俳諧師 / 高浜虚子
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牛込の和良店、淺草の東橋亭、麹町の青柳亭、小石川の初音亭と東京中の主な寄席は大概知らぬ處が無い位に小光の
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ふと目がさめると汽車は箱根のトンネルに這入つたり出たりしてゐる。もう夜中であつて、殊にいつ
夜明けに新橋へ著いた。箱根で夢みた晦冥の天地は消え失せて今はあかるい市街が目の前に現前し
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がいゝさうだ」と例の高調子で言つて「増田今日嵐山へ行かうか。嵐山へお茶漬でも食ひに行かうか。塀和君はどう
例の高調子で言つて「増田今日嵐山へ行かうか。嵐山へお茶漬でも食ひに行かうか。塀和君はどうだ。君も一緒に
ゐたが、はきはきと其運びをするでもなかつた。嵐山行きの費用は細君が帶の中から男持の蟇口を出して支拂ひ、
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三藏の父は竹刀を提げて中國九州を武者修行に※つて廢藩後も道場を開いて子弟を教育したといふ
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、尻に帆掛けて出發したのであつた。汽車が逢坂山を越えて瀬田川を渡つて、未知の山水を送迎し始めてから三藏
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。汽船は其靜かな鏡の面に渦を卷いて大阪に向ふ。
頃俄に蒲團を蹶つて起き出でゝ、今日は獨りで大阪へ行つて來ると言ひ出した。それから汽車賃をこしらへる爲めに細君
に曲げ込ませて、其金を握つて晝頃出掛けた。大阪には五十嵐の叔父に當る人が居て此頃は殆ど絶交同樣になつ
でせうか」と言つて細君を上から見下す。「大阪へ行くつて晝頃から出掛けましたから今日は遲いでせうよ」と
這入つて酒を飮んで、五十嵐は昨今の窮境を話して大阪行きの理由までぶち明けた。佐野は「旨くやつてるなア。『手鍋提げて
。それ位の事にくよ/\してやがるのか。大阪行きも貴樣のやうなぶつきら棒では想像するに談判破裂だな。
は又厭や/\乍ら其財布を懷に押込んでもう大阪にも行かず家に歸つて見ると前囘に陳べたやうな細君の淺ましい
聲をして笑うた。それから「僕は三四年前大阪に居た頃親戚の藝者屋の家にゐてあゝいふものゝ内幕はよく
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て、昨日下りた七條の停車場から、上長者町、御所、鴨川、それにこの三つの山を結びつけた方の京都、そのまざ/\
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來た。細君は「北海道?」と先づ驚いた。「札幌? 函館?」と三藏は傍から聞いた。「函館さ」と十
の出し入れに許り苦心してゐるやうでは東京に居ようが札幌に居ようがたいした相違がある譯では無い。七圓でも給料が上つ
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。廣瀬亭から芝の琴平亭、四谷の喜よし亭、牛込の和良店、淺草の東橋亭、麹町の青柳亭、小石川の初音亭と東京
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「寂光院はまだ遠いですか」と三藏は茶店の婆さんを顧みる。
寂光院の門はひたと鎖してある。戸の透間から内を覗いて見ると、
、寒さが足の尖迄浸み渡るやうに覺えた。寂光院は尼寺の筈だ。人の世に背いた尼が人の世に柵を
橋にて隔て門を鎖ぢて隔てた此深雪の中の寂光院には人の世の暖か味は先の鐡瓶の湯の外には何物も
て、彼の小川の板橋を渡つて、其から又寂光院を顧みた。古き物語のあとの古寺を訪うて三藏の頭にしみ/
に三藏も筆を執つて紙に向ひ始めた。寂光院の若い尼を主人公にして、其若い尼と四條で見た舞子とを
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漸く我に歸つたやうな顏をして「山本君、叡山はどの山かい」と聞いた。「叡山かい、叡山はそれさ」と
山本君、叡山はどの山かい」と聞いた。「叡山かい、叡山はそれさ」と山本は顋で東北隅に聳えてゐる山を
叡山はどの山かい」と聞いた。「叡山かい、叡山はそれさ」と山本は顋で東北隅に聳えてゐる山を指した。
で東北隅に聳えてゐる山を指した。「あれが叡山か」と三藏は感心する。國に居て夢想してゐた京都と
三藏は掛茶屋に腰を掛けて握飯を取出して食ふ。叡山は隆起した背中を三藏の方に向けてゐる。三藏はその大きな
の小さな掛茶屋の床几に自分は今腰かけてゐるので、叡山の大に比べると自分は今豆人形の樣に小さいと思ふと、一種の
にしてゐる白い握飯を見ると、此處から見た叡山と同じやうな三角形をしてゐる握飯の、白い上にも眞白い米の
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近くなつたので得意になつて行つた。其次は本所の廣瀬亭といふのへ掛つた。本所といふ處へはまだ一度も
其次は本所の廣瀬亭といふのへ掛つた。本所といふ處へはまだ一度も足を踏み入れたことが無かつた。町名も
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煮え立つ強い匂をかぎ度いのであるが「私は此宇治の里が昔から好きでやしてな。どうでやす一つお附合ひな
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想ふ。東京の吉原といふ處を想像して見る。此祇園の百倍の繁華を描く。十風は其處で一代の色男を氣取
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ラムプを消しては出掛ける。廣瀬亭から芝の琴平亭、四谷の喜よし亭、牛込の和良店、淺草の東橋亭、麹町の青柳亭、
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十風に北海道の支店の方へ行つて見てはどうかといふ話が佐野からあつた
の本店に居てはとても當分の處増給がむづかしい。北海道で辛抱する覺悟なら七圓増して二十二圓は出せる。それも永くとは
相談せう」と言つて歸つて來た。細君は「北海道?」と先づ驚いた。「札幌? 函館?」と三藏は傍から
てゐたとかで手土産をも持つて來た。「北海道つてあの金龍さんのとこなんでせう」と梅代は十風に聞く
は十風に聞く。「金龍? さう/\あれは北海道の女だつたね」と十風は餘所々々しく返辭をして手紙を
氣が呼び戻さるゝ。一婦人に對する戀情から今自分は北海道に迄落ちて行かねばならぬのかと思ふと情無いやうな腹立たしいやう
風は厭な顏をして手紙の封をする。「北海道の方はまだ寒いだらう。胴著が一枚欲しいがあれだけ出質て
十風夫婦は愈※北海道に行つた。三藏は其日新聞や書物をつめた行李を車に乘せ
來てゐました」「さうでやせう。あの體で北海道は少し無理でやすな。併し十風の境界は却※古風でえゝ。あの
十風夫婦は此年の暮北海道を去つて東京では誰にも逢はずに京都へ來た。北海道の寒
て東京では誰にも逢はずに京都へ來た。北海道の寒さが非常に十風の健康を損じたのと何かの事件で
或通信社へ這入り直ぐ又或新聞社の會計方に轉じた。北海道で劇しく喀血してから體はだん/\衰弱する。京都へ來てからも
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藏は躊躇した。と同時にすぐ此寄席の隣りに草津といふ料理屋のある事を思ひ出した。此瞬間三藏の頭には大膽
に考慮する遑も無く寄席の前を通り過ぎた足がすぐ草津の門を這入る。「らつしや――い」といふ下足の男の
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或夕暮三藏は京極から四條の方へ散歩に行つた。三藏は時々買物に寺町へ行く事
た。三藏は時々買物に寺町へ行く事はあるが京極へは滅多に行く事はなかつた。京極の錦魚亭でたゞ一度善哉
事はあるが京極へは滅多に行く事はなかつた。京極の錦魚亭でたゞ一度善哉を食つたのももう大分前の事で
である。三藏は今宵珍らしく獨りでぼつ/\と京極を歩く。大變な人出で「お這入りやーす」と言ふ寄席の呼聲も
のやうに細君の方へ出掛けて細君と一緒に四條から京極あたりを散歩する。時として二三日歸つて來ぬ事もある。何處
よりも京極を散歩する方がまだ幾らか心が慰む。京極から四條に出て四條の小橋を渡つて大橋を渡つて祇園の社を抜け
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大勢の人であつたが砲兵工廠の長い塀に添うて富坂を上る頃は淋しくなる。「山僧君あまり熱心になつちやいけないよ。君
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増田は京都の高等學校の法學部に入り、五十嵐は江田島の海軍兵學校に入つたのであるが、五十嵐は其翌年から肺病になつ
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月に入つてからは自ら筆を取つて書く。主人公は大江山の麓の村から離縁になつて歸つて來たといふ自分の家の西隣の
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松山一の老櫻のある料理屋に同窓生の祝賀會が開かれる。御詠歌の上手
失つて少し氣抜けがしたのであらう。三藏は松山に居る頃故人五百題は見た事があつた。けれども發句には
た。三藏は朝飯を濟ませて、行李の中から松山から持つて來てまだ一度も締めなかつた脚絆を出して締めて、草鞋
呉れぬか」と幌の中で三藏は言つた。松山の車でも京都の車でも前掛の上から往來はよく見えるので
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等の一行が神戸に送り、汽車が更らにこれを京都に送つたのは、四條の磧にまだ川床が殘つてゐて枝豆賣
蜃氣樓のやうなものが棚引いて其中に畫の如き京都があつた。
扨て今は親しく其京都の土を踏んで七條の停車場からガラ/\と車にゆられて、三
た方の京都、そのまざ/\とした現實の京都が三藏の鼻の尖にぶら下る。
、鴨川、それにこの三つの山を結びつけた方の京都、そのまざ/\とした現實の京都が三藏の鼻の尖
に一つにならなかつた理想と現實の二つの京都の、一方の色がだん/\薄くなつて來て、他の一つ
外れに見える尖つた山さ」と西方の天を指す。京都の三つの高山は此に於て三藏の頭に深く/\印象
に居て夢想してゐた京都と、現在踏んで居る京都とは今迄全く別のものであつたのが此時漸く一つのもの
三藏は感心する。國に居て夢想してゐた京都と、現在踏んで居る京都とは今迄全く別のものであつたのが
それから三藏と十分許り話をして歸つた。京都辯の穩かに物をいふ人で、此頃は時候が善いから嵯峨野
た。三藏は、それにしてはあの言葉つきが全く京都人らしく聞えたのが不思議だといつたら、増田は、又あれで江戸
たので、その時分發句を作り覺えて、それから京都へ來て、寧ろ卜翁が中心になつて五六の同好者が出來た
て、山端を過ぎて八瀬を過り大原の里へ行く。京都の市中で見る大原女より此八瀬大原で見る大原女の方がなつかしいやうに
と言ひ出した當時の心持が思ひ出された。三藏は京都へ來てから獨逸語や三角に苦しめられていつの間にか其時分
聞いたのであるが、其實此女郎といふのは京都の六條の數珠屋の娘で、かなりの身代であつたのが破産
東京の英語學校で知合ひになつて、それから増田は京都の高等學校の法學部に入り、五十嵐は江田島の海軍兵學校に入つ
へ、姉小路の家は朝日夕日が斟酌も無く射し込む。「京都といふ處は暑い處だ」と五十嵐は大きな聲を出して歎息する。
た蟇口の中から支拂はれたのであつたが、京都へ來る爲め五十嵐が何某との連帶で非道工面をして借りた高利
五十嵐は京都で世帶を持つ積りだといつてゐたが、はきはきと其運びを
京都の今年の冬は格段に寒い。三藏は國許から新たに屆い
の埠頭に立つて京都の天地を翹望した如く今は京都の古家の一間に籠居して東都の空を望むのである。
招いて居るやうに思はれる。嘗て三津の埠頭に立つて京都の天地を翹望した如く今は京都の古家の一間に籠居して
體が脹れ上つて來るやうに覺える。さうして京都の方を振返ると高等中學も其生徒も渥美の主人公も鶴子さんも小さい
によつて熱するやうな感じである。だん/\進んで京都が遠くなるに從つて自分の體が脹れ上つて來るやうに覺える
たので渥美へもあれつきり挨拶にも行かず、京都の天地を後に、尻に帆掛けて出發したのであつた。汽車
つた。麹町の方も番地がうろ覺えなので、京都などと違つて斯う判りにくいのでは險難だと思つて、北湖先生
幌の中で三藏は言つた。松山の車でも京都の車でも前掛の上から往來はよく見えるのであるが、東京の
ゐたのですよ。此方はね、宅のお友達で京都からいらつしやつたのよ」と細君は雙方を引合せて急須に湯
此年の暮北海道を去つて東京では誰にも逢はずに京都へ來た。北海道の寒さが非常に十風の健康を損じたの
飮む。金がある時は登樓などもする。「京都といふ處はしみつたれな處だが、己等の樣な貧乏人が遊ぶに
北海道で劇しく喀血してから體はだん/\衰弱する。京都へ來てからも發熱する事は屡※であるがそれでゐて亂暴
京都へ來てから間も無く十風は或會社の臨時雇となつたが
囘内國勸業博覽會の通信員を新聞社から囑託されて京都へ來て先づ何よりも早く十風の起居を明かにし度いと
それから尚半月許り三藏は京都に居つた。十風の細君は間も無く親許に引取られたと
此頃は京都にも大分俳人が出來て時々俳句會が開かれる。三藏は博覽會
さんやお常の事を聞く。鶴子さんは三藏が京都を去つてから間もなく或工學士の細君になりお常は去年
としての交通を絶つてゐたが、三藏は京都から歸つて間も無く久振りに出逢つて其風采言行の非常なる變
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が、三藏、加藤、平田、をばさん等の一行が神戸に送り、汽車が更らにこれを京都に送つたのは、四條の
のであるが、扨て播磨灘の夢覺めて汽船が神戸についてからは、加藤も無い平田も無いをばさんも無い三藏も
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組茶話會第三土曜横斜亭にて開會、幹事』『高知縣人會、今週金曜午後三時より、吉村方にて』『理事改選左
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となり月謝となり、其月桂冠となり、さうして又東京の高等工業學校を志望して上京する其學資となり旅費となる。
あるとは驚いた。これにも一つ面白い事は、東京の新聞に此頃俳句の出てゐるのがあるがね、七條の停車場
ではあの卜翁はもと靜岡の男であつたのが東京にも暫く居つたので、その時分發句を作り覺えて、それ
東京に居るといふ増田の友達から近日遊びに行くといふ報知が來た。
十風といつてゐた。増田とは三年許り前東京の英語學校で知合ひになつて、それから増田は京都の高等學校の
? 兎に角こゝいらでまごついてゐるのはよせよ。早く東京へ歸つたらどうか。丁度商館の方に人が入用なんだ。
藏に「これから俳句を添削して貰ふのには東京の文科大學に居る越智李堂が善からう。此男は人物が立派
を掛けて姉小路の拂ひをすませて遂に細君を連れて東京へ歸つてしまつた。其時増田や三藏に「これから俳句を
君は俳句とやらを作るさうだが面白いものかね。東京の親戚のやつに篠田正一といつて君より四五歳年上の青年がある
を彷徨うて居つた。それから其日の夜汽車で東京へ歸つてしまつた。渥美へは何の挨拶もしなかつたが
「さうですか」と三藏は又驚いて水月の既に東京に歸つた事を話した。「マア、さうですか」と細君も目
水月が風の如く去つてからは東京との俳交も暫く途絶え三藏は只學校の課業にのみ沒頭して居
李堂、北湖、十風、水月等の人々が遙に東京の空から手を上げて自分を招いて居るやうに思はれる。嘗て三津
祇園の社前に僅か許りあるやうであるが、ずつと飛んで東京の方を望むと乾坤に瀰漫してゐるやうに思はれる。早く飛んで
彈きし度くなる。十風の細君の事を想ふ。東京の吉原といふ處を想像して見る。此祇園の百倍の繁華を
を轉じたのだとも意識する。一番に此結果を東京の俳友に報告する。いづれも驚いた手紙をよこして、これからどうする
だ。二十一! 正に處女作を出すべきの歳! 東京へ降りて扨て誰を訪はうか。李堂か! 未だ面識
でも前掛の上から往來はよく見えるのであるが、東京の車は目より高く前掛が掛つてゐるので何物も見えぬ。
附から眼つきなどに氣に食はぬところが澤山あつた。東京の土を踏むや否や忽ち車夫にやられたと思ふと情ないやうな
と心で考へる。「物價は高いとはいふものゝ東京程ではないさうだし、少しは氣樂だらうと思ふ。どうだ
掻込んで、質の出し入れに許り苦心してゐるやうでは東京に居ようが札幌に居ようがたいした相違がある譯では無い。七圓で
見てはどうかといふ話が佐野からあつた。「東京の本店に居てはとても當分の處増給がむづかしい。北海道で辛抱する
淺草の東橋亭、麹町の青柳亭、小石川の初音亭と東京中の主な寄席は大概知らぬ處が無い位に小光の跡を追うて
十風夫婦は此年の暮北海道を去つて東京では誰にも逢はずに京都へ來た。北海道の寒さが非常
それから十風は東京の俳友などゝは全く交際を絶つて了つて一年餘り新聞社の會計
おなりでしたのね」と言ふ。それからいろ/\東京の事を聞く。三藏は李堂、蓬亭の從軍したことなど
ものは目も當てられぬ有樣であつた。以前東京で三藏は同居して居つた時も貧乏な暮しではあつた
。そのひまに又舊友をも訪問する。大方は皆東京に行つて大學に這入つてゐるが中にまだ殘留して居るものも
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、水月は眼鏡越しに三藏を見上げて「昨日思ひ立つて高尾へ出掛けたです。もう大方枯葉に近くなつてゐた中に一二本遲
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夜明けに新橋へ著いた。箱根で夢みた晦冥の天地は消え失せて今はあかるい市街が
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とがつかりしたやうにいふ。三藏は困つた。麹町の方も番地がうろ覺えなので、京都などと違つて斯う
は一軒もありやあしないですよ。仕方が無いから麹町の方へでも出掛けますかねえ」とがつかりしたやうにいふ。
たやうに記憶してゐる。「其築地へ行くのと麹町區一番町へ行くのと此處からはどちらの方が近いかね」と
も此間轉居したばかりでたしかには覺えないが、麹町區一番町の十二番地であつたやうに記憶してゐる。「其築地へ
の喜よし亭、牛込の和良店、淺草の東橋亭、麹町の青柳亭、小石川の初音亭と東京中の主な寄席は大概知らぬ處
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北湖先生と三藏とは或日何處かへ散歩の歸り日本橋通り二丁目の横町に這入つて、宇治の里御茶漬とある格子戸造りの
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せねばならぬ。第二に小光! さうだ、神田の小川亭に掛つてゐる。彼女を聽きに行かう。いま點
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の通りをぐん/\と歩く。お茶の水橋を渡つて小川町に突進する。
い。矢張り大勢の人のぞわ/\と往來してゐる小川町邊が戀しい。「らつしや――い」と言ふ力強い下足番
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出る。それから本郷の通りをぐん/\と歩く。お茶の水橋を渡つて小川町に突進する。