伊勢 名古屋 東京

丹七は伊勢の国の生れであって、他人の内縁の妻と駈落ちして、二人でこの村の遠縁

生長すると共に二人は当然はなればなれになった。良雄は名古屋の中学校に通うようになり、あさ子は一人ぎりの父のかぼそい商売を手伝って

なくなり、祖先伝来の家屋敷を売り払って母と共に寂しく名古屋の郊外に移り住むことにしたのである。

との恋物語に始まる。男は木村良雄といって、当時東京の某私立大学に在学中、女は荒川あさ子といって、当時二十歳の鄙に

のように無頓着なものではなくなった。ことに良雄は東京で悪友に誘われて遊里に出入りすることを覚えたのであるから、

ところが良雄が中学を卒業して東京に遊学するようになってから、良雄のあさ子に対する態度は今迄のよう