江戸 松葉ヶ谷 根岸 天王寺 京都 向島 神田 新橋 品川 上野 幕張

ああ、病気に、あわれ、耳も、声も、江戸の張さえ抜けた状は、糊を売るよりいじらしい。

なり、そこは跋も合わせようが、何の事は無い、松葉ヶ谷の尼寺へ、振袖の若衆が二人、という、てんで見当の着かないお客に

に、はんぺんと菜のひたし。……ある大籬の寮が根岸にある、その畠に造ったのを掘たてだというはしりの新芋。

（おお、稲妻が天王寺の森を走る、……何じゃ、これは、烏の死骸をどうするん

と云う時、稲妻が閃めいて、遠い山を見るように天王寺の森が映った。

してね、よく出来るのよ。そして、今じゃ、あの京都の大学へ行っているんです。卒業すれば立派な先生になるんだ

、電報が来たもんですから、姉さんが無理をして京都へ行ったわ。

帰んなさいって、姉さんも云ってあげるし、自分でも京都の寒さが不可いんだって、久しぶりで帰ったんです。

夏のはじめに、でもまだ綿入を着たなりで、京都へ立って行ったんです。

「お三輪が話した、照吉が、京都の大学へ行ってる弟の願懸けに行って、堂の前で気落し

御存じの方もお見えになります、昨年の盆時分、向島の或別荘で、一会催した事があるんです。

前の向島の大連の時で、その経験がありますから、今夜は一番、明晃々

と笑いながら幹事が最初挨拶した、――それは、神田辺の沢岡という、雑貨店の好事な主人であった。

「新橋、柳橋と見えるでしょう。」

だ頭の火事見舞は、ついおもだか屋にあった事。品川沖の姪の影、真乳の渡の朧蓑、鰻掻の蝮笊

四角な、大きな、真暗な穴の、遥かな底は、上野天王寺の森の黒雲が灰色の空に浸んで湧上る、窓を見

て、そして、五重の塔の突尖が見えるんですよ……上野でしょうか、天竺でしょうか、何にしても余程遠くで、方角が分り

と斜になって、俯向いて幕張の裾から透かした、ト酔覚のように、顔の色が蒼白い。