鎌倉河岸 佐久 下諏訪宿 摂津 塩尻 桔梗ヶ原 名古屋 飛鳥 甲州 阿房宮 吉野 兵庫 八ヶ岳 蝦夷 日本アルプス 八丁堀 丹後 諏訪 手賀沼 浅間 印旛沼 浅間山 江戸 東北地方 上諏訪町 道成寺 隅田 大江戸 軽井沢 小石川 寛永寺 武蔵野 筑波 追分 両国 下谷 水戸 長崎 甲府 館林 蔵前 神田 お茶の水 銀座 小諸 隅田川 千曲川

（昨夜は南伝馬町で十五、六軒、一昨夜は鎌倉河岸で七、八軒、米屋がやられたということだが、今夜あたりはもっと大がかり

「佐久の方へもおいででござりましょうな」

……何んだ？　……貝十郎？　……佐久へ行くのがなぜさてこそじゃ？」

「食えるなら行こう！　佐久へ行こう！」

「佐久に起こった百姓一揆、窮民の惨状見るに堪えず、天下無禄の浪人ながら、

「我らは佐久より参ったもの、百姓一揆指揮するものじゃ」

「甲州浪人山県大蔵、佐久に起こりました百姓一揆に、微力ながらも加担しおるもの、義兄弟の高阪

あの時以来九十郎は、織江を連れて大蔵ともども、佐久の百姓一揆軍の、指揮者の一人として働いた。

こう思ったとたん佐久の車塚で、そのお吉をはじめとし、九十郎や服部範之丞や、その妹の

挺の駕籠が、多勢の供人を従えて街道へ出、下諏訪宿の方へ向かった。

は馬鹿者が多いぞ。わしがお前や松平摂津の――摂津も死んでしまったのう。目先の見える偉い奴は、早死にするか殺されるか

れるか、寿命が少いのでわしには悲しい……その摂津などの意見に基づいて、開国貿易しようとするのを、密貿易、抜け荷買いなど

塩尻の社家北条主計、この人の屋敷へ貝十郎一行が、滞在してから五

、発足したところの一行なのであるが、それが塩尻にとどまって、五日というもの発しないのは、遠江守領内に、

城下から、自分たちの一行を尾行けて来て、この塩尻までやって来て、ここからおよそ半里距てている、苗字帯刀を許されて

塩尻の宿はことごとく眠り、戸をとざされた家々からは、燈火一筋洩れてい

こうして今や鬼火燃える、古戦場に沿った街道を、塩尻の宿から小諸の方へ、雨に打たれて行くのであった。

塩尻の宿から西へ行けば、木曽を通って名古屋へ行け、東北の方へ

……その郡兵衛、あるお方を総帥にあおぐと申し、塩尻の宿へ参りましたが……」

彼らはこの時より半月ほど以前に、塩尻の社家を引き払い、この小諸の牧野家の居城へ、田沼主殿頭に扈従し

塩尻の社家主計の屋敷で、一旦勘助を捕えたが、大して憎くない男だった

、田沼を討とうお浦を奪おうと、自分たちの後を塩尻から追って、この小諸へ来ておるであろうとは、貝十郎は思って

をはさんで幾回となく、二人は争い斬り合ったが、塩尻の諸角覚蔵方で、貝十郎のために翻弄的に、内土蔵の中へ

「貝十郎」と意次はいった。「そち塩尻の主計方で、わしにこのようなこと申したのう『それ百姓というもの

まして郊外桔梗ヶ原は、墨のような闇に一色され、森も林も丘も藪も

甲州信州の武士たちが、戦国時代に鎬を削った、桔梗ヶ原は古戦場であった。

「古戦場の桔梗ヶ原、雨降り鬼火燃ゆる中で……」

塩尻の宿から西へ行けば、木曽を通って名古屋へ行け、東北の方へ辿って行けば、木曽街道を逆行し小諸の方

躍り出した勘助はさながら飛鳥、横擦り抜けると部屋を突っ切り、縁から雨戸、雨戸から庭へ！

で、甲州へ行って見た。

「こう見えましても私は甲州の浪人にござります」

煙り！　槿花一朝の夢として、武蔵野に現われた阿房宮、逃げ水屋敷の燃え崩れる姿を、背景にして四散する人々！

按摩を取り立て、お医者とこしらえ、千川上水、印旛の水田、吉野の金堀、む性に上納お益の、おための、なんのかのとてさまざま

厚く、学も水戸派の正統を伝え、生涯に五度兵庫に下り、湊川に立ち寄って、朱舜水の文字を刻したところの、楠氏の

一方に蓼科、八ヶ岳の、山々が聳えているかと思うと、一方には今日の日本アルプスの

遙かの右に聳えているのは、八ヶ岳、蓼科山、そうしてそれの斜面であり、スロープには子山や孫山が

今日のままにて打ち捨て置きましたならば、カムチャッカの者は蝦夷と合し、蝦夷もやがてはロシアの勢力に……」

打ち捨て置きましたならば、カムチャッカの者は蝦夷と合し、蝦夷もやがてはロシアの勢力に……」

山々が聳えているかと思うと、一方には今日の日本アルプスの、消ゆがに見える連峰が、まだ深々と雪をかつぎ、遠く淡く流れ

織江を連れて貝十郎は、八丁堀の自分の屋敷へ、その夜すぐに帰って来た。

ば、真鍮ぎせるが、銀になるやら、桟留袴は、丹後になりやす。娘子供は、芸者になるやら、鍋釜銭でも、四文

「諏訪にゃア名物の蜆があらあ」

「尋ねる人がござりまして……さよう、この諏訪の地に」

たよ。人の噂だから確かとはいえぬが、諏訪の高島に身を落として、くすぶっているとかということで」

そこで諏訪の地へ来たのであった。

なんどとこの婦人を、呼びすてにする無礼無礼！　……諏訪の湖畔で汝のために、斬り立てられてこの拙者、湖に落ちたを助け

押し込み強盗その間に横行、全く凄じい有様でござる。印旛沼、手賀沼を開鑿したるは、一つの功には相違ござらぬが、工事を請け負わ

「浅間の山がござります」

荒廃いたしました。しかるにご領主牧野遠江守様、すでに浅間の爆発も、数年前の出来事となった、昨年の旱魃は小天災、

でござりましょう。いかんとなれば田沼主殿頭様、江戸より浅間へ参るというに、近道の木曽の街道を通らず、遠道かけて甲州街道より

十郎よっく聞け！　今も汝がいったごとく、尋常に浅間へ参る彼なら木曽街道を通るがならい、しかるにわざわざ遠道かけて、甲州街道から

し、押し込み強盗その間に横行、全く凄じい有様でござる。印旛沼、手賀沼を開鑿したるは、一つの功には相違ござらぬが、工事

「何んだそいつも落首ではないか。浅間山が爆発いたせし際に、田沼を罵って作られた落首だ」

までは、十七、八軒の家があったが、例の浅間山の爆発によって、三軒を残してことごとく倒れ、それを機会に住民散じ、今

となく、同じ目に逢わされた。一揆とそうして浅間山が、またもや爆発するらしく、灰を降らしたり鳴動するので、佐久一円の人心が、

明るい日光、しかし東北の山脈を抽んで、厳かに聳えている浅間山からは、いつも三筋に立つ煙りが、噴出の量多いためか、一つに

浅間山の爆発によって、窒息して死んだこの家のもので、同族の人達

百姓一揆が鎮まって、浅間山が小爆発をし、それの麓に建てられてあった、田沼の山屋敷が

「それに反してあの勘助、江戸で名高い戸ヶ崎熊太郎を、知らなかったとは迂濶な奴じゃ」

そなたは無類の使い手にて、われなど到底およぶべくもなく、江戸に多人数名剣士ありとも、そなたにおよぶもの幾人もあるまい。なれども

しかも相対の闘いにおいて、刀を合わせ得られるもの、江戸の一流剣客の中に、あるであろうかないであろうかと、そういわれて

……だからよ俺は安穏に、逐電もせずに江戸に住み、こんなところにゴロゴロしているのだ。……アッハッハッ、討てたら討て

を中心にして、煮売り屋、小茶屋がゴチャゴチャあり、江戸両国の盛り場を真似た、掛け小屋なども出来ており、手品、軽口、不具

江戸の淫靡廃頽の気分が、剛健質実の地方へも伝わり、いやらしい化粧の女など

田沼様に睨まれては江戸は愚か、どこへ行こうと安穏ではいられぬ。

九十郎が田沼方を追われ、江戸から去ったと伝聞するや、範之丞兄妹は雀躍りした。

から田舎は厭だってんだ。……田舎へ来ると江戸の住人、間の抜けた目にあわされる」

「田沼め身辺の危険を感じ、江戸にもいられず領国相良の、自分の城へも帰って行けず、他人

それにしても江戸の同心が、管轄違いの信州路などへ、どうしてやって来たの

言葉を左右に設けなし、断わるさえ卑怯と思ったに、江戸にいる老中田沼主殿も、信濃に在す冬次郎殿が、討って取ろうのご詮索

「江戸の与力じゃ。与力じゃよ」

観察いたすでござりましょう。いかんとなれば田沼主殿頭様、江戸より浅間へ参るというに、近道の木曽の街道を通らず、遠道かけて

「窮鳥ならぬ窮鼠の彼、旅にて姦謀ことごとく整え、江戸へ帰らば電光石火、猫を噛まんの不軌断行！　それを思えば是が

おりましても、芽の出ることではござりませぬ。江戸へ参ろうではござりませぬか」

「江戸へ参るでござりましょう」

旅用の金は湖水へ落としてしまった。一応江戸の自宅へ帰り、それを調える必要があり、かつはもしも妹織江が、

なさりませ。……ご様子によればあなた様には、江戸に立派なお親戚もあり、お屋敷もおありなさるそうな。……私

な。……私は犠牲、あなた様を介抱、無事に江戸までお送りすれば、それで本望でござります。……添うの何んの

は、化物屋敷だということだ、そんなところで粋な江戸の、通人の弾く河東節の、水調子の音色が聞こえるとは※　それ

！　……それにいたしてもお浦様が……江戸にいるはずのお浦様が……まあまあまあこのようなところに※　…

におりましても詮ないこと、一揆衆の中を押し通り、江戸へ参ろうではござりませぬか」

とお吉はいった。「お供いたすでござりましょう。……江戸へ参るでござりましょう。……妾、あなた様のお心へ、そういう勇気

この伊織、そなたに憂き目など見せませぬ。それほどなれば江戸へ参ろうなどと、何んの私申しましょう。……道中にての苦患も危難

―とも知らずに範之丞とお吉とが、ふたたび帰らない江戸への旅へ、盆地の草を分けながら、丘の方へ並んで歩いて

「やアお浦、狂女のお浦！　……江戸にいるはずのままごと狂女が！　……こんなところに……こんなところに

「せっかくこれまで危険を避け避け、安泰を保った私たち、江戸への門出に人様のことに……」

もうこのころには田沼一行は、すでに江戸へ帰っていた。

江戸の秋のさわやかさ！

、一人のこらず見遁がしてしまったが、その後お吉め江戸へ入り、あんなものに零落したものと見える）

それで車塚の乱闘の際、混乱にまぎれ二人を見失い、江戸へ辛うじてはいってからも、範之丞の屋敷は知っていながらも、そうして

と同じく、車塚の乱闘に負傷もせず、これもとにかく江戸へはいり、ひそかに屋敷に帰っていることも、探って知っておりながら、

そう察したか家々では、早く雨戸や窓を閉じ、江戸の市中は寂しかった。

大胆にも奪って逃げたのであった。その後九十郎は江戸へはいった。このお浦さえ抑えていたなら、田沼様といえども

感情が一面において、範之丞兄妹も帰っているらしいこの江戸の地へ彼自身、大胆に入り込んだ原因でもあった。

江戸へはいっても仕官は出来ず、町道場をひらくことも、寺小屋らしいものをひらく

「この江戸の地へ帰って来ても、その惻隠の心持ちが、弱気となってわし

地団駄を踏んで叫んだが、八百八町の江戸は広い、今夜中にお浦を探すことなど……

「八百八町広い江戸の、どこへ素ッ飛んで行ったものか、見当のつかないままごと狂女

天明三年に起こったところの、東北地方の大饑饉、死人の肉をさえ食したという、大饑饉の時この郡兵衛

信州諏訪の郡高島の城下（今日の上諏訪町）そこへ一行がついたのは、三月上旬のことであった。

――侍女などの控える部屋の一つに、お浦が道成寺の花子の姿で、壁にもたれてボンヤリ坐り、その横に警戒でもする

「昨夜隅田で田沼殿への駕籠が……」

ものさ。……それはとにかくわしとしては、昨夜隅田で駕籠を奪った手合いの、大将ともいうべき黒頭巾の武士に、逢っ

進物にした、その織江がこの女か？　中途で隅田で冬次郎のために、奪い去られたと聞いた時、残り惜しいような気がし

まる一年が経過して、冬次郎が隅田の夜の堤で、駕籠を襲って織江を助けた、その日にあたる十一

大江戸の町々は寝静まり、掛け行燈には火影さえなく、夜を警しめる番太郎の、

四、五寸、松井田に至っては三尺もつもり、軽井沢、沓掛、追分などへは、二抱えもある大石降り、人家ことごとく倒壊し、

以前小石川の水府館へ、武術をお眼にかけるべく、お館の懇望で参上

、アッハッハッ、女勘助、男とは見えぬ艶かさ、寛永寺の坊主など厭な眼をして、さぞ見送ることだろうな。……がそう

「その源内の考案で、武蔵野の一所へ田沼めは、屋敷を造ったということじゃの」しばらくたって

ておる。それにも飽き足らず歌枕の地、風光絶佳の武蔵野へ、異様の屋敷を造るとは、田沼の専横尋常でないぞ！」

武蔵野の一所多摩川に近く、「逃げ水の屋敷」と俗に呼ばれる、田沼主殿

空を蔽う煙り煙り！　槿花一朝の夢として、武蔵野に現われた阿房宮、逃げ水屋敷の燃え崩れる姿を、背景にして四散する人々

※筑波晴れ、浅間曇りて鵙啼かば、雨は降るとも、旅よそいせよ

、松井田に至っては三尺もつもり、軽井沢、沓掛、追分などへは、二抱えもある大石降り、人家ことごとく倒壊し、山を出た

の日は晴れた好天気で、小春のように暖かかったので、両国へでも出かけて行き、本来無邪気な人だったので、盛り場にかかっている見

心にして、煮売り屋、小茶屋がゴチャゴチャあり、江戸両国の盛り場を真似た、掛け小屋なども出来ており、手品、軽口、不具の見世物

熊太郎が内門弟の一人、平松清三郎を供に連れて、下谷の往来を歩いていた。

こうしてごみごみした下谷の裏町の、露路や小路をあちこちと通って、娘が行き二人が追い

―昨夜我々が決行しました事件を、二人の武士が下谷の往来を、批評がましく噂しながら通る、片腹痛く存じましたので、

ごみごみとした下谷の裏町、無数に露路や小路があって、それが縦横に織られて

ここは下谷の裏町で、二日前の夜乱闘のあった、あの場所から相当離れ

たもの、松平冬次郎に相違なく、その冬次郎の隠れ家は、下谷の裏町だということを、田沼主殿頭に知らせたのは、役目

（下谷の裏町のあの家へ、お吉を囲って住んでいた頃が、せめて

「お父様のことはともかくとして、お前を下谷の妾宅で、気絶させて二階へ閉じこめたも……」

ていた。だからこそ以前にはこのお浦を、下谷の妾宅の隣家にかくまい、ひそかに扶養したことがあった。そのお

はそのとたんに飛び起き、冬次郎の隠れ家にあまり遠くない、ここ下谷の裏町の、露路を一方へ逃げ出した。

田沼屋敷から追い立てられた、十二神貝十郎は苦笑しいしい、下谷の裏町を歩いていた。

晴れて快い日の午後のことであったが、例の下谷の冬次郎の、数寄と風雅とで造られてある、隠れ家の一室茶室めい

「水戸様お館で逢って以来、かけちがってとんと逢わぬ。が噂は絶えず

を引いているだけに、尊王の念きわめて厚く、学も水戸派の正統を伝え、生涯に五度兵庫に下り、湊川に立ち寄って、

将監武元卿の、妾腹ながらも実子なのであって、水戸家の血統を引いているだけに、尊王の念きわめて厚く、学も水戸

上州館林六万余石、そこの城主たる松平家へ、水戸家よりはいって家を継ぎ、幕府に仕うること五十余年、執政の

にはうんと自重し、天下の副将軍と下世話にいわれる、水戸中納言家から招かれても、一応のところは断わって、再度の使者に

「長崎の大通辞吉雄幸左衛門や、甲必丹蘭人カランスなどから、舶来の珍器

近道の木曽の街道を通らず、遠道かけて甲州街道より、甲府へ入り諏訪へ入りました。しかるに殿におかれましても、同じ

にわざわざ遠道かけて、甲州街道から入り込んだは、彼の腹心甲府御勤番支配や、諏訪因幡守や牧野遠江や、岩村田侯と密々に逢い

「道中筋の諸大名や、甲府勤番支配達、余が腹心股肱のものと、膝を交えて懇談し、

松平冬次郎とはいかなる人物か？　上州館林六万余石、そこの城主たる松平家へ、水戸家よりはいって家

たり、文魚だの焼翁だのというような、蔵前の大通と往来するかと思うと、不断に諸国へ旅をして、

蔵前の札差しの一人であり、十八大通の仲間であり、しかも学者であり

属する金貸しといえば、村田春海や大口屋暁翁、いわゆる蔵前の札差しじゃ。各藩に属する金貸しといえば、掛屋と称するあの手合いじゃ

だい。……こういうお触れ書きを出した奴や、蔵前の札差しなんて奴は、銀で本田髷を巻き立ててよ、吉原の大籬

「神田北八丁堀の？　……」

神田の方へ行くのである。

ました。しかるに九十郎このことを聞き知り、我が父を怨みお茶の水にて、討ち果たしましてござります。……わずかながらも我が家に止宿し、

建て直すという美名のもとに、各種の官営事業を行い、銀座、鉄座、真鍮座を設け、その冥加金の幾割かを、公然と

小諸の城主一万五千石、牧野遠江守の城へ向かって、発足したところの

「小諸かないしは岩村田の方へ、出かけて行くらしい様子はないか？」

のじゃ。……そればかりでない高島藩よりも、おそらく小諸の藩よりも、内々警護の武士を出し、田沼の身辺守りおるはずじゃ

や鬼火燃える、古戦場に沿った街道を、塩尻の宿から小諸の方へ、雨に打たれて行くのであった。

、東北の方へ辿って行けば、木曽街道を逆行し小諸の方へ行くことが出来る。

小諸城下から二里ほど離れた、車塚の郷の一軒の家の、薄暗い

ぬ。……あなた様を一人留守にして、物騒な小諸の城下などへ、参りたくはないのでござりますが……背に腹

、東長沢村、西長沢村、小沼村などを荒らし廻り、小諸城下へ押し寄せて行く、一揆の百姓や浪人などが、蹴上げて立てた土煙り

でも小諸の城下まで来た。

で、この廃屋を住居にしてからも、お吉は小諸の城下へ出て、三味線を弾いて人の門へ立った。

が思ったのは、一揆がますます猖獗となり、諸方から小諸の城下へ迫る。領主牧野遠江守様も、宥めて治める法を失い、

「どれそれでは今日の商い、小諸お城下をひとながし……」

牧野遠江守の居城たる、小諸の城内は上を下への、大騒動を演じていた。

この時より半月ほど以前に、塩尻の社家を引き払い、この小諸の牧野家の居城へ、田沼主殿頭に扈従して参り、今に滞在

を奪おうと、自分たちの後を塩尻から追って、この小諸へ来ておるであろうとは、貝十郎は思っていたが、どこ

さりとて広い小諸城下を、あてなしに漫然と探したところで、捕えることは出来そうも

と、この頃小諸城下の、雑踏の巷を分けながら、冬次郎と熊太郎と清三郎とが、勘助

拙者は十二神貝十郎、ご老中田沼様に扈従して、小諸の城中に滞在しおるもの、城方の衆ご存知でござろう。田沼様代理と

小諸の牧野遠江守の、天守の窓によりながら、田沼意次は城下を見

のだ！」突然意次はいまいましそうにいった。「なまじ小諸の牧野の城で百姓ばらの一揆を見、惻隠の心を起こしたの

春雨や鼠の嘗める隅田川

嶮しい岩山であり、三方は低い丘をもって巡らし、千曲川へ流れ込む鳳来川を、その丘の彼方に持った、この車塚には三