箱根 神楽坂 大井川 矢来町 両国 巴里 神田 上野

ことを呟いたが、大急ぎに飯を三杯くって、箱根の雲助に扮装して、舞踏会場へかけこんだ。雲助だから汗をかいて

氷川の海舟屋敷の黒板塀をくぐったのは神楽坂の剣術使い泉山虎之介。この男、時はもう明治十八九年という開化

子供、それからズッと山岡について剣術を学び、今は神楽坂で道場をひらいているが、あんまりはやらない。

「神楽坂に酔っぱらいの辻斬がでるそうな。オメエに似ているという話だ」

の首ッ玉にかじりついて頬ッペタをなめるものだから、神楽坂は夜の八時から婦人の通行がないそうな。どうせなめて下さるなら隣

どうせなめて下さるなら隣の新十郎様にしてもらいたいと神楽坂の娘や新造が願をかけているそうだ。虎が首ッ玉にかじりつく

探偵、結城新十郎をおいて外にはない。紳士探偵は神楽坂に住んでいるのである。

「お前がいたのは何よりだ。一ッ走り、神楽坂の新十郎どんをつれてこい。それ、急げ。もっと走れないか。ノロマのモウロク

のは、お前じゃないか。しかし、星玄は一人で大井川の流れをせきとめているような大そうな手つきをして、

鹿蔵の注進によって勢揃いした三人は矢来町の加納邸へとやってきた。

さてＸ・Ｚ両国が対立するに至ったから、売られた喧嘩は買うのが人情、Ｘ国がアッサリ政

書生下駄をつッかけて追っかけてくる。新十郎は花の巴里でつくらせた洋服に細身のステッキ。花廼屋も当節の通家で

には閣僚はじめ各国の大公使、それに対馬典六、神田正彦も出席いたしておりました」

やるのは国際的に不埒な点があるから、表向きは実業家神田正彦の個人事業としてやらせろ。タンポはこれこれだが、これは

でいる。この相談をうけて、一も二もない。神田は典六以上によろこんだ。

である。さッそく神田正彦をよんで話をつたえる。神田は加納五兵衛と対立して天下を二分する大政商、加納が上泉善

たのだから、喜ぶのは当り前である。さッそく神田正彦をよんで話をつたえる。神田は加納五兵衛と対立して天下を二

例の主旨が眼目かも知れない。フランケンが典六と神田によびかけてから、五兵衛は目に見えて焦っていた。毎晩、娘

。そして、同様マスクだけのアツ子とくんで踊っている。神田正彦も来ているはずだが、何者に扮装しているのか、彼

、もう一人虚無僧がおりましてな。これは政商、神田正彦でありました」

ている。探偵たちの注意は一様に、虚無僧姿の神田正彦をさがしもとめたが、これも五兵衛と遠く離れた壁際にピッタリ寄り添っている

「神田正彦が虚無僧だッけな？」

「ハ、左様で。しかし、神田は遠い壁際にたたずんでおりまして、フランケンと同国の大使館員と同席、

のは、フランケンでもアツ子でもない。虚無僧姿の神田正彦。五兵衛を刺したのはこの男だ」

さ。一瞬ごとに廻りの者がうつり変ってらアな。神田がそのときフランケンの同国の大使館員と壁際で話を交していたと

向いたとき、待ちかまえていて手裏剣をうったのは、神田だ。ちょうど同じ虚無僧姿の田所が近所にいたてえのは偶然の

を殺した小柄は、この中に仕込んであったぜ。神田は海賊あがり、オレが船乗りのころ挨拶にきたことがあったが、

神田正彦さんが、虚無僧になるということも、あるいは神田さんが虚無僧姿に仮装するようそれとなくすすめたのは犯人であっ

当夜重立った人々の扮装をあらまし知っていました。むろん神田正彦さんが、虚無僧になるということも、あるいは神田さんが虚無僧

て、大刀をふり廻して、ソレ、駈けこめ、駈けこめ、と、上野寛永寺まで駈けこんできた鉄砲組の小隊長であった。

はやつしても、もとは鉄砲組の小隊長、鳥羽伏見から上野寛永寺まで場数をふんだ覚えの腕は相当なもの。田所をひッ