パリ アムステルダム ニース マルセイユ ロンドン ブリュッセル

テオ　ヌエネンに行ったんです。パリを一昨日立って。そいで急に、兄さんに逢いたくなったもんだから。

と言うでしょう？　僕も実は五、六日前にパリから同じような手紙をモーヴに出してある。もしかすると、その二つ

ルノウ　あんたが、するとパリにいらっしゃる弟さんだね？

パリの町の、繁華の場所からチョット引っこんだ、古いクラウゼル街の、ペール・タンギイ

パトロンだろう？　みんなそう言ってる。ペール・タンギイこそ、新しいパリ画壇の守り神である！

を追って画学生も駆け出す。それらが全部見える――パリの裏町の秋の午後のちょっとしたパントマイム）

、空がルリを溶かしたように見えてよ小父さん。パリは今頃が一番ですわね。

ことだろうと思った。売れるもんかあんな絵が、今どきのパリで。

素直だから。素直すぎるんです。なにしろ、去年、アントワープからパリに出て来て、出しぬけにマネエやピッサロやゴーガンを見さされて、たまげ

婦　（まだ二十くらいのパリの下町の、あまり教育のない、しかし可愛い嫁。ういういしくはにかんで）とても、あの

が。それに、私も、もうたまりません。兄がパリへ出て来てから私は、こうしてあなた、目方が五キロから減り

こんなだとは知らなかったんですよ。それに、今度パリに来てからの様子は、これまでのそんな調子とはまたちがっているよう

テオ　兄をパリに来させたのは失敗でした。しかし、兄が一人前の立派な画家に

、兄が一人前の立派な画家になるためには、やっぱりパリに来て、皆さんの絵を見て、皆さんと交際することが必要

テオ　ですから、兄がパリに来たことを私は後悔はしていません。それに、あなた方

の絵は暗過ぎる、もっと明るくならなければならない、今パリの印象派のすぐれた画家たちがどんなに明るい絵を描いているか兄さんは早く

捜してもらってはいますが、でもそうしてもパリに居て今のようにやっている限り、似たようなことじゃないだろう

、だったと言っているじゃないか。それを僕はパリへ来て、ピッサロやセザンヌや君や――君たちから学んだ。来て

者が二人でも三人でも集まって――そう、パリじゃまずい、田舎へ行く。そこで、みんなセッセと絵を描いて、それをパリ

へ行く。そこで、みんなセッセと絵を描いて、それをパリへ送ってテオの手で売って貰う。誰の絵が売れてもその金

ヴィン　だって嘘じゃないんだろ？　普仏戦争終り、パリにコンミューン新政府樹立さる。人はすべて自由に平等の権利を以て生れ、

見え、見たものを少しの疑いもなくカンバスに描ける。パリでは、いろいろの刺戟が強過ぎたし、他からの影響に動かされ過ぎ

を見失った。その後ハーグでもヌエネンでもアムステルダムでもパリでも、神は俺には見つからず、現在でもキリストの神がどこに

へ後帰りすることは出来ない。すると早かれおそかれタヒチもパリも変りはないことになる。だから問題は本当は片づいたんじゃない。

だけ君のことを重荷に思っているか知れんよ。パリで僕に何度も愚痴をこぼしたことがある。時々兄のことでは耐え

ボリナーヂュで神を見失った。その後ハーグでもヌエネンでもアムステルダムでもパリでも、神は俺には見つからず、現在でもキリストの神

。……すこし旅行でもなすったら？　……アルルかニースあたりに行ったらって、ロートレックさんも、こないだ言ってらしたじゃありませんか？

その男だったかどうかハッキリとはわからないけどさ、マルセイユ航路の貨物船の水夫でマルタンてえ名、とっても毛深くって、力が強いの、ギュッ

のことやらサッパリわかんねえ。なんでもブリュッセルや、そいからロンドンにも居たことがあるそうだ。

。俺にや何のことやらサッパリわかんねえ。なんでもブリュッセルや、そいからロンドンにも居たことがあるそうだ。

ハンナ　あたし、案内して来たの。あの、ブリュッセルから、おいでになって、ここの先生に会いたいからって。おっ母さんが

ているのではない。それで、こちらの炭坑会社からブリュッセルへ手紙が来て、教会から、あなたに対し厳重警告を与えてくれとあっ

、おありでなかろうと思う。（椅子から立つ）私はブリュッセルに帰って直ちに、あなたを解職するような手続きを取ります。さようなら、それで