加賀 九州 芝浦 江戸 東京

方により負はせたる名なれば、けしうもあらず。加賀の鼬雲、安房の岸雲、播磨の岩雲などは、其土の人々の

詳しくはいかゞ。江戸の坂東太郎、浪花の丹波太郎、九州の比古太郎、近江あたりの信濃太郎、これらは雲の出づる方により

ものにや。さては水まさ雲と同じかるべし。「芝浦の漁人も網を打忘れ月には厭ふいわし雲かな」といへる

にや。おほよそは定まりもあるべし、詳しくはいかゞ。江戸の坂東太郎、浪花の丹波太郎、九州の比古太郎、近江あたりの信濃太郎

趣きありて、心弱き児女の愛する能はざるものなり。東京の市中にて眼にするものの中、此雲の風情など除きては、

人に知らるゝ知られざるのあるもをかし。坂東太郎は東京にて夏の日など見ゆる恐ろしげなる雲なり。夕立雨の今や来

冬多きものなれば、怪むべくもあらぬ事ながら、東京の大火を叙せんとて、心も無く、北へ行く雲に火の色うつり

東京にては雲の南へ行く時火災多し。明暦三年より明治十四年まで