中山七里 二幕五場 / 長谷川伸
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南飛騨の勝景、中山七里の一部。前の日よりも一両日余り過ぎ、満山の紅葉、
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作蔵 どうせ江戸からでも流れて来た人達だろう。
百松 江戸か。江戸といえばここから七十八里、しかも難渋な嶮岨な路だ。そんな
百松 江戸か。江戸といえばここから七十八里、しかも難渋な嶮岨な路だ。そんな遠いところから
大雄寺下の勘兵衛の家に当分いるから遊びに来な、江戸の繁昌を話して聞かせてやらあ。
作蔵 田舎者でもいいさ。江戸ではどうか知らないが、高山ではよく云わない人のところだから、
作蔵 直き江戸へ行ってしまうでしょう、早く行ってくれた方がいい。
老番頭 あんな奴が江戸で十手をお預り申してるというが、飛んだことだ、高山だったら屹と
政吉(二十八、九歳)飛騨風俗、江戸を出て逃げ歩き、交通不便の飛騨の久々野に隠れ、三里余りの高山
政吉 ほっ、お前さん、江戸ですね。
政吉 ええ。あっしは江戸の深――なに江戸で永らく奉公していました。
政吉 ええ。あっしは江戸の深――なに江戸で永らく奉公していました。
、何か縁故があっておいでなすったか。ここは江戸とは不通同然の山の中だが。
見つけ、飛んだみやげの拾い物をした。おなか、手前は江戸へ送ってやるから、この世の地獄に、永逗留をするがいい、そんなざま
は、わたしの不運だと諦めましょう。あなたあなた、わたしは江戸へやられます。ご無事でいてくださいまし。
二町離れていても、あたしは屹とお前に付いて江戸へ行くよ。
文太郎 文句があるなら江戸へ来い。お白洲の砂利の上で、云えるものなら申しあげろい。何をい
いるのがわからねえで、好き放題をほざきやがると、一緒に江戸へ差立者にしてやるぞ。
お前と、二人一緒にいたさに後さきなしの無考えで、江戸を離れたのが悪かったのだ。その罪はわたしにある。おなかはただ
文太郎 そうよ、お尋ね者よ。男は江戸で人を殺した奴、女は、これも江戸で火付けをした恐ろしい奴
男は江戸で人を殺した奴、女は、これも江戸で火付けをした恐ろしい奴等なんだ。俺あ、それこれだ。(
文太郎 そうよ。江戸じゃ名の売れた岡ッ引よう。おうおう、もし途中で、今いったよう
政吉、久々野の我が家で着換えたので、江戸を出た時の旅支度になっている、脇差を腰にしている。徳之助
政吉 何をいやがる、白痴にするねえ。政吉は江戸を逃げて高山在の、久々野という処に、僅な知辺をたよって行き
行き、山国の者に半分なったが、根性は元の江戸の男だ。お前達あ何故、本当のことがいえねえんだ。
、三人一緒にとは何故いってくれねえ。俺あ江戸で仔細あって大罪犯した男だが、久々野に居ついて燻ぶってれば、一生
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金造 この間二軒茶屋の前で、佃の者と喧嘩して、相手に疵をつけた時、俺を庇ってくれ
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〔序幕〕 第一場 深川材木堀
・恐怖した通行人・空家探しの夫婦・酒屋の小僧・深川の人々・高山の人々・そのほか。
第一場 深川材木堀
深川木場の材木堀。秋の日が西に傾きかけた頃。
政吉 俺あ深川で、餌差屋を叩っ殺したんだ。だから縛られよう。
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職人 (盆唄をうたう)八賀上野で、高山みれば、浅黄暖簾が、そよそよと。