口笛を吹く武士 / 林不忘
地名一覧
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この数カ月武林は、大阪にかくれていた原惣右衛門、京都に潜んでいた片岡源吾、それから、
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破れるような声で門番の足軽へ呶鳴って、さっさと松阪町のとおりへ出た。
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提灯をならべ、黒ずんだ格子をつらねた芳屋、樽や、玉川などの旅籠に、ずっこけ帯の姐さんたちが、習慣的な声で、
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神奈川の宿だ。その中ほどに、掛け行燈の下に大山講中、月島講中、百味
驚愕と、憫笑に見迎え、見送られながら、こうしてこの神奈川まで来かかったところだった。
医師と、思い思いに身をやつして同勢二十一名、きょうこの神奈川の佐原屋に泊まっているのだ。
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貼紙を思いついて、江戸から来るこの一つ手まえの宿、川崎の立場茶屋で、半紙を貰い、墨を借りて、これを書いたのだっ
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「いや、江戸に公事用がありましてな、これは、訴訟ごとに慣れませんので
「変りましたでございましょうな、江戸も。」
さ、手まえは、しばらく振りの、まったく、三年目の江戸でござりましてな。初下りも同然で――。」
原惣右衛門、京都に潜んでいた片岡源吾、それから、江戸の堀部安兵衛らと、ひそかに、あちこち往来して、一挙の時期を早める硬論
て、かれは、すっかり町家の手代風に変装し、いま江戸へ上る途中なのだった。
をつくろうと、いろいろ考えた末、この貼紙を思いついて、江戸から来るこの一つ手まえの宿、川崎の立場茶屋で、半紙を貰い、墨
などしてから、道中の話しや、これから下って行く江戸の噂や、わざと大声に、雑談に耽っていた。
だった同志が、前後して下ってきたのを、江戸に暗躍していた人々が途中まで迎いに出て、この二、三日
前になり、警戒にこころを砕きながら三々五々、やっと、江戸へ一伸しのここまで来たところだった――。
「馬鹿あ見たよ。赤穂の浪士が江戸へはいって来る模様など、すこしもねえぞ。心配するな。それより、こんな
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関西に散らばって待機中だった同志が、前後して下ってきたのを、
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「またですか。私はまた、この本所の万屋で小豆屋善兵衛というやつ、それがじつは、赤浪の化けた
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大須賀、笠原、鳥井、糟谷、須藤、宮右をはじめ、松山、榊原、それに、和久半太夫、星野、若松ら――あの連中を
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この数カ月武林は、大阪にかくれていた原惣右衛門、京都に潜んでいた片岡源吾、それから、江戸の堀部安兵衛らと、ひそか
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わたくしどもは、正直正銘、生れながらの町人なんで。下谷の者でございます、へえ。商用で、ちょっと上方のほうへまいっており
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、掛け行燈の下に大山講中、月島講中、百味講、神田講中、京橋講中、太子講――ずらりと札の下がったわき本陣、佐原
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宿だ。その中ほどに、掛け行燈の下に大山講中、月島講中、百味講、神田講中、京橋講中、太子講――ずらりと札の
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けえり乞食が、江戸っ児の相場だ? べらぼうめ、これから品川へへえるまで、水だけで歩けるけえ。金魚じゃあるめえし――。
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ただ、日本橋石町三丁目の小山屋弥兵衛方に落ちついた大石の一味は、あとでは
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回向院無縁寺の門前に勢揃いした一党が、高輪泉岳寺への途中、廻りみちをして永代橋を渡っているとき、行列の
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の下に大山講中、月島講中、百味講、神田講中、京橋講中、太子講――ずらりと札の下がったわき本陣、佐原屋は今日
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一党が、高輪泉岳寺への途中、廻りみちをして永代橋を渡っているとき、行列のなかの武林唯七が、