房総 日本橋 東京 隅田川

あれが初島でございます。むこうにかすんで見えるのが房総の山々でございます。あれが伊豆山。あれが魚見崎。あれが真鶴崎。

海岸の温泉地へ遊びに出かけた。私の家は、日本橋呉服問屋であって、いまとちがって、その頃はまだ、よほどの財産

私が二十歳になったとしの正月、東京から汽車で三時間ほどして行ける或る海岸の温泉地へ遊びに出かけた

なかった。じっさい、私にとって、十日ほどまえの東京の生活が、十年も二十年ものむかしのように思われてい

も居どころをさえ知らない。知れないうちに東京へ帰ろう。東京へ帰ったならば、もうしめたものだ。ああ、私が本名を言わ

のにせの名前も居どころをさえ知らない。知れないうちに東京へ帰ろう。東京へ帰ったならば、もうしめたものだ。ああ、私

かたがついた。私はなんの恥辱も受けない。もう東京へ帰ろう。雪が、ゆうべ私のところへ泊ったことは誰も知らぬ

私は、ゆっくり落ちつきながら、尚いちにち泊って、それから東京へ帰った。

と、宿のものも言っていた。その客は、東京のひとだそうだ、となにげなさそうに言っていた。もはや、

（例）隅田川

を払った。なにか、陰惨な世界を見たくて、隅田川を渡り、或る魔窟へ出掛けて行ったときなど、私は、その魔窟の