式部小路 / 泉鏡花

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地名一覧

東照宮

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呑気だから、愉快い、と引受けたんで。あれから東照宮の中を抜けて、ぶらぶらしながら谷中の途中、ここが御註文と思うから

聞きますとな、愛の野郎は当日お昼過から、東照宮の五重の塔に転がっていたんでがすって。暮かかってから、のッそり

それから連れ立って、東照宮の方へ行くのを、大勢女中がずらりとならんで騒いで見送ったのは

水天宮

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※水天宮様の方角はどちらでがすえ、※と聞きましては、一室に大勢ですから

横浜

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ヶ谷、成田、銚子。東じゃ、品川から川崎続き、横浜、程ヶ谷までも知っていて対手にし手がないもんですから、

伊豆

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火の玉が焼を起して、伊豆の大島へころがり込んで行ったんですって。芝居ですると、鎮西八郎為朝

すっ、するするッと来ら。私あ伊豆の大島へ行きましたがね、から、唐人みたようなお百姓でも

小石川

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何でも小石川の床店の組合が、殺みに来たと思ったんだそうで、奴

音羽

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姿は、次第に橋を距って、大きく三日月形に、音羽の方から庚申塚へ通う三ツ角へ出たが、曲って孰方へも行かん

かくてこそ音羽なる青柳町のこの枝道を、式部小路とは名づけたれ。

玉川

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揃えて畏っていたのを見た。月の夜の玉川に、砧を枕にした風情、お夏は愛吉のその膝に、なお

江の島

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江の島をさえ知らない娘の驚いたのはさもありなん。

川崎

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草加から熊ヶ谷、成田、銚子。東じゃ、品川から川崎続き、横浜、程ヶ谷までも知っていて対手にし手がないもん

九度山

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臥竜の南枝にかけて、良き墨薫る手習草紙は、九度山の真田が庵に、緋縅を見るより由緒ありげで、奥床しく、しおらしい。憎い

江戸

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通る。馬士が通る。ちとばかり前に、近頃は余り江戸向では見掛けない、よかよか飴屋が、衝と足早に行き過ぎた

酒になりなよ江戸の水。

根岸

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内聞、というので、お夏さんの歌の師匠の、根岸の鴨川の処へ出向いたのが間違の因です……

(谷中なら、墓原の森の中を根岸で下りる、くらがり坂が可い。踏切の上の。あすこいらで、笹ッ葉

加茂川

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こうしよう。奥様は歌が好で、今でもちょいちょい、加茂川ン許へお通いだから、梅岡さんに、――私も歌が習いたい

鎌倉

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対手にし手がないもんですから、飛んで、逗子、鎌倉、大磯ね。国府津辺まで、それまでに荒しゃあがったんでね、二度目

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から堪らなくなって、刎ね起きて、きょろきょろ見ると、その佃の帆柱が見える硝子窓の上の方が、真暗に三寸ばかり透してあった

銚子

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、宇都宮、栃木、埼玉、草加から熊ヶ谷、成田、銚子。東じゃ、品川から川崎続き、横浜、程ヶ谷までも知っていて

と廻って突立つから、慌てて留める婆さんを、刎ね飛ばす、銚子が転がる、膳が倒れる、どたばた、がたぴしという騒ぎ、お嬢さん、と呼んで

万世橋

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定子阿魔の顔さえ見せておくんなさりゃ、日本橋でも、万世橋でも、電車の中でも、劇場でも、どこでもかまわないッていっ

赤城

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(べらぼうめ、いくら山手だってこう、赤城に芝居小屋のあった時分じゃねえ、見物の居る前で生命の取遣りが

谷中の墓地

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笠森の坂を向うへ上って、石屋の角でさ。谷中の墓地へ出たと思うと、向うから――お夏さん。

宇都宮

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詰める――し、勿論何でさ、この近在、大宮、宇都宮、栃木、埼玉、草加から熊ヶ谷、成田、銚子。東じゃ、品川

巴里

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竹永さん、金之助病のためにこの境に処して、なお巴里、伊太利の歌に魂を奪われず。却って佃島の(鰯こ)に

深川

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「一度は、深川さ、私たちも風説に聞いて知っているが、木場一番といわれた

「深川の方で、ええ、その洲崎の方で、」

深川からじゃ大廻りでね、内の前を二度通るようなもんですもの、

番目の、大事の大事のお雛様。や! 大変だ。深川の火事の時は、ちょうどお節句で飾ってあった、あの騒ぎに内裏様

ぼッたい瞼が恐ろしく婀娜だった、お富といって、深川に芸者をして、新内がよく出来て、相応に売った婦人でした

て、ちぐはぐでおかしいくらい。ついこの間も嬢さんが、深川の浄心寺、御菩提所へ、お墓まいりにおいでなさるのに、当世の

華族の女を媽にしたというので、酷くこの深川ッ児に軽蔑されるよ。はははは、)

日本橋

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日本橋のそれにや習える、

二度目が日本橋の人形町で、柳屋といってね、……」

をして、定子阿魔の顔さえ見せておくんなさりゃ、日本橋でも、万世橋でも、電車の中でも、劇場でも、どこで

ごくごく内証ですが、日本橋のお医師で、山の井光起さんとおっしゃる方、という。いよいよと

光起さんとおっしゃって、日本橋の真中にある大藪、というと、(やや先生か)といって、

巣鴨

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の女学生が一人、これは雑司ヶ谷の方から来て、巣鴨。

「第一手前が巣鴨の関戸の邸の、紅葉の中で、不意に出会した時もそうです

(もみじを御見物と見えますが、これから巣鴨へ抜けて、)先生、あの邸はね、私どもが居た池の

、裏木戸に早や山茶花が咲いていて、そこを境に巣鴨の卯之吉が庭になりまさ。

はてな、巣鴨の通へ出てしまったか、余り不思議だと思う。生垣の外は

向うに見える、庭口から巣鴨の通へ出ようとする枝折門に、曳きつけた腕車の傍に、

「そうだ、ただいまのその巣鴨の植木屋、卯之吉の庭で、お夏さんの車の、矢のように飛ん

出かけて、くらがり坂に潜んだんだといいますから、巣鴨じゃ、ちょうどお夏さんが、私と話をしていなすった時でがす

目白

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が見えなくなると、小店の向うの竹垣の上で、目白がチイチイと鳴いた。

目白がまたチイと鳴いて、ひッそりと、小さな羽を休めた形で

、前後に人はなし、床几にも誰も居らず、目白もかくれて、風も吹かず、気は凝って寂としたから、その

でもまあ、目白下の寄席の辻看板のあかりで、ようよう顔へあてた袖をはずして

人形町

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「人形町においでなすった、――柳屋のお夏さん。」

二度目が日本橋の人形町で、柳屋といってね、……」

愛吉、お前のおともだちの蔵人(軍鶏呼名)もね、人形町の火事ッきり、どこへ行ったか分らないんだよ。愛吉てば、

お前、おっかさんが亡なっては、私一人ぼっちじゃないか。人形町の内が焼ければさ、私はどこにも行く処がないじゃないか

その物腰と風采は、人形町の頃よりも、三ツ四ツ年紀もたけ、※たさも、なお増

、という挨拶で、ちと照れましたがな。以前、人形町辺に居りました時分ちょいちょいお店へ参って、といってこの天窓に対し

服装といい、何となく人形町時分から見ると落着きが出て気高い。私最初はその関戸伯爵の姫様

東京

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誰でも火傷をします。火の玉のような奴で、東京中の床屋という床屋、一軒残らず手を焼いてしまったんで

まで、それまでに荒しゃあがったんでね、二度目に東京を追出てもどこへ行っても何でしょう、おかみさん。

「それがどうです。そら、そういった工合で、東京中は喰い詰める――し、勿論何でさ、この近在、大宮、宇都宮

処で、炎天を舞い戻ると、もう東京じゃ、誰も対手にしないことを知ってますから、一番自前で遣ろう

戦争のない歴史、達引きのない江戸児、江戸児のない東京だ。ああ、しかし贅六でも可い、私は基督教を信じても可い。

品川

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埼玉、草加から熊ヶ谷、成田、銚子。東じゃ、品川から川崎続き、横浜、程ヶ谷までも知っていて対手にし手

草加

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何でさ、この近在、大宮、宇都宮、栃木、埼玉、草加から熊ヶ谷、成田、銚子。東じゃ、品川から川崎続き、横浜、

大宮

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は喰い詰める――し、勿論何でさ、この近在、大宮、宇都宮、栃木、埼玉、草加から熊ヶ谷、成田、銚子。東じゃ

護国寺

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。左がその黒塀で、右がその生垣。ずッと続いて護国寺の通りへ、折廻した大構の地続で。

ここへ引越して、しばらく経って、護国寺が直ぐだといいますから、音羽々々ッて音ばかりだったでしょう。

、菊畑の前、荒物屋の角あたりから、疾風一陣! 護国寺前から音羽の通りを、通り魔の通るよう、手足も、衣も吹靡い

大塚

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橋、海晏寺や滝の川より見事だッて評判の、大塚の関戸のお邸とやらのもみじの方は、お廻りなすっていらっしゃいまし

茶を入れかえる、といったのを振切って出て、大塚の通りから、珍らしく俥を驕ると、道の順で、これが団子坂

お茶の水

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して、行って見ようかと思ったんですがね、お茶の水辺まで来ると、何だか頻に気が急いてね、急いで急い

上野

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の川へでもお廻りか、)と尋ねると、(上野へ、)という。

も預けてあったものと思われます。で、直ぐに上野へ殺されに行こうとする処だったのです。一体どこで降りました

さんを、まあとかくしてです。私懇意な、あすこ、上野の三宜亭。もっともこりゃ谷中へ行く前に、お夏さんが呼び出しをかけた

通り、何んだか気になる。お夏さんの跡から上野へ行って、暗がり坂で、きゃッ! 天地顛倒。途轍もない

(奥さんを上野まで連れ出させよう。お前、前へ廻って支度して、待伏せをしてお

おっしゃった歌の先生、加茂川の馬車新道へ、炎天にも上野まで、鉄道馬車。後を歩行いて通ったから、不幸にして地の理

に、――私も歌が習いたい、紅葉の盛り、上野をおひろいのおともをしながら、お師匠さんへ、奥様から、御

に限って、おひろいかなんか。梅岡さんが、その上野をおともという間に、いい加減に日を暮らして、夜になって

神田

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、――山の井医院の梅岡という、これがまた神田ッ児で素敵に気の早い、活溌な、年少な薬剤師と、二人で

せいいって饒舌った時には、居合わせた梅岡薬剤。神田の兄いだが、目を円くして驚いた。

高尾

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、弁天様のお話は聞きましたが、ここらに高尾の塚もなし、誰方が草刈になっておいで遊ばしたんでしょうと

新橋

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そこへ柳橋とも、芳町とも、新橋とも、たとえようのないのが、急いで来て、一所になった。紅葉

両国橋

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かけた、賽が一箇、夜のしらしらあけの頃、両国橋をころころと、邪慳な通行人の足に蹴られて、五が出て、

京橋

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、愁然としてまず早や頭を垂れたのは、都下京橋区尾張町東洋新聞、三の面軟派の主筆、遠山金之助である。

隅田川

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あんな役雑な三味線でも、思いなしか、あの時くらい、隅田川の水にだって、冴えた調子は出たことがございませんよ。