わか紫 / 泉鏡花
地名一覧
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関所あとを見るにつけ、ぼけた金時じゃあるめえし、箱根山を背後に背負って、伊豆の海へ巌端から、ひょぐるばかりが能じゃある
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から忘れねえのは、富士の山と、お関所と、大井川と雲助かい。
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新道を行くのであって、この旧道を突切れば、萩の株に狼の屎こそ見ゆれ、ものの一里半ばかり近いという、
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六が自讃する、怪しき鳥の挙動にはさもなくて、湯河原の雲を攀じ、吉浜の朝霽や、真鶴の霜毛に駕して、
峠を越して函嶺へ行ったのもございますし、湯河原を出て吉浜、もうその時分は、お関所辺で、ゆっくり紙幣を勘定し
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薬の瓶、左の隅に衣桁があって、ここに博多の男帯、黒縮緬の女羽織、金茶色の肩掛など、中にも江戸褄
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、名物の外郎は、偶にゃ覚えた人があろか、清見寺の欄干から、韮山の虹を見たって、雲助を思い出す後生願は一人もねえ
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伊豆のヒガネ山は日金と書いて、三島峠、弦巻山、十国峠と峰を重ね
藍の雲、浅葱の浪、緑の巌に霜白き、伊豆の山路の岨づたい、その苞入の初茄子を、やがて霞の靉靆きそう
響かぬ山家にさえ、寝覚に跫音轟いたが、哄と伊豆の国を襲ったので、熱海における大地震は、すなわち渠等が予言の計略
不残来ました。誰々だって、そういいましたら、伊豆の伊八、四丁艪の甚太夫、鯰の勘七、縄抜の正太郎、飛乗
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激変、時こそ来たれと万弩一発、驚破! 鎌倉の声とともに、十方から呼吸を合はせ、七転八倒の騒に紛れ
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中にも大島を遥かに望んで、真鶴の浜に対向う、熱海の海の岸一帯、火山が砕けた巌を飛び飛び
時に真鶴の山中は、当世風の扮装した一のこの旅客を得て、はじめて湯治場
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、海洋の蒼き口に、白泡の歯を鳴らして、刻々島根を喰削らんず、怖しき浪の頭を圧えて、巌窟の中に鎮座
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ところが昨日珍らしく、箱根から熱海へ廻ろうという二人、江戸の客人がござりやして、このおじいと棒組で、こうやって二台
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、水がぬるみ、池には金魚がひらひらと、弥生の吉野、小春日の初瀬を写す俤がある。
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となった日にゃ、お大名でも、飛脚でも、品川から忘れねえのは、富士の山と、お関所と、大井川と雲助か