嵐山 大阪 糸屋町 西陣 近江屋 神戸

ば、明日は幸ひ日曜の事、お駒をも連れて嵐山あたりへ、花見に行かむといひ出たるは、長吉の報告に、今日の

些細なる事にも眼に角立てらるれば、アアまた明日は大阪行かと、呟くもあれば、お蔭でこちらへ来てより、ついぞ鯛は

これお糸ゆふべもいうた通り、今日はこれから大阪まで行つてこねばならぬ。いつもいふ事ぢやが、留守中は殊に気を

旦那はまアいつ大阪へ行かはるのやろ、人を早う早うと起こしといて、今時分までかかてはる

行て、もう何時でござりますると聞いて来い。ついでに大阪へ行く汽車はいつ出ますと、それも忘れまいぞ。

五百機立てて綾錦、織りてはおろす西陣の糸屋町といふに、親の代より仲買商手広く営みて、富有の名遠近にかくれ

見それ申しまして失礼を致しました。わたしもただ今では糸屋町の、近江屋といふ家に居りますさかい、お夏さんにもちとお遊びにお

五百機立てて綾錦、織りてはおろす西陣の糸屋町といふに、親の代より仲買商手広く営みて、富有の名遠近

を、夫婦に子供下女丁稚五人連れにて過ぎゆくは、これ近江屋の一群なり。お糸は日頃籠の鳥、外に出る事稀なれど、春の

はなし、地廻りのみは雇ひ人を遣へど、大阪神戸への取引は、主人自ら出向くが例なり。この一事庄太郎の為には