天狗外伝 斬られの仙太 / 三好十郎
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公が幕府に追討を願われたのは主として小石川に居るお為派の朝比奈様佐藤様等の策謀と言うことになるか?
しているのが、解らねえのか? 落し穴だ。小石川のお上を動かし、佐藤、朝比奈なんどと言う人を幕府がけしかけたのも、
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右奥へ曲って消えている。奥水田の果ては岩瀬町から柿岡町へかけての低い山脈にくぎられ、右奥遠く高く肩を見せているのは
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川を渡り取手町に入って二つに岐れ、一方は土浦へ、一方は守谷へ通ずる、その三叉に立った茶店の前。従って
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出せば長州と因州が起つことになっているそうだ。関東で俺達が江戸のお尻を突っつけば、それ後顧の憂いという奴だろう、
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して進発あり。田沼様の公方がた本月三日には古河に御着陣、足利学校に御在陣、高の知れたる天狗党、シャニムニ踏み破り
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9 越前、木芽峠
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れて水戸へ下って、お世つぎをトッコに取って水戸城籠城と来た、これを圧えにお乗り出しが宍戸の殿様は松平頼徳侯、
穽に落ちるようなもんだ。宍戸様の手と合して水戸城を落して立籠るつもりだろうが、それが穽だ。まだ考えが青いや。
軍艦を廻しましたぜ。もっとも出発の時の理由は、水戸城に籠城したお為派鎮圧のためと言うことになっている。が、
加多 ……宍戸侯は水戸城において御自害、榊原先生以下数十人は斬に処せらる。死罪、禁
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などは殿軍にまわって、まだ筑波だ。湊へ来い。笠間へは廻るな。道は山を突切れ。……利有らずして逃げる
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もほどが有る。江戸じゃこの騒動を口実にして、水戸藩の持っている幕府での勢力と、それから、勤王派とを、両方とも
とは言いながら、まだそれだけの役者はいますぜ。水戸藩あたりの田舎千両役者たあ、打つ狂言のケタが違う。そんなことを少しも考えねえ
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※大江戸とならぬ昔の武蔵野の、尾花や招き寄せたりし、張りと意きじの深川
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来る)おお早田! また水戸へか? 本隊は太平山だぞ!
残り及び一番隊、三十八名は裏山より別手として太平山へ直行! 遊隊十五名は麓において味方に合し、結城へ。
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ことではない。しかしことは迫っているらしい。京都で薩摩の者達ともしきりに往来していられたと言う情報も有ります。
どんな考えからか知らんが、吉村などの手を経て薩摩の奴等と往来している事実がある。どうしてあれを生かして置く
せっかくの鷲尾さんの顔をつぶし、引いてはようやくまとまりかけた薩摩の具合を損ねましよう。戸外はすぐ通りだし。どんなことになっても
江戸っ児だ。買ったっ! よしじゃこれだけは御愛嬌に薩摩の守だ、それ!(と瓦版の二、三十枚を掴んで、観客席
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れ、右奥遠く高く肩を見せているのは加波山と足尾山である。
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は据えたが、天狗は筑波でやっぱりあばれる。追討軍が常陸国は高道祖で天狗を破ったのが先月は七日、ところが天狗もさる者
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寄りの方とは反対側。江戸千住を出た街道が我孫子を経て利根川を渡り取手町に入って二つに岐れ、一方は土浦
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私んとこへも尋ねておいでなせえ。そうよ、あの筑波を左の肩越に後ろに見て南の方へドンドン下ってスッカリ山の
棒か。ハハハ。(二人歩く。遠くを望んで)ああ筑波が見える。(七三に)
懐中からサイを出してひねり)半と出りゃ鹿島、丁と出りゃ筑波の賭場だ。一遍こっきり。よっ!(サイを投上げ受けて掌を開き)
長五 合点だ。筑波にゃ仏の瀧次郎、いい顔の貸元で、つき合いの日は浅えが妙な
仙太 ならば下らねえアゴタを叩いていねえで、筑波へなりと鹿島へなりと早く消えてなくなれ。(と自分は草鞋を締直し
て、バチリ鞘に納め、揚幕の方を見込み)さ、筑波の賭場だ。ム。(振返って遠くを望み)山へかかって丁度六つ
加多 アハハハ、閑話休題、筑波へ論じに来たのではない、地の理を、踏査に来たの
。……おお静かになったが……ここはもう筑波の社領内だが、狂犬め、そんなことも考えて居れなくなったと見える
ちゃんは善い子だ。さ、ねんねよう、おころりよ、筑波のお山に火が付いたあ、火が付いた、烏が三匹焼け死んで
長五 筑波の山中でこの瀧三の父親、日は浅えが俺のためにゃ義理のある下妻
したのだ。言ってもわかるめえが去年の暮、筑波に開帳の賭場、それを仙太が荒しに来て有金ソツクリさらって逃げ出したの
訳が有ったのだろうが、丁度、俺ぁその時、筑波の瀧次郎どんの控所に転がり込んでゴロゴロ厄介になっていた。もっともあの
名をかたって賊同然のことを働かずに、なぜに筑波へ行かぬ? 志を以て馳せ参ずれば、士、浪士、町人、百姓、
お妙 では父は筑波には居ないのでございますか?
も知れません。われわれ若輩にはその辺よくわからない。筑波には筑波の見解があるのでしょう。よく知らんのです。……勝手に
ん。われわれ若輩にはその辺よくわからない。筑波には筑波の見解があるのでしょう。よく知らんのです。……勝手に待たせて
段六 へ! すると筑波に居るんでがすか※ 筑波の下で見かけたなんどと言う人がい
へ! すると筑波に居るんでがすか※ 筑波の下で見かけたなんどと言う人がいたが、んじゃ噂は本当だった
に居ながらこの場の様子を聞き澄していた長五郎、筑波に仙太郎が居ると聞き、そこへ段六が駆け出して行ったのを知って
を立てている大釜。――ここは、天狗党本隊が筑波を出て宇都宮、日光へ押寄せて行ってから数日を経た留守隊の
の言ったことは、水戸全藩とは敢えて言わぬが、筑波の藤田氏田丸氏以下全隊士の意見か? つまり筑波党を代表され
吉村 早い話が、只今の筑波と長州との口約云々のことにしてからが、私などの考えでは
辺までしか届きはせぬと言うまでよ。第一、筑波の諸氏もことの成否を問わず志のために身命を賭してとの話
鋭い声で)井上! 先程からの貴公の言うこと、筑波の加多源次郎なども同じ意見か?
ながら)それでは、初めからそのつもりで……? 筑波の命を受けてか?
五文! 所は常陸の国、空っ風でおなじみの筑波の山は天狗党の一揆が大変じゃ大変じゃ! これぞ、早耳早学問
でもねえと言うわけ。只の天狗と天狗が違うと筑波で尻をまくったのが、今年の三月は二十七日だ! 上を
奪う、とチャンとこれに書いてある。四月四日筑波を出て日光に飛んだ、天狗にゃ翼がある、早えや、次が下野
、市川、佐藤を執権に据えは据えたが、天狗は筑波でやっぱりあばれる。追討軍が常陸国は高道祖で天狗を破ったのが先月は
まだおそくはない。加多先輩などは殿軍にまわって、まだ筑波だ。湊へ来い。笠間へは廻るな。道は山を突切れ。…
妙 ……もともと、仙太さんが、どんな気で江戸から筑波へは行かずにここへノコノコおいでたか、それが私にはわからない
! 村でもおとなしく兵糧出してやって、一刻も早く筑波か足尾か加波山あたりへ行って貰うようにすりゃええに。この辺で戦争
袴 阿呆を言うな! 筑波の残党ならば言わばわれわれの大先達だ、その細君のことを、貴様失敬な
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征討総督の勅を得られて、水戸、会津、桑名、筑前、小田原、大溝等諸藩の京詰め兵をひきい、大津まで来ていられると
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抱く藩は多数これあり! これらが小異を捨てて大同に就き連合してことに当れば、とは既に五年も六年もの
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。既に征討総督の勅を得られて、水戸、会津、桑名、筑前、小田原、大溝等諸藩の京詰め兵をひきい、大津まで来てい
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利あらずと見て逃げるは天狗、追うは田沼勢、府中は小川のあたり、ドンドンパチパチ大砲小筒、鳴るは蜂の頭、引くは天狗の
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加多 何をグズグズしているかっ! 一直線に湊、館山だ。早く来い、さ!
、ズーッとかけ違っていて、考えて見ると、部田野村から館山へかけて行く時にチラッとお目にかかった時以来だ。
仙太 筑波門前町下で女郎になった。……まだ館山にいる時分、段六が人に頼んで知らせて来た。
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顔の貸元で、つき合いの日は浅えが妙な縁で江戸で呑み分けの兄き分がいるから、どうでそこに転げ込むんだ。だが
仙太 フフン、こんな所にも流行って来たのか。江戸を出る時も千住あたりでエジャナイカ、エジャナイカであちこち叩きこわしが始まっていたが。
おら、おまんまば食わしてもらうのじゃ! そいから、江戸へ行くんじゃ! な、嬢様!
者、この町で他の村の衆と一緒になって江戸へお願いにあがるのでござります。私達が早く行かなければ皆様がここから
三百人の中、百人二百人と殺されても、江戸までは行きまする。
恐ろしいことを言いなさる。しかしそいつは短気と言うものだ。江戸へ願いに行くと言うのも、どうせ百姓衆のことだから石代貢租のこと
長五 喧嘩となりゃ江戸で鍛えたあんさんでえ、この辺の泥っ臭え奴等に負けてたま…
留守、私一人が留守居をしていますところへ、江戸の何とか奉行様支配与力とかの衆が出向かれまして、父が
ていなさるだろうが、四年前の冬、下妻街道を江戸の方から水戸へ向いてお通りなすったことがあるだろう?
おっと、そこまでは言いっこなし。恐れながらと俺が江戸の奉行所へ突走ればどうしなさるんだ?
しかし大体の見当はおありでしょう? 京とか、江戸とか、水戸あるいは中国九州筋か。
ガンガン押出して行ってさ、結城だろうと下館だろうと叩き破り、江戸へ出て公方様なんぞ追払ってよ、その勢いで京都へのして天長様
が起つことになっているそうだ。関東で俺達が江戸のお尻を突っつけば、それ後顧の憂いという奴だろう、西の方には
いることを何故するか、と言うのが、攘夷攘夷で江戸をギューギュー言わして置いて、江戸が手を焼いている暇に世の中の立て直しを
言うのが、攘夷攘夷で江戸をギューギュー言わして置いて、江戸が手を焼いている暇に世の中の立て直しをやらかしちまおうと言うのだそうな
、揚幕より走り出して来る仲間姿の男。天狗組より江戸へ諜者として入り込ませてあった士である。無言で走って本舞台
仲間 おお、江戸だ。諸先輩、山上か?
隊一 どうだ、江戸の形勢は?
隊二 それじゃ江戸に居たんだなあ……。
さんのなされ方あ、水戸城内がどうしたの、江戸の藩邸がこうしたのと、まるきり藩の内々の内輪喧嘩ばかりに身を
が付いて来るとでも言うか。……これからすぐ江戸へ行くのだ!
6 江戸薩摩ッ原の別寮
の暮れの、お前さんが百姓になるんだと言って江戸を打立った時にだって、百姓暮しで結構だと言ってさ、少し
於て合戦真最中! 天狗が水戸へ逃げるか、田沼が江戸へ逃げるか、さあ、評判じゃ評判じゃ! 今出来たての三州屋は早耳瓦版
しない。そうじゃないか、仙さん。……あたしも江戸にいる間は、訳もわからないくせにいい気になって、勤王芸者だ
仙太 ……面白くなけりゃ江戸へ帰りな。
蔦 ……お前が江戸で人を斬るなり、ドンドンここへやって来た心持も、私にゃよくわかる
を敷いて来ますからね。……私は、明日あたり江戸へ立とうと思っています。
妙 ……もともと、仙太さんが、どんな気で江戸から筑波へは行かずにここへノコノコおいでたか、それが私には
仙太 それから、江戸で、お前さんのお父さんまでも、……斬ってるかも知れねえ。殺した
方へ連れて行きながら)……仙さん、あたしゃ明日あたり江戸へ立つつもり。
仙太 うん、江戸へ? ウム。……(お蔦とお妙奥へ消える。仙太郎はそれを
でも遅くねえ。目先の見えねえにもほどが有る。江戸じゃこの騒動を口実にして、水戸藩の持っている幕府での勢力と
ねえのか? 毒で毒を制しようと言うのだ。江戸が衰えたとは言いながら、まだそれだけの役者はいますぜ。水戸藩
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反射炉の方から町の方へ入るダラダラ坂で、こんだ御殿山の北側へかかると言うとっつきに、御社がある、たしか、八幡さんかだ
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か聞きませんかえ? 何でもこれから皆で横浜の方へ攻め込んで異人打払いの一番がけをやるとか……?
は、これからの世の中は金が第一じゃと言って横浜へ貿易屋とかの下働きに行ってしまうし、兼八は弁護士たらになると
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山脈にくぎられ、右奥遠く高く肩を見せているのは加波山と足尾山である。
もおとなしく兵糧出してやって、一刻も早く筑波か足尾か加波山あたりへ行って貰うようにすりゃええに。この辺で戦争にでもなられ
まで、奴等にあばれ出されてはいかん! 足尾か加波山へ追い込むことになっているから、山へ追い込めば此方の物だ。
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※大江戸とならぬ昔の武蔵野の、尾花や招き寄せたりし、張りと意きじの深川や、(この辺まで
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ナイショ/\。日光にいつまで居ても仕方がないから下野を廻って此方に戻って来るらしいとも言っていたぞ。
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加多 おい、門前町から社へかけて奉行所、八州、または代官所の役人らしい者は立廻って
、たしかに敵に物を言わせねえとな。ハハハハ、門前町の下の段あたりで、もっぱらの噂さだ。
遊二 敵が居さえすれば門前町は大八楼で射ちてえところだろうて? 御愁傷様みてえだ。
隊一 おいおい、またやっとるな。ハハハ。門前町の女共は少し戻って来たらしいぞ。あんまり戦が暇でノンビリして
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長五 おい真壁の、そうまあ急ぐなってことよ。向う両国から右に切れようたあ訳が違わあ。いずれを見ても野っ原ばかりだ。足もに
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急ぎ足に出て来る旅装の三人。二人は士――水戸浪士加多源次郎と長州藩士兵藤治之。他の一人は一本刀素足草鞋
段六 見ろえ、これ! これ! 水戸、天狗組一同としてあらあ! こりゃあ!(ガタガタ顫え出す)
仙太 水戸、天狗組一同! ほだて! するてと、今の士の人
に引張り出されるのは少し筋の違った話だが、水戸の天狗があばれ出すのなんのと噂さのある御時世だ、八州様お
とかの衆が出向かれまして、父が何でも水戸様の御浪人方と通じてムホンを起しそうにして居るところを御
が、四年前の冬、下妻街道を江戸の方から水戸へ向いてお通りなすったことがあるだろう?
加多 ……他の国の士のことは知らず水戸は義公烈公以来、東湖先生以下、農を以て国本とす、志有る
見当はおありでしょう? 京とか、江戸とか、水戸あるいは中国九州筋か。
か、何でもそんなことです。会津の者、または水戸諸生組奸党の者がここへ来たことはありませんか?
へ行く、日光を差して、ハイヨ、固め人数の、のう水戸さん、眼をさます、シタコタ、ナイショ/\。
五 だ、誰だっ!(認めて)おお、あんたは水戸へ行った早田さんじゃありませんかっ! 藩の方はどうでした?
ことをお上に讒訴するために江戸本邸に去って以来、水戸は正義党の天下だ。気勢が挙っているぞ。然し、お上は例
が、チョイと立停って、右奥屯所の方へ向って)水戸、岡田先生よりの使い早田隼人が通るぞっ!
では言っても近頃の皆さんのなされ方あ、水戸城内がどうしたの、江戸の藩邸がこうしたのと、まるきり藩
道をトットと走って出て来る)おお早田! また水戸へか? 本隊は太平山だぞ!
がどうの江戸藩邸の実権を誰が握ったのと、水戸の藩内の内輪喧嘩だけじゃありませんかねえ? 待った、ま、
している井上(前出)、長州の兵藤(前出)、水戸浪士吉村軍之進、それに少し下って縁側近く利根の甚伍左。
、今更、子供をだますようなことを言われなっ! 水戸が如何に時世に不敏なりとは申せ、まった、拙者不学といえども、
そうではないか! 拙者をとは限らぬ、水戸全藩を……。
に感謝している。それとこれとは別だ。なるほど水戸の人間は鋭どい。しかし鋭ど過ぎる。いつも行き過ぎるのだ。よろしい、立て
それなら尋ねたい。今、貴公の言ったことは、水戸全藩とは敢えて言わぬが、筑波の藤田氏田丸氏以下全隊士の意見
! 鷲尾もそれを望んでいる。誰も彼もが水戸者のように尻の穴が小さいと思うと当てがはずれるぞ!
薩州土州あたりを牽制するため、併せて何かとジタバタする水戸有志を自然自滅に導くための方策とも、まあ、取れば取れぬことは
斬るというなら斬られようから吉村先生はいけねえっ! 水戸の藩論をまとめるクサビになっている人を、殺そうてえのかっ! 後
が、どんな人だが貴様知って斬ったのか? 水戸の天狗が、どんなことを、言ったのか知らねえ。が、吉村さんは
これを圧えにお乗り出しが宍戸の殿様は松平頼徳侯、水戸様お目代として進発あり。田沼様の公方がた本月三日には
れて水戸へ下って、お世つぎをトッコに取って水戸城籠城と来た、これを圧えにお乗り出しが宍戸の殿様は松平頼徳
、諸生組の御家老連またぞうろう首を斬られて水戸へ下って、お世つぎをトッコに取って水戸城籠城と来た、
江戸表、田沼様お乗出しと相成ったり。その間に水戸様では内輪もめだ、諸生組の御家老連またぞうろう首を斬られ
、何しろ相手は命がけだ、埓が明かねえ、その内に水戸様不取締りとあって五月二十八日、幕命を以て天狗方の御
直諒を初めとして文武諸館、神勢館の水戸藩士、浪人、あぶれ者、野士、百姓、町人、ならず者、都合その勢
天狗征伐にお乗り出しだ!(手ぶり身振り)そうもそも、水戸の天狗と言ッぱ、天狗なり! 眼はランランとして鼻高く
、買ったっ! 天狗だ、天狗だ、天狗だっ! 水戸の天狗があばれ出したっ! いよいよ御若年寄田沼玄蕃の殿様が天狗征伐に
、ただ今、ホコダ塚に於て合戦真最中! 天狗が水戸へ逃げるか、田沼が江戸へ逃げるか、さあ、評判じゃ評判じゃ!
人の人が叫んで走る声)おお、また、天狗が水戸へ逃げて行かあ! 今朝っから逃げる、追いかける、ワラワラワラワラと、全体あにが
そりゃ噂だけでしょう、だって四、五日前から天狗は水戸の方へ走って行くばかりだと言うじゃありませんか。
妙 宍戸の松平の殿様が水戸様の御目代で湊の方へ御乗出しだと言います。それに加勢
穽に落ちるようなもんだ。宍戸様の手と合して水戸城を落して立籠るつもりだろうが、それが穽だ。まだ考えが青いや
もよかろう、斬られてもよい。だが、あんた方ぁ水戸の方へ行っちゃいけねえ。……行っちゃいけねえ。穽に落ちるよう
党を蹴散らそうとしねえのも、ジワジワとお前さん方を水戸へ押し詰めて、そこで根こそぎぶっつぶそうと言うコンタンからだ。
狂言のケタが違う。そんなことを少しも考えねえで、水戸へ駆け出して行って、あとはどうなるんだ? 田沼の手が、
とは言いながら、まだそれだけの役者はいますぜ。水戸藩あたりの田舎千両役者たあ、打つ狂言のケタが違う。そんなことを少しも
もほどが有る。江戸じゃこの騒動を口実にして、水戸藩の持っている幕府での勢力と、それから、勤王派とを、
軍艦を廻しましたぜ。もっとも出発の時の理由は、水戸城に籠城したお為派鎮圧のためと言うことになっている。
人足二 私等、天狗に入れて貰いてえ、水戸へ行きてえのです。
甚伍 水戸へ行く。生きて会えると思うな。
の先輩だけは生き延びさせなければならん! でなければ水戸の勤王派の根が絶えるのだ。士分以外の者が加担してい
加多 ……宍戸侯は水戸城において御自害、榊原先生以下数十人は斬に処せらる。死罪
…だろうと思う。既に征討総督の勅を得られて、水戸、会津、桑名、筑前、小田原、大溝等諸藩の京詰め兵をひきい、
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桂、佐久間克三郎等あり、因州に八木良蔵、沖剛介、千葉重太郎等が共に立つと言えば――。
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ほどのことではない。しかしことは迫っているらしい。京都で薩摩の者達ともしきりに往来していられたと言う情報も
、江戸へ出て公方様なんぞ追払ってよ、その勢いで京都へのして天長様へ外敵打払いをお願えすればよい話だ。
いや、それは拙者が保証する。こんな風になるよ。京都で土州の士で飯田と言う、これがその方にかけては名人と
だ! グズグズしている間に、奴等が、また京都にでも行ってしまって見ろ。よろしい、拙者一人で何とか……
つ聞きたいことがあるが、……貴公、本月五日京都池田屋における変のことは御承知か?
軍が、いよいよ事容れられずんば、おそくとも本月末、京都を包囲して天下の軍を敵に廻す計画の有ることも知ってい
枚で五文だ、おまけに長州勢に取りつめられた京都のことまでみんなわかる! さあ、買ったり買ったり! オヤオヤ、誰も
た昼さがり。幕軍の包囲を衝いて湊を逃れ出でた末、京都に上り慶喜について陳情せんと、途々諸藩の兵と戦いながら中仙道
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大釜。――ここは、天狗党本隊が筑波を出て宇都宮、日光へ押寄せて行ってから数日を経た留守隊の守備線で
ならん、手に立つものがなさ過ぎるぞ! 日光より宇都宮へ出て、あれより下って、目下、下野太平山だ! 田丸先生
太平でもねえ。そこで公方様が腹を立てなすって宇都宮以下常野十二藩に出兵を命ずと来たが、何しろ相手は命がけだ、
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、筑前、小田原、大溝等諸藩の京詰め兵をひきい、大津まで来ていられると言うことだ。迫っている。
仙太 一ツ橋様が大津から海津へお向いになったと言うのは本当ですかねえ?
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て来る角袖の刑事。薬箱こそ負うてはいないけれども、富山あたりの行商人のなりをして、脚絆草鞋がけ。
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、とまあ言ったわけで、あーっ、俺は恋しいや、深川はやぐら下。へん、兄きぁまるでこれから色にでも逢いに行くよう
長五 本所から深川、方々のお邸の部屋部屋へかけて壺を握らせりゃまず並ぶ者の
、ハズミを食ってアレッ! と叫んで、転げ込んで来る深川芸者のお蔦。兵藤はことの意外さに呆れて一瞬見下ろしていたが
も常陸の方の生れは生れだけど、小さい時からの深川育ち、もともとこんなにシダラがなくはない。意気も張りもなくなったのは
の武蔵野の、尾花や招き寄せたりし、張りと意きじの深川や、(この辺までは幕の開くまでに済んで)縁しも永き永代
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宿はずれも利根川寄りの方とは反対側。江戸千住を出た街道が我孫子を経て利根川を渡り取手町に入って二
所にも流行って来たのか。江戸を出る時も千住あたりでエジャナイカ、エジャナイカであちこち叩きこわしが始まっていたが。
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男二 (追いかけて)ど、どこへ行くだい、神田さん?
にゃ、どもならんがい。アワを食うでねえよ神田さん。
男二 あにをガタガタ顫えるかね、神田さん?
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、早く行きたまえ。あ、それからねえ、私と一緒に東京方面の壮士をこの辺へ追い込んで来た本庁の真田と言う人がい
行ってしまうし、兼八は弁護士たらになると言うて今東京で巡羅になっているそうな。虎雄は虎雄であの性分だ。内
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はあああ……腰のう、痛さああよう、……五反田のう、長さあああ……」突然、右奥遠くで何かが爆発する、
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有余年! 四民鼓腹して太平を唱う折、馬関と浦賀に黒船が来てさ、さあことだてんであわて出した、開港通商、尊王攘夷