蒼白き巣窟 / 室生犀星
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それはおすゑのまだ十二になつたばかりのころで、深川の或る小學校に通つてゐた。まだ何も知らない少女のお
の、下町あたりの商家の人の着さうなもので、深川に生れたおすゑの好みらしいいなせなものだつたのが、何よりも
かりつとした深川訛で言つて、すぐ私を迎へた。二階へあがるときおかみがちらと
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やうにこりこりに凍え上つてゐるやうだつた。谷中から上野の踏切の橋をわたつて近道をして歩いて來たことも思ひ出さ
上野の山から淺草への踏切の陸橋の上から、公園一帶の電燈の海
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も暗いじめじめした中庭の方へ落ちて行つた。この東京の黴毒患者がみな公園裏の巣窟から傳染してくるのだといふ
「ほんとにおれは東京へ來なければよかつたのだ。出て來て何もできないの
それから二年ばかり一人でゐますの。ええ。生れは東京なんでございますの。かうなつては一生懸命になつて稼がなくては
「東京はひろくて狹いんだから、また會へるときには會へるよ。
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暫らく私を佇ませたが、それよりも群れをはなれた千住あたりに、ぽつねんと一つきり明るく點された電燈が別けても寂し
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「日暮里へ行つたんだらう。」
私の羽織の襟をなほしながら「おすゑさんは下日暮里の線路に添うた家なんですつて――」と言つて番地ををし
青いものがだんだんに著しく目に入つて來た。私は日暮里元金杉が、やや三河島の田地と隣り合つた田端の線路わきの、
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は日暮里元金杉が、やや三河島の田地と隣り合つた田端の線路わきの、あたたかい日向をあるいてゐた。そして、ふとおすゑの
田端の高臺の崖がゆるやかな、やや芽ざした傾斜面をつくつ