清貧譚 / 太宰治
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旅装をととのへ、顔色を変へて発足した。箱根の山を越え、沼津に到り、四方八方捜しまはり、やつと一つ、二つ
に包んで、にやりと笑つて帰途についた。ふたたび箱根の山を越え、小田原のまちが眼下に展開して来た頃に、ぱかぱか
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むかし江戸、向島あたりに馬山才之助といふ、つまらない名前の男が住んでゐた。
「江戸へ、おいでになりますか。」と、ひどく馴れ馴れしい口調で問ひかけて来る
「はい、江戸へ帰ります。」
「江戸のおかたですね。どちらからのお帰りですか。」旅の話は、
思慮分別を失つてゐた。「これから、まつすぐに、江戸の私の家まで一緒にいらして下さいませんか。ひとめでいいから、私
私たちは、そんなのんきな身分ではありません。これから江戸へ出て、つとめ口を捜さなければいけません。」
に姉が、沼津をいやがりまして、どうしても江戸へ出たいと言ひますので、私たちは身のまはりのものを一さい整理
私たちは身のまはりのものを一さい整理して、ただいま江戸へ上る途中なのです。江戸へ出たところで、何の目当もござい
一さい整理して、ただいま江戸へ上る途中なのです。江戸へ出たところで、何の目当もございませんし、思へば心細い旅
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あるから相当のものである事がわかる。初秋のころ、伊豆の沼津あたりに佳い苗があるといふことを聞いて、たちまち旅装をとと
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むかし江戸、向島あたりに馬山才之助といふ、つまらない名前の男が住んでゐた。ひどく
を拒否しかねて、姉と弟は、たうとうかれの向島の陋屋に一まづ世話になる事になつた。来てみると、才之助
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ば、いい菊を作つて差し上げませうから、それを浅草あたりへ持ち出してお売りになつたら、よろしいではありませんか。ひと