マニラ 北海道 伊勢 名古屋 満洲 大阪 九州 東京

、自分の意志とは関係なしに北京だの上海だのマニラだのシンガポールという人種の違う国へでかけて、勤労とか経済とか生計

九州の床屋もいたし、名古屋の坊主もいた。北海道の百姓もいたし、伊勢の客引きもいた。職工も土方もバクチ打

名古屋の坊主もいた。北海道の百姓もいたし、伊勢の客引きもいた。職工も土方もバクチ打もいたのだ。この村

を渉る兵隊たちには、九州の床屋もいたし、名古屋の坊主もいた。北海道の百姓もいたし、伊勢の客引きもいた

きたに相違ない。女どもだってそうなんだ。名古屋の軍需会社の庭土の上へ伏せて、自分の隣の女工までは吹きとばされ

。これは二番目の兄で幸蔵というのだが、満洲から妻子六人ひきつれて、ころがりこんだ。無一物、家どころか、フトンもない。

子供だから、盗みをする。どうせ盗癖のある子なら、大阪にはスリの学校というのがあるそうだから、そこで修業させて

サルウィン河を渉る兵隊たちには、九州の床屋もいたし、名古屋の坊主もいた。北海道の百姓もいた

ており、別に感動もなく引揚船から日本本土へ、東京を廻って、故郷の山国へ帰ってきた。

「君は戦争中は東京の工場へ徴用されていたな。当ったろう」

で働かされていたの。戻らなきゃよかった。又、東京へ行きたいのよ」

「東京の何がたのしかった？」

「あんた、いずれ東京へ行くでしょう」

十九のとき結婚した。男は土豪の次男坊で、東京で銀行員をしていたが、二人の生活は幸福ではなく、その

三男の忠雄は戦死した。これは分家分禄して、東京に小さな売家を買ってもらい、女房に二人の子供があるが、家の

東京の住人でも近所にバクダンが落ちてから寝ボケマナコでゲートルをまいて逃げだす

衣子には、お前は東京へ行って事務員になってはどうだ。ダンサアもよい。女はパンパンを

この村に間借りをして、そこを本拠にして、東京と往復してもできるじゃないか。戦争に負けると便利なものだ」

になったら、東京でくらすといゝわ。私もそのとき東京へ行って、何かするかも知れない」

のけるのだもの。テイチャンが一人前のヤミ屋になったら、東京でくらすといゝわ。私もそのとき東京へ行って、何かするか