江戸 下谷 日本橋

のせいも、すこしはあるかもしれなかった。このごろの江戸の暑さといったら、なかった。煮るような、空気の動かない日が

「江戸に、こんな夏は初めてです。気が狂いそうだ。何だ、切通しの猿

。一隅では、勤番者らしい侍が二、三人、江戸の土産にというのであろう。美人画を選りながら、ひとりが低声に卑猥な

へ、いっせいに眼を向けたので、かの女は、江戸の女の誇りを傷つけられたように、すこしつんとして、横の壁

が、一番いいということになったのだった。この江戸の暑さからかの女を移して、どこか涼しいところで静養させるの

江戸の人は、気が早かった。翌朝早く、お久美は、出入りの鳶の者を

供に、その上総の谷由浜へ向ったのだった。江戸から、二十三里のみちのりだった。

、青苔が、濡れて、光っていた。こころだけが江戸へ帰って、池の端の伏見屋で見た岩井半三郎の死絵を映像に、一心

、おひさの離家に帰ったお久美は、いそいで、江戸へかえる旅仕度をはじめていた。

で来た。おひさの家の漁師のひとりだった。江戸から、上庄の旦那の庄吉がお久美を迎えに来て、いま着いたところ

「むかし江戸で売った岩井半三郎さまは、この村の出だったが、あの人の墓

一人が言った。かれは、選ばれて、その場から江戸の上庄への急使に発った。

美しかった。からだも、丈夫だった。何よりも、この下谷お数寄屋町の富豪、呉服太物問屋上庄の内儀として、人に立てられ

日本橋通油町の鶴屋とともに、役者の似顔絵などで聞こえた絵草紙屋伏見屋は