水鳥亭 / 坂口安吾
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「いま伊東からの帰り路ですよ。まだウチへ行ってないのです。おやすみ」
て、あなた、私。おお、イヤだ。以前なら、いま伊東の帰りだよ、といったところを、いま伊東の別荘からの帰り路なん
、いま伊東の帰りだよ、といったところを、いま伊東の別荘からの帰り路なんですよ。なんてイヤらしい」
、伊東の別荘などと言いはせん。いつも、ただ、伊東の、という。つとめて成金らしい口吻をさけているのが分らんか」
「伊東の別荘と言いたいのを、伊東で切らなきゃならないからイヤらしいのよ。
「伊東の別荘と言いたいのを、伊東で切らなきゃならないからイヤらしいのよ。使用人に届けさしゃいいものを、今
を、今、帰り路ですなんて、恩にもきせたいし、伊東の別荘も言いたいからよ。わざと、へりくだることないじゃないの。いつもタマゴは
置いていったが、会社での午休みのひとときなどに、伊東ですら、一匹のイワシを手に入れることが、すでにどれほど困難である
「どうです。一度、伊東へ遊びにいらっしゃい。今度の日曜にお伴しましょう。とにかく、別天地ですよ。ウチ
「実はお宅の伊東の別荘の片隅をかしていただけたらと、あつかましいお願いなんですが」
彼は軽井沢と伊東に別荘を持っていた。それは彼の多年の夢想であった。夏
伊東には手ごろの別荘の売物がなかったが、温泉のでる土地を買った。
伊東の駅にちかいところは人家が密集して、もう発展の余地がない。未来
しかし、伊東の駅へ降りて、袋小路のような平野が山に突き当るドンヅマリまで四五十分の
、戦争に勝って気違い景気が津々浦々にみなぎっても、伊東の繁栄がここまで延びるには、目の玉の黒さの方がオボツカナイような気持
ます。下男でも作男でも、なんでもします。伊東へつれてって下さい。鶏小屋へ住ませて下さい」
「私の工場は焼けました。伊東にはチッポケな家があるだけです。私は、もう社長ではありません
伊豆半島、特に伊東に敵が上陸してくるというので、気違いじみた騒ぎが起った。
ゴッソリかくれて敵の上陸を待ちぶせることが出来るような洞穴が伊東の四周の山々に掘りまくられ、亮作もモッコ運びにかりだされた。
伊東から四方へ走る峠の細道は、家財を運んで本土最初の戦場を逃げる人々
、先ず第一に源泉にきまってるじゃありませんか。伊東の町にはどの住宅にも温泉がひいてあるかも知れませんが、
ています。おまけに、ここの湯は自噴ですよ。伊東に自噴の源泉なんて、いくつも有りゃしませんよ。大部分がモーターであげて
も、小鳥も虫も、何もありません。どこに伊東の町があったか、見当もつかないでしょう。あなたの地所が川か沼
の市街地に最も近い一ツが乞食の巣になった。伊東では畑の中に温泉のわいているところもあるし、旅館も、漁師
は一匹のイワシすらも仰ぎ見る貴重品であったのに、伊東の漁師街ではアジやサバの干物なら野良犬すらも見向きもしなくなって
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「軽井沢でも結構ですが」
彼は軽井沢と伊東に別荘を持っていた。それは彼の多年の夢想であった
軽井沢は住みてを失い安値に売りにでたのを買ったもので、中流の
野口は軽井沢に別荘があるから、案外あきらめがよかった。吹きとばされる先に、別荘をうっ
あきらめがよかった。吹きとばされる先に、別荘をうって、軽井沢へひッこむにかぎる。安くても、ただ吹きとばされるよりはマシである。
「梅村さん。私たちは軽井沢へひきあげようと思いますが、どうです、この別荘を買いませんか。土地ぐるみ
何もしませんよ。この土地と建物を売って、軽井沢へひきあげるだけです」
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洋の沿岸は敵の潜水艦でとりかこまれていますよ。真鶴では、大謀網に敵潜が突ッかけてしまいましたよ。ホラ貝をふく
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亮作と野口は、東京近郊の農村で、小学校の教員をしていたことがあった。野口
おりません。戦争ですから、職域を死守する、私は東京を動きません。一兵卒のつもりです。身辺の家財もうごかしません。
もとへ行ったまま、学校へは診断書を送って、再び東京へ戻らなかった。
とどめた灰もあった。みんな燃え失せたのだ。まだ東京には多くの家が残っているし、さらに多くの家が日本の各地
「とにかく工場の後始末に、私だけは四五日東京に残らなければなりますまい。あなたにも手伝っていただかねばならないこと
あきらめた。本土最初の戦場ではないにしても、東京にちかい太平洋沿岸が修羅場になるのは、おそかれ早かれ必然の運命だ。この
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ているから、ここは乞食と野良犬の天国であった。上野の地下道の住人でこれを聞き伝えた一部隊の移住をはじめとして