医王山

たのです。それは私の市街から五里ばかり隔った医王山という山です。春は、いつの間にか紫ぐんだ優しい色で

、薬草がたくさん生えている山なんですよ。それで医王山という名前がついているんです。」

姉は、そう言って医王山の方へ、ふいに顔を向けました。私もそのふしぎな山と、

毎年春の終りになると、みんな隊を組んで、あの医王山へ登るんですよ。つまりお山開きのようなものなんだね。そんなとき

姉は、その医王山の麓というのは、戸室山にはさまれた小さい村であることを言添え

私は、きゅうに、医王山の方をながめました。今日はくっきりした紫色に晴れ上っていました。

は不思議な話が頭のなかに生きているため、その医王山が一つの生きもののようになって見えました。