玄関の手帖 / 林芙美子
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俺を大切にしてくれぬかと云ふのである。九州の父の家は立派な家であつた。若い父の細君は藝者をし
まつてゐる父は、伊津子に東京の生活なんか捨てて早く九州へ來てくれと云ふのであつた。伊津子は福岡の飛行場から東京行きの
のかと思ふと、伊津子は東京の生活を離れて、九州へ行つてしまはうとも思ふのであつた。狂人になんかなつてたまるものか
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た。――伊津子は飛行機に乘つて、四國の高松邊の上空へ來ると、急に飛行機から墜ちて自殺してしまひたい氣持
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早く九州へ來てくれと云ふのであつた。伊津子は福岡の飛行場から東京行きの飛行機に乘るのであつたけれど、火野葦平と云ふ
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で賣り、柿を賣つたりして、常次はやつと東京までの切符を買つて出て來たのだと云ふ。柿も今年は
して一ヶ月二十八圓の下宿料をとられてゐる。東京でもアパートや貸間が非常に少ない上に、あつても下宿料が高い
もない寒村なので、この一二年、冬場になると東京へ働きに出て來てゐるのである。去年は同郷人の開いて
職工の數も大變なものださうである。常次が東京へ出て來た時、私は常次に、また、去年のやうに神田
常次は東京へ來て三日目に職業がきまつた。大森の近くにある、
やらないのだと云ふのである。つゆは、ここが東京のどの邊にあたるのかもわからないので困つてしまつた。甲斐
てくれと云ふのであつた。伊津子は福岡の飛行場から東京行きの飛行機に乘るのであつたけれど、火野葦平と云ふひとががいせんし
たいへんせつかちになつてしまつてゐる父は、伊津子に東京の生活なんか捨てて早く九州へ來てくれと云ふのであつた。伊津子
伊津子は鹽水港製糖の十株劵を二枚貰つて東京へ戻つて來た。その株劵を賣れば二千圓近くにはなると
病院で果てなければならないのかと思ふと、伊津子は東京の生活を離れて、九州へ行つてしまはうとも思ふのであつた。狂人
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來てゐるのである。去年は同郷人の開いてゐる神田の食堂へ働きに行つた。四月の雪解けの頃まで三十圓ほど貯金
來た時、私は常次に、また、去年のやうに神田の食堂に出前持ちに行くのかとたづねてみると、常次は學生服
、疲れてもうろうとしてしまつてゐる。つゆは、神田の方へ上つて行つたり、澁谷の方へ行つたりして、方々を
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を迷ひながら、十二時頃、這ふやうにして、吉祥寺の奧の下連雀の家へ歸つて來た。つゆは、もう、ものを
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が出征してゐたり、色々な景色が見渡された。上野で降りて地下鐵で、つゆは淺草へ行つたのだけれど、觀音
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ながら、伊津子はたゞ默々と寒い道を歩いてゐた。新宿驛の交番では女の醉つぱらひが、交番の入口に腰を
けれど、家へは少しもかへりたくなくて、夜更けた新宿の街を歩いた。晨に出發して、夕べにやぶれる徘徊の氣持が
眼の前をすぎて行つた。伊津子はバスに乘つて新宿へ出て行つたけれど、家へは少しもかへりたくなくて、夜更け