麻を刈る / 泉鏡太郎 泉鏡花
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々、山坂掛け、道中の風情見る如し。――これは能登、越中、加賀よりして、本願寺まゐりの夥多の信徒たちが、其の頃殆ど
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、此の老神行太保戴宗は、加州小松の住人、もとの加賀藩の飛脚であつた。
――當時、唯一の交通機關、江戸三度と稱へた加賀藩の飛脚の規定は、高岡、富山、泊、親不知、五智、高田、長野、
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は、久保田さん(万ちやん)に聞くが可い。……山の手、本郷臺。……切通しは堰を切つて俥の瀧を流した。勿論
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先頃大阪より歸りし人の話に、彼地にては人力車日を追ひ盛に行はれ
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道場、吉崎の港、小女郎の三國へ寄つて、金ヶ崎へ通ふ百噸以下の汽船はあつた。が、事もおろかや如法の
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辛うじて切拔けると、三島樣の曲角で、又はじめて、入谷の大池を右に、ぐつと暗くなるあたりから、次第に凄く成つたものだ
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、道中の風情見る如し。――これは能登、越中、加賀よりして、本願寺まゐりの夥多の信徒たちが、其の頃殆ど色絲を織る
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衣類より足袋は目に着く。江戸では女が素足であつた。其のしなやかさと、柔かさと、形の
、高田、長野、碓氷峠を越えて、松井田、高崎、江戸の板橋まで下街道、百二十里半――丁數四千三十八を、早飛脚は滿五
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は紅葉先生の創意であると思ふ。見附を入つて、牛込から、飯田町へ曲るあたりの帳場に、(人力)を附着けて、一
上野へついて、連とは本郷で分れて、私は牛込の先生の玄關に歸つた。其年父をなくした爲めに、多日
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、五智、高田、長野、碓氷峠を越えて、松井田、高崎、江戸の板橋まで下街道、百二十里半――丁數四千三十八を、早飛脚は
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て居ります。何うも然うらしいと思ひました。僕は柳川と云ふものです。此頃から參つて居ります。」
ともまだ玄關に居たが、こんな事は大好だから柳川が見物、參觀か、參觀した。「三人ばかり倒れて寢たよ、
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ふられた。草加で雨に逢つたのではない。四谷の出はづれで、二人とも嫌はれたのである。
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のがうまいと言ふ下から、落ちることもよく落ちた。本郷の菊坂の途中で徐々と横に落ちたが寺の生垣に引掛つた、怪我
、長野泊りの其の翌日、上野へついて、連とは本郷で分れて、私は牛込の先生の玄關に歸つた。其年父を
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の方法は、金澤から十三里、越中伏木港まで陸路、但し倶利伽羅の嶮を越す――其の伏木港から直江津まで汽船があつて、すぐに鐵道へ
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の信徒たちが、其の頃殆ど色絲を織るが如く、越前――上街道を往來した趣である。
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汽車は、米原を接續線にして、それが敦賀までしか通じては居なかつた。「むき蟹。」「殼附。」など
にさへ言ふのだから、浪はいつも穩かでない。敦賀は良津ゆゑ苦勞はないが、金石の方は船が沖がかりして
ば成らぬ。此だけでも命がけだ。冬分は往々敦賀から來た船が、其處に金石を見ながら、端舟の便がないために
果は佐渡ヶ島へ吹放たれたり、思切つて、もとの敦賀へ逆戻りする事さへあつた。
――いつもは件の得意の俥で、上街道越前を敦賀へ出たのに――爾時は、旅費の都合で。……聞いて
、故郷へ駈戻つた折は、汽車で夜をあかして、敦賀から、俥だつたが、武生までで日が暮れた。道十一里だけれど
て、こゝを、又こゝから立つて、大雪の中を敦賀へ越した事もある。俥はきかない。俥夫が朝まだき提灯で道案内に立つ
一方が海に吹放たれるので雪が薄い。俥は敦賀まで、漸と通じた。
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一ヶ月八匁宛なりと載せてある。勿論、金澤、福井などでは、俵藤太も、頼光、瀧夜叉姫も、まだ見た事
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つて、美人の孤家に宿つた事がある。首尾よく岐阜へ越したのであつた。
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無事に直江津へ上陸したが、時間によつて汽車は長野で留まつた。扇屋だつたか、藤屋だつたか、土地も星も
――時に、長野泊りの其の翌日、上野へついて、連とは本郷で分れて、私
規定は、高岡、富山、泊、親不知、五智、高田、長野、碓氷峠を越えて、松井田、高崎、江戸の板橋まで下街道、百二十
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三度と稱へた加賀藩の飛脚の規定は、高岡、富山、泊、親不知、五智、高田、長野、碓氷峠を越えて、松井田、
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、武生から其の道程、實に二十七里である。――深川の俥は永代を越さないのを他に見得にする……と
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自動車に相乘して、堂々と、淺草、上野、銀座を飛ばす、當今の貴婦人紳士と雖も、これを見たら一驚を吃する
なかつた。「むき蟹。」「殼附。」などと銀座のはち卷で旨がる處か、ヤタ一でも越前蟹(大蟹)を
/\と俥で歩行く癖があつた。淺草でも、銀座でも、上野でも――人の往來、店の構へ、千状
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自動車に相乘して、堂々と、淺草、上野、銀座を飛ばす、當今の貴婦人紳士と雖も、これを見たら一驚を
――時に、長野泊りの其の翌日、上野へついて、連とは本郷で分れて、私は牛込の先生の玄
で歩行く癖があつた。淺草でも、銀座でも、上野でも――人の往來、店の構へ、千状萬態、一
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なりと云ふ。尚ほ追々増加するよし……其處で、東京府下は總數四萬餘に及ぶ。
、瀧夜叉姫も、まだ見た事もなかつたらう。此の東京の四萬の數は多いやうだけれども、其の頃にしろ府下一帶の
に目に餘る。「こいつを樂に切拔けないぢや東京に住めないよ。」と、よく下宿の先輩が然う言つた。
―禮服や一千兩を土用干――此の大禮服は東京で出來た。が、帽を頂き、劍を帶び、手套を絞ると
「書生さん、東京へ連れてつて――」
を知つたため、私は一頃は小遣錢があると、東京の町をふら/\と俥で歩行く癖があつた。淺草でも、
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横に落ちたが寺の生垣に引掛つた、怪我なし。神田猿樂町で、幌のまゝ打倒れた、ヌツと這出る事は出たが
がある。たづぬるに精しからず、宿題にした處、近頃神田で育つた或婦が教へた。茄子と茗荷と、油揚を清汁にし
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然うだらう。日本橋の砂糖問屋の令孃が、圓髷に結つて、あなたや……
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……思ひ出す事がある。淺草田原町の裏長屋に轉がつて居た時、春寒い頃……足袋が
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に蝋燭に亂れたのは、鶸、山雀、鸞、目白鳥などの假の塒を驚いて起つのであつた。
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まい、私と其の丁と二人で、宿場でふられた。草加で雨に逢つたのではない。四谷の出はづれで、二人とも