甲州 道玄坂 甲府 東京 銀座

甲州を、私の勉強の土地として紹介して下さつたのは、井伏

のは、井伏鱒二氏である。井伏氏は、早くから甲州を愛し、その紀行、紹介の文も多いやうである。今さら私の惡文

、とやかく書く用はないのである。それを思へば、甲州のことは、書きたくない。私は井伏氏の文章を尊敬してゐるゆゑ

といふ賑やかな美しいまちがある。堂々のデパアトもある。道玄坂歩いてゐる氣持である。けれども、ふと顏をあげると、山である。

の甲府のまちに降りて來た。工合がよかつたら甲府で、ずつと仕事をつづけるつもりなのである。

の目鼻のつくまでは、と一先づ、峠の下の甲府のまちに降りて來た。工合がよかつたら甲府で、ずつと仕事を

甲府の知り合ひの人にたのんで、下宿屋を見つけてもらつた。壽館。

（下）　甲府偵察のこと

のいいものである。私は、Ｇペン買つてから、甲府のまちをぶらぶら歩いた。

。すりばちの底に、小さい小さい旗を立てた、それが甲府だと思へば、間違ひない。

甲府は盆地である。いはば、すりばちの底の町である。四邊皆山

ちがひは、ないのである。追ひつめられた志士、いまは甲府の安宿に身を寄せて、ひそかに再擧をはかつてゐる。

の落ちつきはある。表通りのデパアトよりも、こんな裏まちに、甲府の文化を感ずるのである。この落ちつきは、ただものでない。爛熟し

裏通りを選んで歸つた。甲府は、日ざしの強いまちである。道路に落ちる家々の軒の日影が、

私の見つけるものは、お恥かしいほど大ざつぱである。甲府は、四邊山。日影が濃い。いやなのは水晶屋。私は、

井伏氏は、甲府のまちを歩いて、どんなことを見つけたであらうか。いつか、ゆつくり

さへ出て來て、たうとう下山を決意した。東京へ歸つたら、また、ぶらぶら遊んでしまつて、仕事のできないのが

、下宿の部屋で、ひとりぽつんと坐つてみてやつぱり東京にゐるやうな氣がしない。日ざしが強いせゐであらうか。汽車

からである。強烈な地方色がない。土地の言葉も、東京の言葉と、あまりちがはないやうである。妙に安心させるまち

まちを歩いて、ふと顏をあげると、山である。銀座通りといふ賑やかな美しいまちがある。堂々のデパアトもある。道玄坂歩いて