田端に居た頃 (室生犀星のこと) / 萩原朔太郎
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鎌倉
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鎌倉へうつつてからは、毎日浪の音をきくばかりでさむしい。訪問者も絶え
、怪しげなカフエなどへ行くのが樂しみだつた。鎌倉へきてはさうした散歩の樂しみもなく、材木座あたりの眞暗な
鎌倉へ移る少し前、初冬の風のうす寒い日に、僕等二人は連れだつて
「いつ君は鎌倉へ移る?」
大井町
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の空氣がすきなのだ。だから以前に居た大井町などは、所としては殆んど理想的に氣に入つてゐた。尤も私
田端
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田端に居た頃
と、あの頃の身邊は可成賑やかだつた。尤も田端といふ所は、妙に空氣がしづんでゐて、禪寺の古沼みたい
田端にゐた時のことを思ひ出す。今からみると、あの頃の身邊
でゐてどつちが居なくも寂しくなる友情である。田端に住むやうになつたのも、實は室生の親切な世話であつた
田端にゐた頃は、毎日室生犀星と逢つてゐた。犀星とは私
が意の如くならないといつて腹を立てる。成程、田端の情趣が彼の俳句的風流生活と一致してゐることを、後に
。我々は默つて車窓に向ひ合つてゐた。田端の暗い夜道を歸つてくるとき、急に友が親しげの言葉で
上野
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は連れだつて活動寫眞を見に行つた。日暮れに近く、上野に電車を待つプラツトホームを、寒い冬の風が吹きさらしてゐた。
ホームを越えて、遠い夜空に上野あたりの街の燈火が浮んでゐた。暗い霧のかかつた空で、
銀座
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なるほどあり得べからざることなのだ。「明日君と銀座へ行くにきめた。」いつも彼の調子はこれである。