活人形 / 泉鏡花
地名一覧
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へ行きけん影も無し。脱心たりと心急立ち、本郷の通へ駈出でて、東西を見渡せば、一町ばかり前に立ちて、
、病人本間の様子を見舞い、身支度して出直さんと本郷に帰りけるに、早警官等は引取りつ。泰助は医師に逢いて、予後
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下男を連れたる紳士なりけり。こは高田駄平とて、横浜に住める高利貸にて、得三とは同気相集る別懇の間柄なれば、非義非道
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低く、「実は、横須賀のさる海軍士官の令嬢が、江の島へ参詣に出懸けたまま、今もって、帰って来ない。と口より出任せ
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さて泰助が東京よりこの鎌倉に来りたるは、左のごとき仔細のありてなり。
次三郎という者。幼少の折父母を失いければ、鎌倉なる赤城家に嫁ぎたる叔母の許にて養われぬ。仮の叔父なる赤城の
の上ならでは、渠等を捕縛は成り難し。まず鎌倉に立越えてと、やがて時刻になりしかば、終汽車に乗り込みて、日影
高楼にて、屈曲縦横の往来を由井が浜まで見通しの、鎌倉半面は眼下にあり。
より三回の間に出でて毒を飲みたる病人なり。鎌倉より東京のことなれば、敏き看官の眼も届くまじとて書添え置く。
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遥々我を頼みて来し、その心さえ浅からぬに、蝦夷、松前はともかくも、箱根以東にその様なる怪物を棲せ置きては、我が
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。我はかの悪僕に追立てられて詮方無く、その夜赤城の家を出で、指して行方もあらざればその日その日の風次第、
なし、滑川の辺なる八橋楼に投宿して、他所ながら赤城の様子を聞くに、「妖物屋敷、」「不思議の家、」あるいは「幽霊
、泰助は急ぎ身支度して、雪の下へと出行きぬ。赤城の下男八蔵は、墓原に来て突当の部屋の前に、呼吸を殺し
視めて、「おや、此奴は病院へ来た奴だ。赤城の手下に違いないが、ふむ敵はもう我が来たことを知ってるな。
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さて泰助が東京よりこの鎌倉に来りたるは、左のごとき仔細のありてなり。
今朝東京なる本郷病院へ、呼吸も絶々に駈込みて、玄関に着くとそのまま、
力無く生甲斐無く、漣や滋賀県に佗年月を過すうち、聞く東京に倉瀬とて、弱きを助くる探偵ありと、雲間に高きお姓名の、雁
。この二人は主従と見えたり。「ああしてしまえば東京に用事は無いのだ。今日の終汽車で帰国としようよ。「それ
ために既に殺されしにあらざるか、遠くもあらぬ東京に住む身にて、かくまでの大事を知らず、今まで棄置きたる不念さ
ましたで、そういう甘口な妖方はいたしません。東京の何とやら館の壮士が、大勢でこの前の寺へ避暑に来
撫つ抓りつして口説いても応と言わないが、東京へ行懸けに、梁に釣して死ぬ様な目に逢わせて置い
踞りて、「何でそんな事をいたしましょう。旦那様が東京へいらっしゃってお留守の間も私はちゃんと下枝様の番をしており
と高田がいえば、得三呵々と打笑いて、「東京の待合にもこれ程の仕懸はあるまい。といいつつ四辺を見廻すに
回の間に出でて毒を飲みたる病人なり。鎌倉より東京のことなれば、敏き看官の眼も届くまじとて書添え置く。)
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で可しと汗を容れて心静かに後を跟けて、神田小柳町のとある旅店へ、入りたるを突止めたり。