東照宮 横浜 久能山 小石川 吾妻橋 九州 音羽 安倍川 富士見町 御嶽山 八丁堀 江戸 牛込 神楽坂 田子の浦 富士山 隅田 清見寺 丸の内 酒井 本所 江戸城 四谷 浅間 本郷 北海道 薩摩 博多 精養軒 富坂 大江山 両国 静岡 神戸 京都 深川 東京 神田 浅草 四ッ谷 水道橋 向島 浅草橋 日比谷 新橋 上野 恵比寿 麹町 浜町 隅田川

英臣が、この石段を、もう一階で、東照宮の本殿になろうとする、一場の見霽に上り着いて、海面が、高く

の惣助の計らいで、不意に汽車の中で逢って、横浜まで送る、と云うのであった。ところが終列車で、浜が留まりだった

も興津も直きそこだし、まだ知りませんが、久能山だの、竜華寺だの、名所があって、清見寺も、三保の松原

これがために、清水港に、三保に近く、田子の浦、久能山、江尻はもとより、興津、清見寺などへ、ぶらりと散歩が出来ようという地

絶えず続いて、轟々と田舎道を、清水港の方から久能山の方へ走らして通る、数八台。真前の車が河野大夫人富子で

等河野英臣の発議に因て、景色の見物をかねて、久能山の頂で日蝕の観測をしようとする催で。この人達には花見に

ましょうか。過日、病院で掛合いました時のように、久能山で返事しようじゃ困りますよ。ここは久能山なんですから。またと云っ

ように、久能山で返事しようじゃ困りますよ。ここは久能山なんですから。またと云っちゃ竜爪山へでも行かなきゃならない。

ごとく、きらきらと星がきらめいて、それから富坂をかけて小石川の樹立の梢へ暗くなる、ちょっと人足の途絶え処。

幻燈で中空へ顕わしたようで、轟々と轟く響が、吾妻橋を渡る車かと聞なさるるが、悲観すると、煙が黄に、炎が

支那だか、朝鮮だか、それとも、北海道か、九州か、どこで観ようと云うのだか、それを聞き懸た処へ、貴女

に、乳母の他はあの女中ばかりであろうか。主人は九州へ旅行中で、夫人が七日ばかりの留守を、彼だけでは覚束ない。

在りったけ呼で来た。薄暗い台所を覗く奴あ、音羽から来る八百屋だって。こっちへ上れ。豆腐イもお馴染だろう。彼奴背負引け

戦と云やあ、音羽の八百屋は講釈の真似を遣った、親方が浪花節だ。

かこうか薬が利いて、一度なんざ、私と一所に安倍川へ行って餅を食べて茶を喫んで帰った事もあったんですが

燈の明を余所に、暖か過ぎて障子を透した、富士見町あたりの大空の星の光を宿して、美しく活っている。

御嶽山を少し進んだ一ツ橋通を右に見る辺りで、この街鉄は、これから

「今度八丁堀の私の内へ遊びに来ておくんなせえ。一番私がね、嚊々左衛門

は同伴も無しにただ一人、学校がえりの態で、八丁堀のとある路地へ入って来た。

おう、八丁堀のめの字が来たが、の、の、承知か、承知か、と

どうしてまたこんな処へ。……何、八丁堀へおいでなすって。ええ、お帰んなさる電車で逢ったら、一人で遠歩き

「お前もやっぱり言うんだもの、半纏着た奥様が、江戸に在るものかね。」

親分が居て、それから私が居た土地だ。大概江戸ッ児になってそうなもんだに、またどうして、あんな獣が居るん

はあっても、鯛の目を食った犬は昔から江戸にゃ無えんだ。」

お茶屋から、わざと取寄せた午飯の馳走の中に、刺身は江戸には限るまい、と特別に夫人が膳につけたのを、やがてお茶漬で

旅行中。あたかも母親は、兄の英吉の事に就いて、牛込に行っている、かれこれ便宜だから、大学の眼科で診断を受けさせる為に

、可いわ、もう泊っても。今ね、御覧なさい、牛込に居る母様から手紙が来て、早瀬さんが静岡へお出なすって、

すでに昨夜も、神楽坂の縁日に、桜草を買ったついでに、可いのを撰って、昼夜帯の間

、かねてこれがために、清水港に、三保に近く、田子の浦、久能山、江尻はもとより、興津、清見寺などへ、ぶらりと散歩が出来よう

て、興津、江尻、清水をかけて、三保の岬、田子の浦、久能の浜に、音をも立てず倒れたのである。

この富士山だって、東京の人がまるっきり知らないと、こんなに名高くはなりますまい。

夜の雲の濃やかに緑の色を重ねたのは、隅田へ潮がさすのであろう、水の影か、星が閃く。

こと。」と縁側に、水際立ってはらりと取った、隅田の春の空色の褄。力なき小芳の足は、カラリと庭下駄に音

喧嘩も出来ず。ざっと二年越、上野の花も隅田の月も見ないでいると、京都へ染めに遣った羽織の色も、

久能山だの、竜華寺だの、名所があって、清見寺も、三保の松原も近いんですから、」

三保に近く、田子の浦、久能山、江尻はもとより、興津、清見寺などへ、ぶらりと散歩が出来ようという地を選んだ、宏大な別荘の設

県庁、警察署、師範、中学、新聞社、丸の内をさして朝ごとに出勤するその道その道の紳士の、最も遅刻する人物

で食って、翌日の飯をまた内で食わないか、酒井の籠で飼ってやろう、隼。）と、それから親鳥の声を真似て

ので、さてはこのまま隅田川へ流罪ものか、軽くて本所から東京の外へ追放になろうも知れぬ。

ていた処だ。第一かく申すめの公も、江戸城を明渡しの、落人を極めた時分、二年越居た事がありますぜ

「四谷へ縁附いております、先のお光をお連れなさいまして、縁日へ

を打つ音を、時ならぬ砧の合方にして、浅間の社の南口、裏門にかかった、島山夫人、早瀬の二人は、花道へ

ＡＢ横町。）と云う標題で、西の草深のはずれ、浅間に寄った、もう郡部になろうとするとある小路を、近頃渾名してＡＢ

御都合で貴女も出掛けると云うから、珍らしくはないが、また浅間へ行って、豆か麩を食わしとるですかな。」

下すった幾干かの金子を資本にして、初めは浅間の額堂裏へ、大弓場を出したそうです。

参って……しかもその翌日でした。島山さんのと、浅間を通った時、茶店へ休んで、その貞造に逢ったんです。それから

られないのに失望したが、幸か、不幸か、浅間の社頭で逢った病者の名が、偶然貞造と云うのに便って、狂言

月の十二日は本郷の薬師様の縁日で、電車が通るようになっても相かわらず賑か

「本郷だわ。」

「私ねえ、本郷のねえ、酒井と云うの。」

だけで、支那だか、朝鮮だか、それとも、北海道か、九州か、どこで観ようと云うのだか、それを聞き懸た処

さえ、艶があって折目が凜々しい。久留米か、薩摩か、紺絣の単衣、これだけは新しいから今年出来たので、卯の花が咲く

。黒斜子に丁子巴の三つ紋の羽織、紺の無地献上博多の帯腰すっきりと、片手を懐に、裄短な袖を投げた風采は

枚袷、藍気鼠の半襟、白茶地に翁格子の博多の丸帯、古代模様空色縮緬の長襦袢、慎ましやかに、酒井に引添うた風采は

入れて、）の図書館に検べものをして、それから精養軒で午飯を食うて来た。これからまたＨ博士の許へ行かねばなら

取囲んで押揺がすごとく、きらきらと星がきらめいて、それから富坂をかけて小石川の樹立の梢へ暗くなる、ちょっと人足の途絶え処。

「御贔屓の民子ちゃんが、大江山に捕まえられていますから、助出しに行くんだわ。渡辺の綱次

この街鉄は、これから御承知のごとく東明館前を通って両国へ行くのである。

するまま、鷲に攫われたような思いで乗ったのが、この両国行――

さい。頃日の事ですが、今も云った、坂田礼之進氏が、両国行の電車で、百円ばかり攫徒に掏られたです。取られたと思うと、気が着い

「いいえね、つい一昨日あたり故郷の静岡からおいでなすったんですとさ。私がお取次に出たら河野の

「おいしいものが聞いて呆れら。へい、そして静岡だってね。」

今のが、その、河野ッてえのの母親かね、静岡だって、故郷あ、」

が、先方じゃ奥から見懸けたもんだね。一昨日頃静岡から出て来たって、今も蔦ちゃんの話だっけ。

や、馬丁……貞造って……馬丁でね。私が静岡に落ちてた時分の飲友達、旦那が戦争に行った留守に、ちょろり

の鯛は場違だ。ええ、旦那、河野の本家は静岡で、医者だろうね。そら、御覧じろ、河野ッてえから気がつかなかった

人、その中縁附いたのが三人で。姉は静岡の本宅に、さる医学士を婿にして、現に病院を開いている

「静岡は口の奢った、旨いものを食う処さ。汽車の弁当でも試

です。もうこちらへも暇乞に来ましたが、故郷の静岡へ引込む、と云っていましたから、河野さんの本宅と同郷でしょう。

「静岡へ参って落着いて、都合が出来ますと、どんな茅屋の軒へでも

「静岡――ですからその先は御勝手におなぶり遊ばせ、室が違いまして

「御心配はございません。僕も静岡で下りるんです。」

「静岡はどちらへお越しなさいます。」

「貴女、静岡は御住居でございますか、それともちょっと御旅行でございますか。

、またお詫をします気で伺いますが、貴女もし静岡で、河野さん、と云うのを御存じではございませんか。」

足一度静岡の地を踏んで、それを知らない者のない、浅間の森の咲耶

それが全校に行われて一時物議を起した。近頃静岡の流行は、衣裳も髪飾もこの夫人と、もう一人、――土地

かくて彼一句、これ一句、遠慮なく、やがて静岡に着くまで続けられた。汽車には太く倦じた体で、夫人は腕

頃も、一時は魔の所有に寂寞する、草深町は静岡の侍小路を、カラカラと挽いて通る、一台、艶やかな幌に、

「いいえ、真面目に、貴下がこの静岡で、独逸語の塾を開くと云うから、早いでしょう、もう買って来

「静岡じゃ、お米は一升幾干だい。」

「静岡は暢気でしょう、ほほほほほ。」

、牛込に居る母様から手紙が来て、早瀬さんが静岡へお出なすって、幸いお知己になったのなら、精一杯御馳走なさい、

それぎり、顔も見ないで、静岡へ引込むつもりだったが、め組の惣助の計らいで、不意に汽車の

「私だって逢いたくってよ。静岡へ行ってから、全く一年になるんですもの、随分だと思うわ

土地の様子が知れるッて言いますから、去年の七月から静岡の民友新聞と云うのを取りましてね、朝起きると直ぐ覗いて、

「私は不思議な縁で、去年静岡へ参って……しかもその翌日でした。島山さんのと、浅間

去年から口説通しなんだわ。貴下がはじめて、静岡へ来て、私と知己になったというのを聞いて、（精一杯

の収入じゃ苦しい処へ、貴女方親子を背負い込むんだ。静岡は六升代でも痩腕にゃ堪えまさ。」

理学士であったから。その名たちまち天下に伝えて、静岡では今度の日蝕を、（島山蝕）――とさえ称えたので

「静岡へ来てからは、そんな者じゃありません。騙です。」

その翌日、神戸行きの急行列車が、函根の隧道を出切る時分、食堂の中に椅子を

、上野の花も隅田の月も見ないでいると、京都へ染めに遣った羽織の色も、何だか、艶がなくって、

「私はよく存じませんので……あの、どこか深川に居るんですって。」

？　深川と云う人に落籍されたのか、川向うの深川かい。」

「深川？　深川と云う人に落籍されたのか、川向うの深川かい。」

「深川？　深川と云う人に落籍されたのか、川向うの深川かい。

「どうせ東京の魚だもの、誰のを買ったって新鮮いのは無い。たまに盤台の

、さてはこのまま隅田川へ流罪ものか、軽くて本所から東京の外へ追放になろうも知れぬ。

まするより、むしろ黄道吉日をば待ちまして、唯今もって、東京に逗留いたしておりまする次第で。はあ。御令室の御言葉一ツで

よ。掏摸の手伝いをしたとかで、馬鹿野郎、東京には居られなくなって、遁げたんです。もうこちらへも暇乞に

上野の停車場に着くと拝みたいほど嬉しくなります、そんな懐い東京ですが、しばらく分れねばなりません。」

「東京から稼ぎに出ますんですと、まだ取柄はございますが、まるで田舎俳優

歳の柳とともに、鶴屋と聞えた財産家が、去年東京のさる華族から娶り得たと云う――新夫人の二人が、二つ

はないので、はじめにも二月三月、しかるべき東京の専門医にもかかったけれども、どうしても治らないから、三年

夫がまた、随分自分には我儘をさせるのに、東京へ出すのは、なぜか虫が嫌うかして許さないから、是非行き

この富士山だって、東京の人がまるっきり知らないと、こんなに名高くはなりますまい。自分は田舎

の軋る響きは……例のがお出掛けに違いない。昨日東京から帰った筈。それ、衣更えの姿を見よ、と小橋の上で留る

尋ねると、二人とも乳母が連れて、土産ものなんぞ持って、東京から帰った報知旁々、朝早くから出向いたとある。

河野の父さんの方も、内々小児をだしに使って、東京へ遊びに行った事を知っているんですから、言句は言わないまで

が新聞で騒ぎましたね。あの時も、父様は、東京の叔父さんだの、坂田（道学者）さんに応援して、火の

、酒井さんの御意見で、お別れなすった事は、東京で兄にも聞きましたが、恋人はどうなさいました。厭だわ

と云っても学問をするのでない。以前早瀬氏が東京で或学校に講師だった、そこで知己の小使が、便って来た

いうのを聞いて、（精一杯御待遇をなさい。）ッて東京から母さんが手紙でそう云って寄越したのも、酒井さんとの縁談を

お稽古にお出でなさい、早瀬主税は攫徒の補助をした東京の食詰者です。）とこの塾を開く時、千鳥座かどこか

「宅では、東京の妹たちが、皆暑中休暇で帰って参りました。」

「貴下は、まあ、さぞ東京へお帰りなさらなければならなかったんでございましょうに。あいにく御病気で

「父さんがね、主税さん、病気が治ったら東京へお帰んなさいッて、そうして、あの、……お墓参をしましょう

一所に東京へと云うのを……仔細あって……早瀬が留めて、清水港

、夫人から話し伝えて、まだ何等の風説の無い時、東京の新聞へ、この日の現象を細かに論じて載せたのは理学士

番目の娘だがね、つい、この間、暑中休暇で、東京から帰って来た、手入らずの嬢さんは、医学士にけがされ

「神田の祭礼に叩き売っても、娘の縁で借りるもんかい。河野！」

さあ、お目通りで、着物を引掉って神田児の膚合を見せてやらあ、汝が口説く婦じゃねえから、見

もっとも学者だと云って、天気の好い日に浅草をぶらついて、奥山を見ないとも限らぬ。その時いかなる必要があっ

「おい、己を、まあ、何だと思う。浅草田畝に巣を持って、観音様へ羽を伸すから、隼の力と

見ると、これは、以前奉公していた女中で、四ッ谷の方へ縁附いたのが、一年ぶりで無沙汰見舞に来て、

「水道橋まで歩行くが可い。ああ、酔醒めだ。」と、衣紋を揺って、ぐっ

やがて、水道橋の袂に着く――酒井はその雲に駕して、悠々として

もっとも、薬師の縁日で一所になって、水道橋から外濠線に乗った時は、仰せに因って飯田町なる、自分の

突当りの砲兵工廠の夜の光景は、楽天的に視ると、向島の花盛を幻燈で中空へ顕わしたようで、轟々と轟く響が、吾妻橋

と主税の姿は、この広小路の二点となって、浅草橋を渡果てると、富貴竈が巨人のごとく、仁丹が城のごとく、相対

、其奴を附廻して、同じ夜の午前二時頃に、浅草橋辺で、フトした星が附いて取抑えると、今度は袱紗に包んだ

たから掴まったんで、盗人心を持った時なら、浅草橋の欄干を蹈んで、富貴竈の屋根へ飛んでも、旦那方の手

当節は女学生でも、今頃は内には居ない。ちっと日比谷へでも出かけるが可い。」

よ。おい、芸者を何だと思っている。藪入に新橋を見た素丁稚のように難有いもんだと思っているのか

と思いますから、私は、一日旅行してさえ、新橋、上野の停車場に着くと拝みたいほど嬉しくなります、そんな懐い東京ですが

十二時近い新橋停車場の、まばらな、陰気な構内も、冴返る高調子で、主税を呼懸け

ますから、私は、一日旅行してさえ、新橋、上野の停車場に着くと拝みたいほど嬉しくなります、そんな懐い東京ですが、しばらく

是非行きたいと喧嘩も出来ず。ざっと二年越、上野の花も隅田の月も見ないでいると、京都へ染めに遣った

たのは、夫人の褄と軒の鯛で、鯛は恵比寿が引抱えた処の絵を、色は褪せたが紺暖簾に染めて

通うその学校は、麹町辺であるが、どこをどう廻ったのか、真砂町の嬢さんがこの

、可哀相に大切に蔵って、小さく、整然と畳んで、浜町の清正公の出世開運のお札と一所にしてあった、その新聞の

鯨を背負って来て、汝ン許で泳がせるぞ、浜町界隈洪水だ。地震より恐怖え、屋体骨は浮上るぜ。」

も、鷲は翼を納めぬので、さてはこのまま隅田川へ流罪ものか、軽くて本所から東京の外へ追放になろうも知れぬ