金沢 新潟 東京

ぼりて余りあかるからず、すべて少しく陰気にして、加賀金沢の市中にてもこのわたりは浅野川の河畔一帯の湿地なり。

嫌で、嫌で、片時も居たたまらなくッてよ。金沢へ帰りたい帰りたいで、例の持病で、気が滅入っちゃあ泣いてばかり

、私は何だか一所に居るのが嫌だから、金沢に残ることにして、旦那ばかり、任地へ行くようにという相談を

残し、坊やはその時分五歳でね、それを連れて金沢へ帰ると、さっぱりしてその居心の可かったっちゃあない。坊も

異様なる節を附し両手を掉りて躍りながら、数年来金沢市内三百余町に飴を売りつつ往来して、十万の人一般に、

るる者は時としては滑稽の材となりて、金沢の人士は一分時の笑の代にとて、渠に二三厘を払う

なので、私はどういうものか遠所へ行くとしきりに金沢が恋しくなッて、帰りたい帰りたい一心でね、済まないことだとは

、また二三度も方々へいい役に着いたけれども、金沢なら可いが、みんな遠所なので、私はどういうものか遠所へ行くと

だもんだからどこも良い処には行かれないで、金沢じゃ、あんなつまらない学校へ、腰弁当というしがない役よ。」

諸君、他日もし北陸に旅行して、ついでありて金沢を過りたまわん時、好事の方々心あらば、通りがかりの市人に就きて

行くようにという相談をしたが不可なくって、とうとう新潟くんだりまで、引張り出されたがね。どういうものか、嫌で、嫌で

「さあその新潟から帰った当座は、坊やも――名は環といったよ――

て帰って来て、（なるほどお前なんざ、とても住めない、新潟は水が悪い）ッさ。まあ！

を卒業したので、ま、宅へ来てから、東京へ出て、大学へ入ろうという相談でね、もともと内の緊りに

なすったせいか、大層気分も好くなるし、いよいよ旦那が東京へたつというので、祝ってたたしたお酒の座で、ちっと飲

そうそう、芳ちゃん、まだその前にね、旦那がさ、東京へ行って三月めから、毎月々々一枚ずつ、月の朔日に

てから聞いたことがあったよ。そうするとね、東京はからッ風で塵埃が酷いから、眼を悪くせまいための砂除だって