井の頭公園 甲府 深川 東京 八王子 新宿 阿佐ヶ谷

それから散歩に出たのである。家の近くの、井の頭公園の森にはいった時、私は、やっと自分の大変な姿に気が

五々、峠をのぼりはじめたが、行けども行けども甲府方面からの迎えのバスが来ていない。断念して、また引返し、

、私は友人とわかれてバスに乗り御坂峠を越えて甲府へ行こうとしたが、バスは河口湖を過ぎて二十分くらい峠を

この一、二年、友人の見合いに立ち合った時と、甲府の家内の里へ正月に遊びに行った時と、二度しか着て

友人は、深川の或る会社に勤めているのだが、やはり服装にはお金をかけたがら

でもなかった。私が、その一年生の冬季休暇に、東京へ遊びに来て、一夜、その粋人の服装でもって、おでんやの

私の雨着物の為なのである。要らざる時に東京から、のこのこやって来て、この吉田の老若男女ひとしく指折り数えて待ってい

けちを附けた。何だか不吉な予感を覚えた。八王子あたりまでは、よく晴れていたのだが、大月で、富士吉田行の

「どうです。新宿の辺まで出てみませんか。」友人は誘った。

。」私は首を横に振った。「こんな恰好で新宿を歩いて、誰かに見られたら、いよいよ評判が悪くなるばかりだ。

「じゃ、阿佐ヶ谷へ行ってみようかね。新宿は、どうも。」

「じゃ、阿佐ヶ谷へ行ってみようかね。新宿は、どうも。」

ず、十年一日の如く、ちびた下駄をはいて、阿佐ヶ谷を徘徊している。きょうはまた、念入りに、赤い着物などを召して

薄暮、阿佐ヶ谷駅に降りて、その友人と一緒に阿佐ヶ谷の街を歩き、私は、たまらない気持であった。寒山拾得の類

のであろうに、と赤い着物を着た弁慶は夜の阿佐ヶ谷の街を猫背になって、とぼとぼと歩いた。私は今は、いい