妙見山 福島 神戸

其夢よりも美しい。町の人達は芸者を連れて妙見山へ出かけて行き山々谷々に咲き乱れている薄紅の桜の花を酒の肴にし

中央線木曾福島！

いるのであった。人情、風俗、山川の姿……福島の町の一切の物が私には愛らしく好ましい。

木曾の盆踊を見ようと思って、八月の終りに福島へ行った。渓流と翠巒の相逼った突忽とした風景がどんな

「俺は福島を祝福する！　どうしたって此町に住まないでは置かぬ！」

で、何処へ住もうと随意であった。住めば住む程福島という町は私の趣味にピッタリと適った何うにも離れ難無い町

そうして実際、その時以来、私は福島に住むようになった。私は其時独身ではあったし、夫

ではあったけれど名に負う信州の高原地帯の木曾の福島であったから、寒さは既に冬に近く炬燵の欲しい陽気であった

そして此木曾の福島へ二月前に参りましたのも美しい風景を描く為で――写生

私の考えは正しかったと見えて、平和な木曾の福島町には、秋が行って冬が来て、その冬が終えて春

福島の春の美しさ！　桜咲き鳥啼き水流れ、夢のようだと

「私は福島を祝福しまい。私は福島から去ろうと思う。左様なら、左様なら、左様ならと云って！」

「私は福島を祝福しまい。私は福島から去ろうと思う。左様なら、左様なら、

此時、平和な福島の、町の人達を驚かせて不思議な窃盗が行われた。ご料

私が福島を去ったのはそれから間も無くのことであった。

別離の歌なのであるが、つまり愈々俥に乗って福島の町を去ろうとした時にもお寿賀さんは送ってもくれなかっ

のであった。それは何ういう女かというに、神戸の貿易商の令嬢とかいうことで、神経療養の目的を以て高原の