それから、僕ら三人は、この千葉縣の海岸に來たのです。

ましたが、手がかり無し。仙臺と、靜岡と、それから福岡へも一度行つて見ましたが、皆ちがいます。やつぱり、はじめから無理

貴島勉とあつて、わきにＤ――興業株式會社、日本橋うんぬんと所番地が刷つてある。「どんな人だ？」と聞くと「

乘りつぎ、約一時間後――午後おそく、私はその日本橋Ｒ町の瓦礫の中に立つていた。あたり一面燒け落ちてしまつた

で相手が言つている間に私は不意に思い出した。東京空襲が本格的にはじまつてから間の無い頃、警報が出て、燈火

の場合に一時身を寄せると言つたようなお家は、東京に？」

が現われ、スタスタとこつちに近づいて來た。その頃の東京では珍らしい位に高級なリュウとしたなりをして、革のカバン

ていまして、人手が相當動かせるもんですから。そいで東京のここへ出て來て、いえ、こつちでは運送の請負だけじや

と言う野郎はインチキ野郎だけど、そういう技術だけは、東京で一二かも知れません。以前に僕の方の雜誌の寫眞部で

それから、もう一つ、僕もよくは知りませんが東京の何とか言うギャングみたいな一黨と黒田の間が妙なことに

對してすこしも手出しをしないで、ただ彼女が無事で東京に住んでいることを知るだけで滿足しているように言うべきであろう

目にかかれる豫定でいましたが、どうしても東京へ歸れなくなり、あなたをスッポカした結果になつてしまいました。申しわけ

續いているため、まだ、こちらにおります。當分東京には歸れないと思います。實はこれは、あの晩荻窪で、聞い

僕があの晩東京へ歸れなくなつたわけは、佐々からお聞きくださつたと思います。

この前、東京のＲの事務所でお目にかかつた時に氣附いたのですが

は小さな女中を使つて暮していたのですが、東京空襲がはげしくなると、その栃木の山奧から來た女中は「こわい」と

「東京の連中のなにかね？」

東京の店で菊次が四五日前に斬られてます。東京のは相手がわかつているし、なんの事はありませんけどね。

も金の野郎が櫻木町から連れて行かれたし、東京の店で菊次が四五日前に斬られてます。東京のは相手が

の頭に國友大助の事が浮び上つていた。東京の頭かぶの男というのが、それでは國友の事であろうか

かまるで見當がつきませんでした。ただ氣配で、東京の中心部あたりのゴミゴミした町中であることだけがわかりました。やつぱり

やかましく言われ、それが例の通り必要以上に行き過ぎて東京中がなんでも無い時まで眞つ暗な時分でした。ルームライトはもちろん

が走り出しても方角など、まるきりわかりません。當時、東京が空襲を受けはじめたばかりの頃で、燈火管制がムヤミにやかましく言われ

てあるのが九人、その中の六人が東京や東京附近で、三人が地方になつています。住所の書いてない六

の書いてあるのが九人、その中の六人が東京や東京附近で、三人が地方になつています。住所の書いて

下さつたリストの十五人の女の中で六人が東京附近で、三人が地方で、あとの六人が住所不明になつて

その一人は、東京の葛飾區に居る人で、徳富と言う共産黨の女の人で、

に一度たずねて來て、それから東京へ歸り、あちこちと東京近くで三四人の女の人と會つて、それから又、一月

は二度目です。前に一度たずねて來て、それから東京へ歸り、あちこちと東京近くで三四人の女の人と會つて、

つて歩くことが、すつかりイヤになつた。第一、東京という所がイヤになつてしまつた。

いつまでも此方を見ている。しかたが無いので「東京から久子さんをたずねて來てこれこれと言うもので」と言う。しかし

久子が山内杉雄と結婚したのは、戰爭中、東京に於てで、當時、久子は或る映畫俳優養成所に入所したばかり

自分ながら、その點では、よくやれるもんだと思う。東京に生れた女がね。これで滿洲に行つてから、あちらの開拓

僕は東京へもどつて來たのです。それから、東京であちこちと二カ月ばかり過して、又思い立つて、ここへ來たわけです。

その晩は泊めてもらい、翌日になつて僕は東京へもどつて來たのです。それから、東京であちこちと二カ月ばかり

東京の近くのＴ市の場末の、アパートとも旅館ともつかぬ、室數

東京の郊外のＳに住んでいる。

、この方が結局氣樂なため、近ごろでは自分一人東京に出つきりになり、此の家に住み込んでやつていて、夫や

たが、しばらく前に僕は、女を搜して、東京近在をあちこちしている最中に、偶然に品川驛のプラットフォームで、黒田組

で出來たものです。三日に一囘位の割で東京まで通います。あまり大してもうかりはしません。たまには、つかまります。つかまれ

上京のたびに方々搜しまわり、リストの中の東京と東京近くの人たちは一つ殘らず當つて見ましたが、それらしい人

ん。上京のたびに方々搜しまわり、リストの中の東京と東京近くの人たちは一つ殘らず當つて見ましたが、それ

。ルリにはもちろん、久子さんにも默つて、僕は東京へ來てしまいました。

そんなわけで、僕が東京に出て間も無く立川景子さんの所を訪ねて行つたのも、

かもしれません。ルリが、僕の後を追つて東京へ出て來て、（僕が女を搜している事は、久子

まだ僕の氣持はハッキリきまつていません。しかし、東京へ戻つたら、一度ルリと二人で山梨の久子さんの所へ行き、

貴島の住所を聞くと荻窪だと言う。「じや、御足勞だけど、君、綿貫君を家

大體の見當を地圖でしらべた。住んでいるのは荻窪だと言つていたが、名刺にはそれは書いてないから、さしあたり

點がわかるものだから困つた顏で「なんでしたら、荻窪の僕の住いの方へ來て見てくださいませんか」と言つた

前に、とうとう火を落しちやつた。サランパンだあ。こいから荻窪へもどつて、なんか食つて寢るんだ」

「どうでしよう、これから荻窪へ行つてくださらんでしようか？　僕は横濱までチョット行つて、今夜

しまいこんで、知らん顏をしていた。以下は、荻窪の彼等の住いに着くまでに、私と久保が歩いたり電車に乘

出た。久保は、私を案内して行きながらも、荻窪に着いてからも、實に淡淡として私に對した。冷淡と

「荻窪の家は、君と貴島君と二人で住んでいるの？」

對話がそこまで運んだ時に、私たちは、荻窪の驛から八九丁も歩いたろう、土地がすこしダラダラと窪地になつたふう

どこに居るんです？　住居が荻窪だとだけで、荻窪のどこだかわからないし、しかたが無いので、驛の所で待つ

「……貴島さん、どこに居るんです？　住居が荻窪だとだけで、荻窪のどこだかわからないし、しかたが無いので

あの晩、横濱の用事をすませて、すぐ荻窪へもどり、お目にかかれる豫定でいましたが、どうしても

には歸れないと思います。實はこれは、あの晩荻窪で、聞いていただくつもりでした。しかし、當分お目にかかれそうに

「住んでいるのは荻窪だが………」

ない。私はその足で荻窪へ向つた。今頃佐々が荻窪の防空壕にぼんやりしているとは思えないが、ほかにしようがない

は佐々に會つて見る以外にない。私はその足で荻窪へ向つた。今頃佐々が荻窪の防空壕にぼんやりしているとは思えない

荻窪の例の燒跡の近くまで來た時は既に夕方で、西の方に

策太郎が「よかろう。案外に、國友の方じや、まさか荻窪に現われたりはすまいと思つているだろうから、二三日居て見るさ

とんでもない、横濱に居てもこれだけ危險なのに、荻窪などに歸る手は無いと反對されたが、貴島はきかなかつ

が不可能になつたものらしい。そこに、貴島が急に荻窪に歸ると言い出した。とんでもない、横濱に居てもこれだけ危險な

荻窪の防空壕の前で姿を消して以來、十日たつても一月たつ

いつかは、荻窪で御迷惑をおかけしました。杉田と私とが逃げ出した後で

あの晩荻窪に押しかけて來たのは、國友の子分たちです。後でわかつた事

黒田策太郎は前から僕に言つていたのですが、荻窪で襲撃された後で、どうしても半年ばかり身をかくしてくれ

な形になつてしまつて、最後には、とうとう、荻窪での、あんなイヤなゴロツキ同士の斬り合いまで見せてしまうことになりました

が、前に偶然に一本杉に會つた時に、久保が荻窪の防空壕を引きはらつて、赤羽にあるイモノ工場の工員寮に住んで

てない時は、たいがいダンスホールだとかレヴュだとか、上野だとかラクチョウなぞに居るんじやないかな。女好きですからね奴

いや、そうでは無い。だつて、あの女を上野で見つけて、最初にあの女のそばに近寄つた時に、俺の

時によつて畫家のモデルになつたり――そのほか、上野や淺草かいわいで、例の案内ガール、つまりカフエーの客引きのオトリをしたり

ルリがその後どうしたのか、その次ぎに上野で逢うまで、僕は知りませんでした。

その間も、毎日のようにその頃泊つていた上野のテント旅館を出ては、タミ子の所に通つていたのです

おもしろい事に、此處に來たらタミ子が、上野にいる頃よりも非常に落ち着き、頭も良くなつたようで、夜も

のゴミゴミした町中であることだけがわかりました。やつぱり銀座裏か京橋へんではなかつたかと思います。

…（いや、實は、それからしばらく經つてから、銀座裏や新橋京橋あたりの裏通りを、すいぶん歩きまわつて心當りの

、ハッとしたのよ。……タミさんは戰爭中、銀座へんでバアかなんかの女給さんしていたそうだね、Ｍさんと

、實は、それからしばらく經つてから、銀座裏や新橋京橋あたりの裏通りを、すいぶん歩きまわつて心當りの所を見つけ

して、東京近在をあちこちしている最中に、偶然に品川驛のプラットフォームで、黒田組の杉田――あなたも御存じの一本杉です――

ている暇も無く、押し出されるようにして、僕は日暮里へ行きました。燒跡の小さいバラックに、醫院のカンバンが出ているの

つた時に、久保が荻窪の防空壕を引きはらつて、赤羽にあるイモノ工場の工員寮に住んでいる事を聞かされていたの

た町中であることだけがわかりました。やつぱり銀座裏か京橋へんではなかつたかと思います。

實は、それからしばらく經つてから、銀座裏や新橋京橋あたりの裏通りを、すいぶん歩きまわつて心當りの所を見つけ出そう