佐渡が島から / 江南文三
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山の西に越後の彌彦山、更に西に更に幽かに能登半島が見えました。二十三日に登つたときから、もう栗を取りに人
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佐渡が島から
八月の中旬に佐渡を出た頃は、それまでは火のやうに赤かつた光線が、刄
南に進んで來てゐる北佐渡の山との間は佐渡唯一の平原國なかの平野です。長さが東西三里半、幅は一
此佐渡の北の外れから北佐渡を東西に二分する山の脊が、黒姫、
上に首を出してゐるのです。大局から見ると、佐渡と言ふ島は海の中から南と北との二個處にごぼごぼと吹き出し
石灰岩と石英とは色色の佐渡の不思議を作り出してゐます。
その中で貉は佐渡の名物ださうで、四國猿と同じやうに佐渡貉と言ふのは熟語に
芽と稱して賣つて居りますが、越後の人は佐渡の眼病を佐渡目と言つて居ります。此腐れ眼は冬から春までの
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能登と岩石の分布が酷似してゐることや、昔謙信が能登で金を採
と岩石の分布が酷似してゐることや、昔謙信が能登で金を採つたことなどを考へ合はせて、能登半島が本州の一部
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。北の方にごく僅な視角で金北山の手前の妙見山が見えます。西の方の谷あひから遙に相川のほんの一部が見えます
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佐渡の貉は本來此島の産ではなくて、金山の鑛石を鎔かす鞴のにその毛皮が是非必要なので、餘處から取
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北佐渡を東西に二分する山の脊が、黒姫、金剛、金北、妙見と次第に南下して、今言つたおとわ池の西を
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を採つたことなどを考へ合はせて、能登半島が本州の一部であるにも拘らず狐が居ないで貉だけがゐるのも何
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作り上げたのではないかとも思はれましたが、相川町の北のはづれに辨慶挾み岩と言ふのがありまして、まさしく石灰岩の
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とある時術較べを爲ようと言ふことになつて、江戸へ出たさうです。どちらが先に術を使ふかと言ふ事を籤で
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押して放牧してある牛も犢ほどしかなく、大根も東京邊の四分の一ほどしかなく、林檎の直徑がほぼ半分、桃
尻のやうな土の覗いてゐる處もあります。そして東京邊の新聞に出ないでしまふこともあり、出ても注意せられず
東京の風だと言へば大抵の惡事までゆるされます。