佐渡が島のこと / 江南文三
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で男女の歌が聞かれます。おけさ、安來節、追分などが重なもので都都逸二上り新内のやうなものは滅多に聞かれません。
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佐渡が島のこと
私は佐渡へ行くと言ふので途中輕井澤邊の寒さを豫想して冬服の上
て居りましたが、老婆で息子の病氣が重いので佐渡へ歸ると言ふので私より三日ほど前から宿についてゐると言ふ
私が始めて佐渡に渡つた時馬に蹴られましたが、佐渡の馬のよく蹴るのは
始めて佐渡に渡つた時馬に蹴られましたが、佐渡の馬のよく蹴るのは、相川から南の峠を越した向ふの土地、
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なる、汽車の窓から見える田は一面の湖でした。新潟で船を待つ間に小學校で教はつた先生で今は縣の物産
新潟へ近づくにしたがつて降りは益激しくなる、汽車の窓から見える田
新潟で汽車から下りようとするとプラツトホウムは全部雨の横しぶきで濡れてゐます
自動車のタイヤが澤山捨ててありました。自動車に乘つた新潟からの連は途中で人力車で私達を追ひ越して行きました。
男は新潟で見たやうに外套を二重に着て居るのは見掛けません。
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て居ましたので、私の住んでゐた代代木新宿附近では白地の單衣の儘の人、當時盛に賣出してゐ
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に建たないうちでした。例年になく夏が長かつた東京でも折折は秋らしい夜も顏を出しかけて居ましたので、
東京を立つたのが震災後の十一月、まだバラツクが十分に建たないうちでし
郊外で東京の言葉が聞かれました。
中央山脈を越すと雨でした。出る時の東京は風と砂埃とで眼も開けられないやうでしたが。
東京ではやうやく麥藁帽子を脱ぎ捨てたばかりなのが此方は外套を二枚
燭と二つだけ點いてゐました。十燭は東京の二燭よりも暗く十六燭は五燭よりも暗かつたのです。
五十燭がまるで十燭にも足りない光力なので、東京で七十燭の下で本を讀んでゐた私にはとても眼が疲れ
うとは思ひも掛けないことでした。そしてその冬は東京ではまるで想像の付かない佗しい冬でした。人間が日光から見放されるほど
期間だけは音を低くします。船が通ふので東京から便が一塊りになつて來ます。すぐ後から來る寒さと暗さ
ある足を持つてゐないものはありませんでした。東京附近の平原に住む女のやうに練馬大根のやうな細い太いのない足
煙草を吹かす人のやうに白い煙が出て居ます。東京ならば寒い戸外を急いで歩く時皮膚の表面は如何に冷くとも體内に
。そしてその寒い期間は晝夜の分かちなく冷えるのです。東京では寒く感じたりつめたく感じたりするのが、相川ではただ冷えると感じる
も使つたことのない人も居ます。知人に逢ふと東京ならば流しませうと言ふ處を掻きませうと言ふのです。文字通り
櫻や梅が急に芽を出して花を咲きます。東京の植物は落葉の時に既に小さな芽を落ちた葉の痕に持つて
てゐる町、鑛山で食べてゐる町ですから、鑛山で東京の太神樂を招んで囃し立てるは勿論、町中の老若擧つて町中を踊つ
が聽かせてくれました。(以上十三年八月、東京で)
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上野驛には手荷物預所も出來てゐませんでした。
御名殘に上野の山から市中を見渡しました。海の上に漁船が澤山出て
三等の外乘らない私が上野からだと言ふので二等に乘つたのでしたが、三等で