雪柳 / 泉鏡花
地名一覧
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釦だ。捻る、押すか、一たび指が動けば、横浜、神戸から大船が一艘、波を切って煙を噴くんだ。喝!
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軽井沢へ避暑の真似をして、旅宿の払にまごついたというのではない
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は特に人も知って、野州にも一つあり、遠く能登の奥深い処にもある、と憶う。しかるに前述、獅子屋さん直槙の
斎本人は法津が目的で、勉強をするのは、能登では間に合わない。おなじ県でも金沢だけにありました専門学校へ通うのに
ですな、お国ものが誰も知らないで、隣りの能登の田舎の方で知っている。もっとも、その時、間淵の尼の話した
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。話の中に、一人娘は、七八ツの時から、赤坂の芸妓家へ預けてある、といったのも、そういえば記憶がある
姪に当る、赤坂に芸妓をしていると、いつか聞いたのが、早く旦那なるものに
日の、雨の降る夜に、友だちと三人づれ、赤坂の……何の待合で……酔倒れて…………一夜あかいた
炎を水にし氷にしても、お孝という、赤坂で一度間違いをした娘に顔が合わされません。
。人間業に似ない、と界隈一帯、近く芝、となり赤坂辺まで、その行方を惜しむといいます。
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浅間山の麓にて火車往来の事
から六部に出た老人が、善光寺へ参詣の途中、浅間山の麓に……といえば、まずその硫黄の香と黒煙が想われる。…
が轟き、磽※たる石径を舞上って、「あれあれ浅間山の煙の中へ火の尾を曳いて消えて候よ、六部どの。われら
虎の皮代用の申訳をした、というので、浅間山の麓の茶屋の亭主は語り、六部の爺様は聞いて、世に伝え
川へ身を投げようとした事だの、最後に、浅間山の噴火口に立って、奥能登の故郷の方に向って手を合わせて、いまわ
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た事だの、最後に、浅間山の噴火口に立って、奥能登の故郷の方に向って手を合わせて、いまわという時、立騰る地獄
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なるらしい。……清水谷公園を一廻りに大通を過ぎて番町へ帰ったが、吻として、浴衣に着換えて、足袋を脱ぐ時、ちょっと
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つ風並が直りさえすれば、大連か、上海か、香港、新嘉坡あたりへ大船で一艘、積出すつもりだ、と五十を越し
」が口癖で、ただし時世だけに視野が狭い。……香港、新嘉坡といわないで、台湾、旅順へ積出すと言います……そこ
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美濃国の百姓の女房大蛇になる事
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です。一体、名所の松といえば、それが二本松、三本松でも、実際また絵で見なくても、いい姿はわかるものです、暗夜
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もっとも、その時、間淵の尼の話した処では、加賀の安宅の方から、きまって、尼さんが二人づれ、毎年のように盂蘭盆
さても今度の心中話。それをくわしくたずねて見れば、加賀の城下のその片畔、能登屋仁平が、
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新堀の五月雨などとは事かわって、至極陽気がいい。川崎の大師へ参詣かたがた……は勿体ないが、野掛として河原で一杯、
動かしてもいいと、お医師がおっしゃいましてから、すぐ川崎の方へ……あの、知合の家が広うございますもんですから、その離室
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千駄木へ帰ってから、師匠に鉄道馬車の監督の話をすると、気に入った
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は小僧だ、腰の煙草入にその銀貨を一枚「江戸あるき」とかいう虫の食った本を一冊。当日は本所の五百
帰ったあとで、私は、庭の卯の花を見ながら、江戸の名画の雪景色を可懐しく思ったことは、いうまでもありません。
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と同工異曲なのがちょっと思い出しても二三種あります。肥後国、阿蘇の連峰猫嶽は特に人も知って、野州にも一つあり、
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上野国岡部の寺にて怪しき亡者の事
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あとは隅田の凩である。
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なのがちょっと思い出しても二三種あります。肥後国、阿蘇の連峰猫嶽は特に人も知って、野州にも一つあり、遠く能登
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一、浅学寡聞の筆者が、講談、俗話の、佐賀、有馬の化猫は別として、ほとんど馬五郎談と同工異曲なのがちょっと
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」とかいう虫の食った本を一冊。当日は本所の五百羅漢へゆくつもりで、本郷通りを真すぐに切通し、寄席の求肥の
お冬は武家の出で、本所に落魄れた旗本か、ごけにんの血を引いている。煮豆屋の
「ええ、ええ、遥々……ここから小石川柳町もっと、本所ほどもありましょうか、ほほほ――そこの(ぞうしき)から直ぐですわ。
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せんぞに――あんたはその千駄木へ。尼は、四谷へ、南と、北へ。……一日違いで徒士町から分れたというもん
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明和三年弥生なかば――これは首尾の松の霜、浅間の残暑、新堀の五月雨などとは事かわって、至極陽気がいい。川崎の
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奥州にて旅人山に入り琴の音を尋ねる事
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おなじ一本松という――名所が、故郷なる金沢、卯辰山の山の端にあって、霞を絡い、霧を吸い、月影に姿を開き、
で、草の中に子供が大勢遊んでいるのも、卯辰山のその麓を思い出させた。
ていると、云って聞かせました。心中の命は卯辰山に消えたが、はかない魂は浮名とともに、城下の町を憚って、
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こそ大事なれと、上総から六部に出た老人が、善光寺へ参詣の途中、浅間山の麓に……といえば、まずその硫黄の香
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めがねへ出ました。すたすたもので、あれから、柳原を両国まで、鉄道馬車で、あとはまた大歩行きに歩行くつもりの、ところが、馬車
料金は翌日にも持参しなさい。で、二日ばかりおいて、両国まで、その持参です。……なくなしたお小遣の分まで恵与に預る。……余程
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東京で各町内、侠勇の御神輿を担ぐとおなじように、金沢は、廂を越すほどの幌に、笛太鼓三味線の囃子を入れて、
おなじ一本松という――名所が、故郷なる金沢、卯辰山の山の端にあって、霞を絡い、霧を吸い、月影に
に、寺の石磴がすっくと高い。心なしか、この磴が金沢の松の上り口にそっくり似ている。(ここを、直槙が上った
をするのは、能登では間に合わない。おなじ県でも金沢だけにありました専門学校へ通うのに、私の家を宿にした
か四の頃や、洞斎兄さえ、まだ、尾山(金沢を云う。近国近郷の称呼。)の、あんたの家へ寄宿せぬさき
いいか、悪いか、分りませんが、金沢ものだ、仕方がない、とにかく杯を合せましょう。で、何しろ、かように
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下谷辺にて浪人居宅化霊ありし事
から降りつづく遣瀬なさに、築地の家を出て、下谷三の輪辺の知辺の許へ――どうも前に云った雪中庵の連中
絵馬を見ても一日暮せるという話を聞きます。下谷のあの辺には古道具屋が多いので、私は希望が希望だった
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。第一、浅学寡聞の筆者が、講談、俗話の、佐賀、有馬の化猫は別として、ほとんど馬五郎談と同工異曲な
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。捻る、押すか、一たび指が動けば、横浜、神戸から大船が一艘、波を切って煙を噴くんだ。喝!」
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氏神の祭礼に、東京で各町内、侠勇の御神輿を担ぐとおなじように、金沢は、廂を
解った。いやしくも大東京市内においては、橋の上で煙草を喫む時世ではないの
うちに、吃驚するように、思い出したのは、私が東京へ出ました当時「魔道伝書」と云う、変怪至極な本の挿画
やがて、間淵が東京へ出て、三年目かに、私も……申すはお
逐電です。行処がないかと思うと、その頃の東京は、どんな隅にも巣がありました。裏長屋の九尺二間へ
里へ引取って養うてくれておった尼を連れて、東京へ、徒士町の長屋へ出向いたというものは、嫂は縁切り、尼は
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中に、浅草だの、新吉原だの、女郎だのという字は、優しく柔かに
いえば、「怪談録」目録の第一に、一、浅草川船中にて怪霊に逢う事、というのがある。
○浅草新堀にて幽霊に行逢う事
の湿っぽさが察しられる。寂しくわが邸を志して、その浅草新堀の西福寺――震災後どうなったか判らない――寺の裏道、
とかく赤蜻蛉に似て北へ伸すのは当今でいえば銀座浅草。むかしは吉原の全盛の色香に心を引かれたらしい。――三の輪
豪傑だと、片腕頂戴するところ、この武家の少年は、浅草で片手を氷にしようとした、いささかも武勇めかないだけに、読ん
に「近世怪談録」を見ているほどだから、その浅草新堀の西福寺うらの若侍とおなじく、横路地で冷たい手、といった
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。もう十時を過ぎている、やがて十二時。舳が蔵前をさすあたり、漾蕩たる水の暗さにも、千鳥の声に、首尾
といえば手の冷えよう、築地まで帰るのが心もとなく、さいわい蔵前に姉の縁づいた邸があった。いうまでもなく義兄の住居。真夜中
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目白辺の屋敷猫を殺しむくいし事
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上野国岡部の寺にて怪しき亡者の事
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、とかく赤蜻蛉に似て北へ伸すのは当今でいえば銀座浅草。むかしは吉原の全盛の色香に心を引かれたらしい。――
、町通りでも気がつかなかった。暗夜の幻影、麻布銀座のあかりがさすか、その藍と紺の横縞の、お召……です
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と出ようと、四谷辺の大工左官など五六人。芝、品川の海の景色、のびのびと、足にまかせて大森の宿中まで行くと
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などは、おッつけ故郷から女房が、大船で一艘、両国橋に積込むと、こんな時は、安房上総の住人になって饒舌るから、
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、ほんの当座の手伝いと、頼まれた。手廻り調度は、隅田川を、やがて、大船で四五日の中に裏木戸へ積込むというので、