栗橋 北海道 香川 古河 磐梯山 樺太 宇都宮 青森 上野 東京 日暮里 田端

幸手、栗橋、古河、間々田……の昔の語呂合を思ひ出す。

「はあ、北海道へは始終往復をするですが、今度は樺太まで行くですて。」

は間があるのに、壮くして世を辞した）香川と云ふ或素封家の婿であつた、此も一人の友人の、谷中天王

更めてくどくは言ふまい。其処には、今日告別式を済ました香川の家がある。と同時に一昨年の冬、衣絵さん、婿君のため

幸手、栗橋、古河、間々田……の昔の語呂合を思ひ出す。

して、汽車もパツと明く成つた。思見る、磐梯山の煙は、雲を染めて、暗は尚ほ蓬々しけれど、大なる猪苗代

「はあ、北海道へは始終往復をするですが、今度は樺太まで行くですて。」

鞄を見よ。手摺の靄が一面に、浸の形が樺太の図に浮ぶ。汽車は白河へ着いたのであつた。

、汽車半分、否、室一つ我ばかりを残して、樺太まで引攫はれるやうな気がしたのである。

宇都宮へ着いてさへ、船に乗つた心地がした。

左右を見定めて、鍋を片手に乗らうとすると、青森行――二等室と、例の青に白く抜いた札の他に

上野を立つたのが六時半である。

であるが、俥で行く途中も、袖はしめやかで、上野へ着いた時も、轅棒をトンと下ろされても、あの東京の

同室の客。で、こゝで園と最う一人――上野を出ると其れ切寝たまゝの茶の外套氏ばかりを残して、尽く

た時も、轅棒をトンと下ろされても、あの東京の式台へ低い下駄では出られない。泥濘と言へば、まるで沼で

をのせて、陸奥をさして下り行く――早や暮れかゝる日暮里のあたり、森の下闇に、遅桜の散るかと見たのは

田端で停車した時、園は立上つて、其の夕靄にぽつと包まれた

を言ひ交はす、時々と言ふほどでもないが、ともに田端の家を訪れた事もあつて、人目に着くよりは親しかつた…