秩父 甲州 名古屋 甲府 東京 小諸

行けば、川上、野辺山……それを抜けてズンズン行けば秩父へ出られる……何度も、そんな風に聞かされているもんだから、つい

なんぞ、有るような無いようなもんで、下手をすると甲州へ出やすよ。

女　……甲州の慎太郎兄さんとこ、慎市ちゃん、試験、どうしやした？

ちゃんでやす。……二番目の息子が、今言った甲州にいる慎造さんで、三番目は、よそへ養子に出て、四番目は

女　いえ、甲州の慎造兄さんも出征したんだけど、けがあして戻って来やした

当惑して、その辺を見廻した眼が青年に行き）甲州の孫でやすよ。二番目の慎造と言う野郎の総領だ。

に負けねえ……なんせ、しかし、荷受先が、以前から名古屋あたりばかりで、東京へは、まだ、へえ、いくらも出して無え。――

て）喜十がとこじゃ、どうでも、それじゃ、甲府へ出るちうの諦めねえだか？（中年男、ひげ面でガクリとうなずく）

作りつづけて行く人手は無え。喜十がどうしても甲府へ出るんならば、致し方無え、丁度整理する時期も来ているで

かかる。このまま行けば両方とも首くくりもんだ。んだから甲府へ出て家を一つにして俺あ職工になる。行くなと

からっ小作、やってけねえものは、やってけねえ……甲府の娘の内も見てやんねえばならねえし、暮しが二手に分れ

…先刻話していられた、その、家を畳んで、甲府の方へ行くといううちの事で――

、とてもやってけねえと言うんで、仕方が無えから、甲府の家に一緒になっちまって、自分は工場へでも、どこへで

それだ！　喜十というマットウ仁でやすがね、甲府に縁付いた妹の家が貧乏で子供が多くてね、おまけにその妹

ながら、ヒョイと声を出す）……へえ、喜十は甲府へ出たら、よくねえづら。

……甲府は甲府でやって行きゃ、ええ。なんなら、甲府を引払って喜十がどこへ皆で来るだ。

荒してしまうことになると、ことだあ。……甲府は甲府でやって行きゃ、ええ。なんなら、甲府を引払って喜十がどこへ

段歩も荒してしまうことになると、ことだあ。……甲府は甲府でやって行きゃ、ええ。なんなら、甲府を引払って喜十が

さいせんを巻き上げられてる暇に、その金で、チョックラ小諸か甲府にでも出かけて、立派なお医者の先生さまに見て貰うて、

青年　はあ東京……横須賀から、東京へ寄って、そして――。

青年　はあ東京……横須賀から、東京へ寄って、そして――。

百姓　東京へ行くんだら、なんでも、その次ぎの六時ので行っても

青年　なに、東京へチョット寄って、今夜中に横須賀へ出なくちゃならんもんだから。

、お前さまこそ、歌あ唄って聞かしておくんなせえ。東京の衆は、うめえづら。……（チュン、チュンと思い切りよく手ばなを

百姓　東京には、こんなもん売っていやすかえ？

中年　あんた東京でやすか？

中年　東京へんでは、近頃、だいぶ、この、野菜物なんぞ不自由だと言うが、

、いくらも出して無え。――んでも、この、東京あたりも、前からみると、だいぶ変ったそうでやすね？

なんせ、しかし、荷受先が、以前から名古屋あたりばかりで、東京へは、まだ、へえ、いくらも出して無え。――んでも、

中年　この辺からもチット東京にも出したいと思うとるが……こんな土地で、いろんな野菜は出来ねえ

です。（微笑）……実は、休暇をいただいて、東京に出ても、親戚がチョットと友達が一人二人あるきりで、親も

女　へえ、いや……二三日前、小諸に行ったもんで捜したけど、近頃配給になってしまって、ロクなもん

シゲさんは近頃ひどく痩せたように見えると、この間、小諸の賀山君の妹さんから言って来ている。……賀山さんと言う

頼んじゃおさいせんを巻き上げられてる暇に、その金で、チョックラ小諸か甲府にでも出かけて、立派なお医者の先生さまに見て貰う