大阪 北海道 堺 広島 東京 広島 堺 大阪 東京 北海道

染めたのはレース工場にいたときのことである。大阪にあるその工場の女工になったのは十八の齢であった。北秋田の

近在の娘たちといっしょにこの「内儀」に連れられて大阪へ出た。紡績の女工になった。同じ町から出てきた友だちに

しなかった。ただ心にあったのは、もう一度、大阪の工場に帰ってみたいということだった。思案しぬいた揚句、ぎん

いる間に両親が次ぎつぎに死に、たった一人の兄は北海道へ渡って鉱山入りをしたまま消息を絶ってしまった。チブスで動きの

たはずのそのおかみさんもしゃんしゃんしていて、今は堺のほうの旅館で働いているということまで分った。子供はどこに預け

ばかりたつと、捨吉から手紙がきた。そのころはまだ堺にいた。工場の友だちに居所を訊き合せたということが分り、相変ら

浅黒い三白眼の、ちょっと小粋なところのある男だった。広島弁で面白いことを云っては笑わせる。自転車につづらをつけた捨吉の

はこの春中学へ上ったという。父子の者はいま広島の海江田市に住んでいる。ぎんが「あたりや」に落着いて一年ばかり

広島へ行ってからの捨吉は家屋売買のブローカーのようなことをしてい

が、友だちに勧められて上京することに決心した。東京で経師屋にかたづいているその友だちの叔母を頼って行くことになった。

のたびにねだりごとだった。ランドセルがこわれてしまったの、東京鉛筆が欲しいの、遠足へ行く小遣いを呉れだのと、ひっきりなしだった

はこの春中学へ上ったという。父子の者はいま広島の海江田市に住んでいる。ぎんが「あたりや」に落着いて一年ばかりたつ

広島へ行ってからの捨吉は家屋売買のブローカーのようなことをしていた

たはずのそのおかみさんもしゃんしゃんしていて、今は堺のほうの旅館で働いているということまで分った。子供はどこに預け

ばかりたつと、捨吉から手紙がきた。そのころはまだ堺にいた。工場の友だちに居所を訊き合せたということが分り、相変ら

染めたのはレース工場にいたときのことである。大阪にあるその工場の女工になったのは十八の齢であった。北秋田の

近在の娘たちといっしょにこの「内儀」に連れられて大阪へ出た。紡績の女工になった。同じ町から出てきた友だちに

しなかった。ただ心にあったのは、もう一度、大阪の工場に帰ってみたいということだった。思案しぬいた揚句、ぎん

が、友だちに勧められて上京することに決心した。東京で経師屋にかたづいているその友だちの叔母を頼って行くことになった。レース

いる間に両親が次ぎつぎに死に、たった一人の兄は北海道へ渡って鉱山入りをしたまま消息を絶ってしまった。チブスで動きの