塩尻 叡山 宇田川町 名古屋 甲州 雷門 兵庫 日本アルプス 厳島 八丁堀 本所 諏訪 淡路町 大津町 西陣 岩屋 江戸 八幡宮 清水寺 駿河台 玉川村 大江戸 高野山 和田峠 石堂寺 熊谷 根岸 上野公園 日比谷公園 長崎 千葉 京都 下谷 深川 上野 日本橋 内幸町 浅草 品川 神田 稲荷町 田原町 銀座 鶯谷 御茶ノ水 千住 京橋 両国橋

だが内藤家の行列が、塩尻の宿へかかった時、一つの事件が突発した。と云っても

塩尻から岡谷へ抜け、高島の城下を故意と避け、山伝いに湖東村を通り、

竹林派の来歴申し上げまする。そもそも、始祖は江州の産、叡山に登って剃髪し、石堂寺竹林房如成と云う。佐々木入道承禎と宜く、

ここは寂しい宇田川町、夜がしんしんと更けていた。

はズンズン走って行った。芝口へ出、露月町を通り、宇田川町、金杉橋、やがて駿河守の屋敷前へ来た。

にもおりまた大坂にもおりました。また京師にも名古屋にもあらゆる所におりました。もちろん江戸にもおりました。――さて

ということです。漂浪している窩人の群と、甲州のどこかで逢ったんだそうです。もちろんその時は窩人達は、

が斬り手の武士は、公孫樹の幹をゆるやかに廻り、雷門の方へ歩いて行った。鳩の啼き声、賽銭の音、何んの変っ

兵庫は葉之助を導いて書籍蔵へ案内した。実に立派な文庫で

――すなわち国枝史郎は、数人の友人と連れ立って、日本アルプスを踏破した。

「どっちだどっちだ、熊谷かえ？　それとも厳島の清盛かえ」

提灯が幾十となく、京橋の方から飛んで来た。八丁堀の同心衆が、岡っ引や下っ引を連れて、この時走って来たの

「うん、そうか、では聞くが、錦糸堀は本所のどの辺にあるな？」

「アッハハハハ、まるで反対だ。錦糸堀は本所の外れにある……貴公江戸は不案内であろう？　……云いたくなければ

があってから十日余りの日が経った。その時諏訪の家中一般に一つの噂が拡まった。

「事は急ぐに限ります。明早朝お暇を賜わり、諏訪へ参るでござりましょう」

、馬上手綱を掻い繰って、草木森々たる峠路を伊那から諏訪へ歩ませて行く。進物台、挿箱、大鳥毛、供奴、まことに

中一日を旅で暮らし、その翌日諏訪へ着いたが既に飛脚はやってある。使者の行くことはわかっている、

その夜諏訪から重役が幾人となく挨拶に来たが、千野兵庫が来た時で

「何さ、高遠の妖怪は諏訪の妖怪と事異り意気地がないのでござろうよ」などと皮肉を云う者もある。

変え、根岸を指して走っていた。雉子町を通り、淡路町を通り、駿河台へ出て御茶ノ水本郷を抜けて上野へ出、鶯谷へ差しかかった

主水町を過ぎ片羽通りを通り、大津町まで来た時であったが、一個黒衣の大入道が彼の前を歩い

それに扮装が贅沢ですよ。衣裳はお召し。帯は西陣。長襦袢は京の友禅縮緬。ご婦人方はお化粧をします。白粉に

「笹の平！　宗介神社！　天狗の岩！　岩屋の住居！　秋になると木の実が熟し、冬になると猪が捕れた

「……何が美しいと云ったところで江戸の祭礼に敵うものはまず他にはありませんな。揃いの衣裳。山車

咲き満ちています。花見衣に赤手拭い、幾千という江戸の男女が毎日花見に明かし暮らします。酒を飲む者。踊りを踊る人。伽羅

感嘆の声を思わず口から洩らしたが、「そういう江戸には美しいお方が沢山おいででございましょうねえ」

「江戸へ行きたいとおっしゃるので？　おいでなさりませご案内しましょう。ですから

「お江戸？　そうそう江戸にあります」

ギクリとしたのであった。彼は城下の人間で江戸などに邸はないからである。

たことであった。そんな事より今や彼女は自分が江戸へ出て行って立身出世をした時の事を空想に浮かべているので

てください！　連れて行ってください！　妾どうしたって江戸へ行きます！」

また京師にも名古屋にもあらゆる所におりました。もちろん江戸にもおりました。――さて、そこで山吹さん、どこの話をし

「それではどうぞ江戸の話をお聞かせなされてくださいまし」

「よろしゅうござる、江戸の話をそれではお聞かせ致すとしましょう」

「江戸は悪魔の巣でござるよ！」

嘲けるように叫び出したのは充分多四郎の甘言によって江戸の華美さを植え付けられた彼女山吹に他ならなかった。

「いいえ江戸は美しい人達の華美に遊びくらしている極楽だということでござります！

と山吹とを前に据えて白衣長髪の妙な人は江戸の話を話し出した。

「……江戸は将軍家おわす所、それはそれはこの上もなく派手な賑やかな所です。

。実に小判さえ出せば万事万端己が自由――これが江戸の習俗です。したがってそこには『静粛』もなければ『謙遜』という

「江戸へ駈け落ちと評定一決。……」

一月となり二月となり、暖かい江戸では梅が散り桜の花が咲こうというのに、窩人部落の笹の

「江戸から大歌舞伎が来たそうだ。どうだなお前観に行っては」

侍医ではあったが、客分の扱いを受けている。江戸へ出しても一流の先生、名聞狂いを嫌うところからこのような山間にくすぶっ

「はい、江戸でございます」

「江戸はどこだな？　どの辺だな？」北山は遠慮なく押し詰める。

「はい」と紋兵衛は狼狽しながら、「江戸は芝でございます」

まるで反対だ。錦糸堀は本所の外れにある……貴公江戸は不案内であろう？　……云いたくなければ云わないでもよい。産まれ故郷

ばかりに、狭い高遠の城下などに跼蹐してはいるけれど、江戸へ出ても三番とは下がらぬ、東軍流の名人である。――

参覲交替で駿河守は江戸へ行かなければならなかった。

甲州街道五十三里を、大名行列いとも美々しく、江戸を指して発足したのは五月中旬のことであった。江戸におけ

て発足したのは五月中旬のことであった。江戸における上屋敷は芝三田の四国町にあったが予定の日取りに少しも

中には葉之助もいた。彼にとっては江戸は初で、見る物聞く物珍らしく、暇を見てはお長屋を出て市

て初秋が来た。その頃紋兵衛とお露とが江戸見物にやって来た。芝は三田の寺町へ格好な家を一軒借り

の見物に寧日ないという有様であった。しかし二人が江戸へ来たのには実に二つの理由があった。

いることは出来なかった。葉之助が殿に従って江戸へ行ってしまってからは、彼女は病いの床についた。そうして

「葉之助殿のお在でになる、江戸の土地へ連れて行ったら、あるいは気の晴れることもあろうか。そうして

だが俺は見ていない。変事の起こったのは江戸のお屋敷で、俺はお噂を聞いたまでだ。千里眼なら知らぬこと

はお噂を聞いたまでだ。千里眼なら知らぬこと、江戸の事件は高遠では解らぬ」

の参覲交替の節、俺も殿のお供をして、江戸へ参ったことがある。するとある日帯刀様から、使いが来て招か

「江戸の有名な蘭学医、お前も名ぐらいは知っていよう、大槻玄卿という

「今度の江戸の事件について、誰かもっと詳しいことを知らせてくれるものはあるまい

「江戸からのお飛脚でございます」

「江戸からの飛脚？　おおそうか。いや有難い。待っていたのだ。すぐ

卿なる者は、日本有数の蘭学医、信州の天野か江戸の大槻かと呼ばれ、俺と並称されている。いずれここにある白粉

「これはこうしてはいられない。江戸へ出よう江戸へ出よう。そうして大槻と直かに逢うか、ないしは他

「これはこうしてはいられない。江戸へ出よう江戸へ出よう。そうして大槻と直かに逢うか、ないしは他の手段を

「江戸行きだ、用意せい」

ことの出来る者は、大槻玄卿以外には、少くも江戸にはない筈だ。と云うことであって見れば、何をおいても

源介は濁声で一喝した。「ところもあろうに江戸の真ん中で、女悪戯とは何事だ、鯨の源介が承知ならねえ！

「江戸へ来ているということだ」

「ここは江戸だ。しかも深夜だ、よもや鉄砲を撃つことは出来まい。撃ったが最後世間

深夜の江戸は湧き立った。邪教の道場は燃え落ちた。火が八方へ燃え移った。町火消し

この頃江戸の真ん中では、窩人と水狐族との闘争が、凄じい勢いで行われ

様子の人間だったな？」「五十恰好の商人風、江戸の人じゃあありませんな。贅沢な様子をしていましたよ。田舎

高遠城下で、夜な夜な辻斬りをしたように、またもや彼は江戸の市中を、血刀を提げて毎夜毎夜、彷徨わなければならないようになっ

江戸は――大袈裟な形容をすれば、恐怖時代を現じ出した。

内藤駿河守が江戸を立って、伊那高遠へ帰ったからであった。

ご殿から下がって来るや郊外の森へ出かけて行き、八幡宮の社前に坐って無念無想に入ることがあり、またある時は木刀を揮っ

「ハイ、今から二十日ほど前、乳母を連れて清水寺に参詣に参った帰路、人形使いに身を※した恐ろしい恐ろしい人買いに誘拐

て走っていた。雉子町を通り、淡路町を通り、駿河台へ出て御茶ノ水本郷を抜けて上野へ出、鶯谷へ差しかかった。

城下を故意と避け、山伝いに湖東村を通り、北山村から玉川村、本郷村から阿弥陀ヶ嶽、もうこの辺は八ヶ嶽で、裾野がずっと開け

いう演武場！　西班牙に今もある闘牛場！　それが大江戸にあろうとは！

の誉れあり、江州佐和山石田三成に仕え、乱後身を避け高野山に登り、後吉野の傍に住す。清洲少将忠吉公、その名を聞い

「どこにどうしておりますやら、和田峠とやら申す山で、ようやく人買いの眼を眩ませ、夢中でここまで逃げて

そもそも、始祖は江州の産、叡山に登って剃髪し、石堂寺竹林房如成と云う。佐々木入道承禎と宜く、久しく客となっておりますうち

「どっちだどっちだ、熊谷かえ？　それとも厳島の清盛かえ」

行ったのであった。さらにそれから紋兵衛の駕籠は根岸の方へ進んで行き、夜も明方と思われる頃、一宇の立派な屋敷

の下屋敷は森帯刀家の下屋敷と半町あまり距った同じ根岸の稲荷小路にあったが、そこには愛妾のお石の方と、二人

その葉之助は駕籠をつけてこの根岸までやって来たが紋兵衛の乗っているその駕籠が、森家の下屋敷へ

鏡葉之助は、北山へ飛脚を出してからも、根岸にある主君の下屋敷を念頭から放すことは出来なかった。で、非番にあたる

町の邸を出て、殿の下屋敷を警護するため、根岸の方へ歩いて行った。増上寺附近まで来た時であったが、

根岸は閑静な土地であった。夜など人一人通ろうともしない。

この時鏡葉之助は、裏町伝いに根岸に向かい、皆川町の辺を走っていた。

葉之助は根岸へ来た。

いつまでも東南へ進み、日本橋から東北に取り、須田町から上野公園、とズンズン進んで行ったのであった。さらにそれから紋兵衛の駕籠

道順で云えば、愛宕町から桜田本郷へ出て内幸町から日比谷公園、数寄屋橋から尾張町へ抜けそれをいつまでも東南へ進み、日本橋から東北

俺が旅行家だということです。――俺は肥前の長崎にもおりまた大坂にもおりました。また京師にも名古屋にもあらゆる

長崎仕込みの立派な蘭医、駿河守の侍医ではあったが、客分の扱い

本取り、さらに老後に至っては、北辰一刀流を編み出した千葉周作を向こうへ廻し、羽目板へまで押し付けてしまった。名利に恬淡出世を

「京都の産まれでございます」

、この信濃からは遠く離れておる。しかしよもやただ一人で京都から参ったのではあるまいな」

「ナニ京都？　おおさようか。京都は帝京、天子在す処、この信濃からは遠く離れておる。しかしよもやただ

「ナニ京都？　おおさようか。京都は帝京、天子在す処、この信濃からは

「京都から参ったのでございます」

「産まれは京都、名は水藻、恐ろしい人買いにさらわれまして……」

谷中から下谷へ出た。

火事は漸次大きくなった。下谷辺は騒がしかった。人々は門に立って眺めていた。

では嫖客が、日本橋の往来では商家の手代が、下谷池之端では老人の易者が、深川木場では荷揚げ人足が、本所回向院

は商家の手代が、下谷池之端では老人の易者が、深川木場では荷揚げ人足が、本所回向院では僧が殺された。

、それが千本となく万本となく、隅田の堤、上野の丘に白雲のように咲き満ちています。花見衣に赤手拭い、幾

上野の方へ足を向けた。

、淡路町を通り、駿河台へ出て御茶ノ水本郷を抜けて上野へ出、鶯谷へ差しかかった。

の屋敷の方へ、二人はソロソロと歩いて行った。上野の山に遮られて、火事の光も見えなかった。根岸一帯は寝静まっ

数寄屋橋から尾張町へ抜けそれをいつまでも東南へ進み、日本橋から東北に取り、須田町から上野公園、とズンズン進んで行ったのであった

窩人の一団は走って行った。室町を経て日本橋を通って京橋へ出た。

千住の遊廓では嫖客が、日本橋の往来では商家の手代が、下谷池之端では老人の易者が、深川

今日の道順で云えば、愛宕町から桜田本郷へ出て内幸町から日比谷公園、数寄屋橋から尾張町へ抜けそれをいつまでも東南へ進み、日本橋

たが別に変ったこともない。で、その足で浅草へ廻った。

いつも賑やかな浅草は、その日も素晴らしい賑わいで、奥山のあたりは肩摩轂撃、歩きにくい

浅草奥山の見世物小屋から、葉之助は邸へ帰って来た。

他に行くところもなかったので、浅草の方へ足を向けた。

彼らは浅草奥山の、見世物小屋の太夫達であった。

遠く離れた浅草は、立ち騒ぐ人も少かった。しかしもちろん人々は、二階や屋根へ駈け上がり

「芝と浅草では離れ過ぎていらあ。対岸の火事っていう奴さ。江戸中丸焼け

「火消し同士の喧嘩だそうだ」「いや浅草の芸人と、武士との喧嘩だということだ」「いや賭場が割れ

浅草の方へ足を向けた。

ところが一昨日の晩のことだ。浅草観音の境内へ行き、偶然窩人達の話を聞いた。毒蛇を盗ま

もあろう、よく聞き訊してご覧なされ。これも一昨夜浅草で、山男、すなわち窩人どもから、偶然聞いた話でござるよ」

浅草の観世音、その境内の早朝、茶店の表戸は鎖ざされていたが、

で来たぞ。まず俺の物にして置いて、品川へでも嵌めりゃあ五十両だ」

八山下の夜が更けて、品川の海の浪も静まり、高輪一帯の大名屋敷に、灯火一つまばたいて

神田の諸人宿の奥まった部屋に、天野北山は坐っていた。

車坂を抜けて山下へ出、黒門町から広小路、こうして神田の大通りへ出た。

神田辺りはやや騒がしく、町人達は門へ出て、芝の大火を眺めて

そうして新しく駕籠を雇い、神田の旅籠屋へ引っ返した。

その翌日のことであった。神田の旅籠屋北山の部屋で、北山と葉之助とが話していた。

出た。田原町の方へ突進した。清島町、稲荷町、車坂を抜けて山下へ出、黒門町から広小路、こうして神田の大通り

と馬道であった。それを突っ切って仲町へ出た。田原町の方へ突進した。清島町、稲荷町、車坂を抜けて山下へ出

こうして一団は銀座へ出た。

銀座手前まで来た時であった。前方にあたって鬨の声が聞こえた。大きな

通り、駿河台へ出て御茶ノ水本郷を抜けて上野へ出、鶯谷へ差しかかった。

左右から木立が蔽いかかり、この時代の鶯谷は、深山の態を呈していた。

たのではあるまいか。……おっ、そう云えば鶯谷で、知ったような人と擦れ違ったが、そうだそうだ北山先生だ

鶯谷の暗闇で、葉之助と擦れ違った人物は、谷中の方へ走って

「鶯谷で擦れ違った、昨夜の若い侍は、葉之助殿に相違ない。あれ

た。雉子町を通り、淡路町を通り、駿河台へ出て御茶ノ水本郷を抜けて上野へ出、鶯谷へ差しかかった。

千住の遊廓では嫖客が、日本橋の往来では商家の手代が、下谷池之端

一団は走って行った。室町を経て日本橋を通って京橋へ出た。

御用提灯が幾十となく、京橋の方から飛んで来た。八丁堀の同心衆が、岡っ引や下っ引を

両国橋の真ん中で、斬り仆された武士があった。