本郷 京都 東京

本郷の並木道

一年半京都に住んで、本郷へ戻つてみると、街路樹の美しさが、まつさきに分つた。京都

本郷へ戻つてきて、まづ友達とＵＳで昼食をとつた。戸口を通し

僕は然し、本郷に住んではゐるが、殆ど本郷のことを知らない。酒を愛しはじめて

僕は然し、本郷に住んではゐるが、殆ど本郷のことを知らない。酒を愛しはじめてから、お茶を飲むことを忘れ

僕の知る限りに於て、彼が本郷へ現れたのは、この一夜にしかすぎないのだが、本郷を歩いて

現れたのは、この一夜にしかすぎないのだが、本郷を歩いてゐると、僕は屡々あの一夜の牧野信一を思ひだすのだ。

は屡々あの一夜の牧野信一を思ひだすのだ。その後本郷の飲み屋に於て、飲んだくれは数限りなく会つてゐるが、フレンドシップなどといふ

本郷の街路樹下を最も颯爽と歩く人物は中島健蔵先生であると、先日一文科

は、学生の横行に散々悩まされた僕であるゆえ、本郷の街路樹下を最も颯爽と闊歩する人物が学生に否ず、実にわが健蔵

みると、街路樹の美しさが、まつさきに分つた。京都は三方緑の山にかこまれてゐるが、市街の樹木を殆ど思ひ出すこと

一年半京都に住んで、本郷へ戻つてみると、街路樹の美しさが、まつ

は、当然だと思つた。街路樹は青春を思はせる。京都の街が死んでゐるのは、街路樹の少いせゐもあるだらう。

全体がひとつの学生街である。河原町四条を中心とする京都の唯一の盛り場は、学生によつて氾濫し、占領されてゐるの

然し京都は、街全体がひとつの学生街である。河原町四条を中心とする京都

た青春が、三宅君の癪のたねであつたらしい。京都では、学生の行けない酒場の女達すら、学生向きにできてゐる

学生の身分であつたことを物の見事に忘却し、京都の学生の横行闊歩を憎むこと、不倶戴天の仇敵を見るやうである。

撮影所の脚本家となつた三宅といふ人がゐた。京都に友達がなく、無聊に悩んで、三日目毎に、どんな悪天候を

去年東京帝大の仏文科を卒業し、京都のＪＯ撮影所の脚本家となつた三宅といふ人がゐた。京都に

先生であると、先日一文科生が僕に語つた。京都では、学生の横行に散々悩まされた僕であるゆえ、本郷の街路

行けない酒場の女達すら、学生向きにできてゐる。東京へ戻つてみると、大学街の喫茶店の女すら、すべての感じが

を憎むこと、不倶戴天の仇敵を見るやうである。なるほど東京の学生は、とてもかうはもてないのである。失はれた青春が、

去年東京帝大の仏文科を卒業し、京都のＪＯ撮影所の脚本家となつた三宅と