暗い花 / 林芙美子

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地名一覧

本郷

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七ヶ月にもなつてゐた。恩田に連れられて、本郷の産院をたづねた時は、腹帶をするにはもう遲いと云はれた

新宿

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に乘るもの、房江は背の高い女と市電に乘つて新宿へ出て、終點のガードをくゞつて、中野行きのバスに乘るの

銀座

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四人とも、朝のすがすがしい街を銀座四丁目まで歩いて、それからてんでに別れて、市電に乘るもの、地下鐵

東京

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取つたところで、第一、暮せつこないわ。――東京は、人一人の生活が月千圓近くはどうしてもかゝるンです

も行かない田舍者を何處で使つてくれるのよ。東京は廣いけど、人が山ほどゐるンだもの、二百や三百の月給

のよ。それに、健が來るにしたつて、この東京に、健のやうな學校にも行かない田舍者を何處で使つて

「だつてえ、東京へ出るつたつて、第一轉入なンて出來つこないのよ。それ

なからうと、さつきから、おふくろは胸算用をして、もう、東京住ひしたやうな氣で、汚れてどろどろになつた、猫の額ほど

「珍しいものだねえ。東京つてところは何でも賣つてるだね」

「東京は、薄情なところだのう。よくそれで躯がもつ事だよ」

呆れたやうに、じいんと唸り出したコンロを眺めてゐる。東京の便利さが、味氣ないものに思へてきた。

そのさくと云ふ娘も、子供を連れて、此廣い東京の何處で暮してゐるのか、房江には消息が判らなくなつてし

もう一人、さくと云ふ娘だけが、つまづいたなりで、東京に居のこつてしまつた。いまは、そのさくと云ふ娘も、

十四五人の娘達も、東京で、それぞれの人生的な思ひ出をつくつて故郷へ戻つて行つたけれども

かたぎな暮しむきと云ふものは、なんぼなんでも廣い東京だとてあらう筈ださ……わし、苦味いこと云ふではないが

おふくろにとつて、東京は不思議な都會である。娘の姿は世にもをかしな姿で、

新橋

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房江の足は自然に新橋に降りて、朝の市電で、築地に行き、また、ハンカチーフ一枚で