新版 放浪記 / 林芙美子
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水っぽい舌ざわりだ。東京は悲しい思い出ばかりなり。いっそ京都か大阪で暮してみようかと思う……。天保山の安宿の二階で、何時まで
女学校卒業の女事務員です。どんより走る街並を眺めながら私は大阪も面白いと思った。誰も知らない土地で働く事もいいだろう。枯れた
大根の切り口みたいな大阪のお天陽様ばかりを見ていると、塩辛いおかずでもそえて、甘味い
――灘の酒造家より、お取引先に限り、酒荷船に大阪まで無料にてお乗せいたします。定員五十名。
「大阪からどちらです。」
この船は、どこの港へも寄らないで、一直線に大阪へ急いで走っているのだから嬉しくて仕方がない。
た女竹の煮たのが三切れはいっていて、大阪の鉄工場へはいっていた両親を、どんなにか私は恋しく思った事
夜。私は一人で門司まで行った記憶もあります。大阪から父が門司までむかいに来てくれると云う事でしたけれど、九ツの
たような気がする。英子さんは、二三日して大阪へ戻る由なり。その後のことはまた考えればいいのだ。せめて、二三日
英子さんが一緒に大阪へ行かないかと云う。大阪へ行く気はしないけれど、岡山へは帰り
英子さんが一緒に大阪へ行かないかと云う。大阪へ行く気はしないけれど、岡山へは帰りたい。久しぶりに、母にも
と溶けてしまいそうな安物。足袋と下駄は英子さんに大阪の梅田駅で貰ったもの。
「大阪から仕入れてるんでとても安いんですよ。輸出の残りなンですよ」
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て、とてもおかしいわよ。私六年ばかりいたけど、満洲の新聞社の人に連れて帰ってもらったの。」
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青山の貿易店も、いまは高架線のかなたになった。二週間の労働賃銀十一
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道玄坂の漬物屋の路地口にある、土木請負の看板をくぐって、綺麗では
かして買いたいものだと思う。泥濘にて道悪し、道玄坂はアンコを流したような鋪道だ。一日休むと、雨の続いた日が
かえり十時。道玄坂の古本屋で、イバニエスのメイ・フラワア号を買う。四十銭也。駅の近く
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下谷の根岸に風鈴を買いに行き、円い帽子入れに風鈴を詰めて貰って、大きなかさばっ
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声をあげた。ああ、何と云うことでございましょう。浜松で買ったと云う汽車のべんとうの食い残しの折りが一ツ。うで玉子が七ツ
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事もまんざらではない。沢庵を買った古新聞に、北海道にはまだ何万町歩と云う荒地があると書いてある。ああそう云う未開の
淋しく候。くだらなく候。金が欲しく候。北海道あたりの、アカシヤの香る並樹道を一人できままに歩いてみたいものなり。
「いい所に居たんだね、俺も北海道だよ。」
商売なんて止めてしまいたいと思う……。それでも、北海道から来たお父さんの手紙には、今は帰る旅費もないから、少しでも
は送ってあげなければならぬ。少し働いたら、私も北海道へ渡って、お父さん達といっそ行商してまわってみようかしらとも思う。おでん
父が北海道へ行ってから、もう四カ月あまりになる、遠くに走りすぎて商売も思う
米も二升もらったり、画描の溝口さんは、折角北海道から送って来たと云う餅を、風呂敷に分けてくれたり、指輪を質屋
外を誰か口笛をふいて通っている。養父さんは北海道へ行ってそれっきり。仲々思わしい仕事もないのであろう。私も口笛を吹い
北海道の何処かの炭坑が爆発したのだそうだ。死傷者多数ある見込み…
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の詩の稿料を六円戴く。いつも目をつぶって通る神楽坂も、今日は素敵に楽しい街になって、店の一ツ一ツを私
神楽坂に夜店を出しに行く。藁店の床屋さんから雨戸を借りて、鯛焼き屋
神楽坂の床屋さんで水をのませて貰う。
変って、また牛込へ尋ねてゆく。野村さんは不在。神楽坂の通りをぶらぶら歩く。古本屋で立読み。このぐらいの事は書けると思いながら
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汽車が高崎に着くと、私の周囲の空席に、旅まわりの芸人風な男女が四人
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的に放浪者である。私は古里を持たない。父は四国の伊予の人間で、太物の行商人であった。母は、九州の桜島の
私は驚異の眼をみはったものだ。四国のお父つぁんから送って来たのだと母は云っていた。私
お父さんが金持ちになってくれるといい。九州もいいな、四国もいいな。夜更け、母が鉛筆をなめなめお父さんにたよりを書いているの
四国まで一本筋の航路だ。
になる、遠くに走りすぎて商売も思うようになく、四国へ帰るのは来春だと云う父のたよりが来て、こちらも随分寒くなっ
四国の浜辺から天神丸に乗りました。
も、こっちをむいても旅の空なり。もいちど四国の古里へ逆もどりしようかとも思う。とても淋しい宿だ。「古創や恋
恋しくなってきた。私の思い出に何の汚れもない四国の古里よ。やっぱり帰りたいと思う……。ああ御飯炊きになっていた
ではたった二三寸の間なのに、可哀想なお母さんは四国の海辺で、朝も夜も私の事を考えて暮らしているのでしょう―
私の古里は遠い四国の海辺
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胸をさわがした美しい封筒が飾窓に出ている。だらだらと京極の街を降りると、横に切れた路地の中に、菊水と云ううどんや
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程くやしくなってくる。これが出掛けの戦争だ。急いで根津の通りへ出ると、松田さんが酒屋のポストの傍で、ハガキを入れながら
もう元気になって、自然に笑い出したくなっている。根津の町でその職人さんに別れると、又私は飄々と歌を唱いながら路
、時々小さい地震のしている道へ出て行った。根津の電車通りはみみずのように野宿の群がつらなっていた。青年は真黒
私が根津の権現様の広場へ帰った時には、大学生は例の通り、あの大きな
。ついでに、髪にも水をつけて手でなでつける。根津へ戻って恭次郎さんの家へ行ってみようかとも思うけれど、節ちゃんに
根津のゴンゲン様の境内で休む。
根津のゴンゲン裏にかつぶしを売っている大きい店がある。ここの息子が根津なにがし
にかつぶしを売っている大きい店がある。ここの息子が根津なにがしとか云う活動役者だそうだ。まだ一度も見たことがないけれど、
。養老院。狂人病院。警察。ヒミツタンテイ。ステッキガール。玉の井。根津あたりの素人淫売宿。あらゆる世相が都会の背景にある。
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しる粉屋を出ると、青年と別れて私達三人は、小石川の紅梅亭と云う寄席に行った。賀々寿々の新内と、三好の酔っぱらいに
小石川の博文館へ行く。
小石川の博文館に、いつか小説を持って行ったが、懸賞小説はいまやっ
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「そうやなあ、栄町の宿屋はんやけど、蒲団の洗濯があるというてましたけんど、なんぼう
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寒冷な風の吹く荒神山の上で呼んでいる
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彼は後で支柱夫に出世したけれど、外に、島根の方から流れて来ている祭文語りの義眼の男や、夫婦者の坑夫
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横浜に来て五日あまりになる。カフエー・エトランゼの黒い卓子の上に、私
「横浜だよ」
風が吹いている。流暢な東京言葉にもお別れ。横浜を過ぎる頃から車内がひっそりして来る。山北の鮎寿司を英子さんが買う。
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たと云うのに、私は電車の窓に凭れて、赤坂のお濠の燈火をいつまでも眺めていた。
目に社を出て行くのだと大いに張りきっている。赤坂の聯隊が近いのだということで、会社へ着くころには、いつも喇叭
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の小学校へ通って行った。それを振り出しにして、佐世保、久留米、下関、門司、戸畑、折尾と言った順に、四年の間
街でもない。長崎のように美しい街でもない。佐世保のように女のひとが美しい町でもなかった。骸炭のザクザクした道
来なかった。父はその金で、唐津焼を仕入れると、佐世保へ一人で働きに行ってしまった。
のいちょうがえしの女がそばに立っていた。昔、佐世保にいた頃、私はこの歌をきいた事がある。誘われるような
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から男のいそいそとした後姿を眺めていた。夕方四谷の三輪会館に行ってみると場内はもういっぱいの人で、舞台は例の
「私は四谷で生れたのだけれど、十二の時、よその小父さんに連れられて、
赤が、露にベトベト濡れて陽に光っていた。四谷までバスに乗る。窓硝子の紫の鹿の子を掛けた私の結い綿の頭
ずがたりのお爺さんの話。二日ほど前までは四谷の喜よしと云う寄席の下足番をしていたのだそうだ。心がけ
四谷の駅ではとっぷり暗くなったので、やぶれかぶれで、四谷から夜店を見ながら
四谷の駅ではとっぷり暗くなったので、やぶれかぶれで、四谷から夜店を見ながら新宿まで歩く。
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まるでこわれた羽子板のようにガックンガックン首を振りながら長い事芝浦までゆられて行った。道中費、金七十銭也。高いような、安いよう
通って行くと、肥料くさい匂いがぷんぷんしていて、芝浦の築港には鴎のように白い水兵達が群れていた。
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本郷の前の家へ行ってみる。叔母さんつめたし。近松氏から郵便が来て
し、男は金魚のように尾をヒラヒラさせて、本郷の下宿に越して行ってしまった。昨日も出来上った洗濯物を一ぱい抱えて、
行ってしまった。一番なつかしく、一番厭な思い出の残った本郷の酒屋の二階を私は思い出していた。同居の軍人上りや二階
十二社についた時は日暮れだった。本郷からここまで四里はあるだろう。私は棒のようにつっぱった足を、
家族が群れていた。私がそこへ行くと、「本郷から、大変でしたね……」と、人のいい床屋のお上さんは店
私の言葉に、父は、昨夜朝鮮人と間違えられながらやっと本郷まで来たら、私と入れ違いだった事や、疲れて帰れないので、学生
でも叩きうられるのが関の山かも知れない。かつて、本郷の街裏で見た、女アパッシュの群達の事が胸に浮んでき
。彼女に紹介状をもらって、××女性新聞社に行く。本郷の追分で降りて、ブリキの塀をくねくね曲ると、緑のペンキの脱落し
の墓地を抜けて、鬼子母神のそばで番地をさがした。本郷のごみごみした所からこの辺に来ると、何故か落ちついた気がして
っぽく目をうるませていた。――歩いて私達が本郷の酒屋の二階へ帰って行った時はもう十二時近かった。夜更けの
、毎日、いぼさんから八十銭の日給を頂戴してとことこ本郷まで歩いて帰るのだ。
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、女学校時代のことがふっとなつかしく頭に浮んで来る。宝塚の歌劇学校へ行ってみたいと思った事もあった。田舎まわりの役者
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、町の連鎖劇は無料でみられるし、月の出た遠賀川のほとりを、私はこのひろちゃんたちの話を聞きながら帰ったものだった
私は、大声で話しながら、軽い荷車を引いて、暗い遠賀川の堤防を歩いていた。
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しかれてしまいたいと思う。いとしいお母さん、今、貴女は戸塚、藤沢あたりですか、三等車の隅っこで何を考えています。どの
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お江戸日本橋のマークのはいった
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の仲買の人に一円で買ってもらうと、私は兵庫から高松行きの船に乗る事にした。
店屋で、瓦煎餅を一箱買うと、私は古ぼけた兵庫の船宿で高松行きの切符を買った。やっぱり国へかえりましょう。――透徹
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蒸汽船のような工場の音がしていた。ああ尾道の海! 私は海近いような錯覚をおこして、子供のように丘
の夢が段々蘇って来る。長崎の黄いろいちゃんぽんうどんや、尾道の千光寺の桜や、ニユ川で覚えた城ヶ島の唄やああみんななつかしい。絵
唄をうたっていた。沈鐘の唄もうたった。なつかしい尾道の海はこんなに波が荒くなかった。二人でかぶったマントの中で、
ていたお養父さんはこう言ってくれたりした。尾道の家は、二階が六畳二間、階下は帆布と煙草を売るとしより
来たかと訊かれると、少女らしく涙があふれた。尾道でのはなし、東京でのはなし、私は一年あまりのあのひととの暮し
「尾道です。」
はもう桜が咲いたと云うニュースが出ていた。尾道の千光寺の桜もいいだろうとふっと思う。あの桜の並木の中に
で涼し気だった。下の細君に五円借りた。尾道まで七円くらいであろう。やっと財布をはたいて切符を買うと、座席を取っ
海が見えた。海が見える。五年振りに見る、尾道の海はなつかしい。汽車が尾道の海へさしかかると、煤けた小さい町の屋根
。五年振りに見る、尾道の海はなつかしい。汽車が尾道の海へさしかかると、煤けた小さい町の屋根が提灯のように拡がって来る
なる。私はうらぶれた体で、再び旅の古里である尾道へ逆もどりしているのだ。気の弱い両親をかかえた私は、当も
ていたのだけれど、ああ今は旅の古里である尾道の海辺だ。海添いの遊女屋の行燈が、椿のように白く点々と見え
尾道を去る時の私は肩上げもあったのだけれど、今の私の姿は
にこんな姿で行きたい家もないけれど、とにかくもう汽車は尾道にはいり、肥料臭い匂いがしている。
「尾道から警官がいっぱい来たんじゃと。」
から、この位の事がいったい何だろうと思う。――尾道の海辺で、波止場の石垣に、お腹を打ちつけては、あのひとの子供を
オーイオーイと後から呼びかけて来た。久し振りに見る兄さん、尾道の私の家に、枝になった蜜柑や、オレンジを持って来てくれ
、ガアン、ガアンと鉄を打つ音がひびいていた。尾道についたら半分高松へ送ってやりましょう。東京へかえったら、氷屋もいい
ここから尾道は何百里も遠い。まるで、虫けらみたいな生きかただ。東京には、いっぱい
が空いている。少しでも金があれば、私は尾道へかえってみたいのだ。
いた。一カ月程前に、お義父さんもお母さんも尾道へ戻っていると云うので、私はがっかりする。一晩やっかいになって
尾道へ着いたのが夜。
。母は二階の物干で行水をしていた。尾道は水が不自由なので、にない桶一杯二銭で水を買うの
尾道へ戻った事を後悔する。
てはゆけぬ。だが、東京で有名な詩人も、尾道では何のあとかたもない。それでよいのだと思う。私は尾道が
のあとかたもない。それでよいのだと思う。私は尾道が好きだ。ばんよりはいりゃんせんかのう……魚売りの声が路地に
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くれ、私には何にも用はない。男と私は精養軒の白い食卓につくと、日本料理でささやかな別宴を張った。
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に行ってみる。夕方ポーチで犬と遊んでいたら、上野山と云う洋画を描く人が遊びに来た。私はこの人と会うのは
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へ降りてみたいなと思うなり。静岡にしようか、名古屋にしようか、だけど何だかそれも不安で仕方がない。暗い窓に
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と、せき止められていた涙が一時にあふれている。明石行きの三等車の隅ッこに、荷物も何もない私は、足
明石行きの三等車は、神戸で降りてしまう人たちばかりだった。私も
明石の女もメリンスの女も、一歩外に出ると、睨みあいを捨ててしまって
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放浪者である。私は古里を持たない。父は四国の伊予の人間で、太物の行商人であった。母は、九州の桜島の温泉宿
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。いっそ京都か大阪で暮してみようかと思う……。天保山の安宿の二階で、何時までも鳴いている猫の声を寂しく聞きながら
だ。私は早く引きあげたい気持ちでいっぱいになる。――天保山の船宿へ帰った時は、もう日が暮れて、船が沢山はいってい
五日振りに天保山の安宿をひきあげて、バスケット一つの飄々とした私は、もらわれて
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はならなかったのだ。夕暮れの涼しい風をうけて、若松町の通りを歩いていると、新宿のカフエーにかえる気もしなかった。ヘエ
相変らず、足は棒のようになっていた。若松町まで来ると、膝が痛くなってしまった。すべては天真ランマンにぶつかってみ
若松町へ出て、また、わけもわからずに狭い路地の中を歩いてみる。
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に、ドロドロしている私である。いやな私なり、牛込の男の下宿に寄ってみる。不在。本箱の上に、お母さんからの手紙
夜、牛込の生田長江と云うひとをたずねる。
のだそうだ。羨ましい話だ。食堂を出て、また牛込まで歩く。郵便局のところで、野村さんは、とてもひげの濃いずんぐりした男
ふっと気が変って、また牛込へ尋ねてゆく。野村さんは不在。神楽坂の通りをぶらぶら歩く。古本屋で立
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て、十三円で質に入れると私と時ちゃんは、千駄木の町通りを買物しながら歩いた。古道具屋で箱火鉢と小さい茶ブ台を
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た。――間もなく私は小学校へ行くかわりに、須崎町の粟おこし工場に、日給二十三銭で通った。その頃、笊をさげて
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「この先の長者町までいらっしゃるとあります。」
日在浜のはずれで、丁度長者町にかかった砂浜の小さな破船のような茶屋である。この茶屋の老夫婦は、
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伊予の人間で、太物の行商人であった。母は、九州の桜島の温泉宿の娘である。母は他国者と一緒になったと
舌を出した蛇の文身をしていた。私は九州で初めてこんな凄い女を見た。私は子供だったから、しみじみ正視して
小声で時代色のついた昔の唄を歌っていた。九州へ行っている義父さえこれでよくなっていたら、当分はお母さんの唄で
九州からの音信なし。
十四円九州へ送った。
から飢えて行く私達なのである。あああの十四円は九州へとどいたかしら。東京が厭になった。早くお父さんが金持ちになってくれる
になった。早くお父さんが金持ちになってくれるといい。九州もいいな、四国もいいな。夜更け、母が鉛筆をなめなめお父さんにたより
。どんなにしても行かなくてはならないと思う。九州の父へは、四五日前に金を送ったばかりだし、今日行った
「剃刀」と云う芝居だった。私は少女の頃、九州の芝居小屋で、このひとの「剃刀」と云う芝居を見た事がある
。雀の好きな詩人。みみずくの家を持った詩人。九州の土から生れた詩人。
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明日は玉の井に身売りでもしようかと思う。
よろしくの姿では誰も相手にしようがあるまい。玉の井で前借もむつかしいに違いあるまい。
男達のあいてになるのかと気の毒になって来る。玉の井に行かなくてよかったと思う。在所から売られて来た娘の、今日
感化院。養老院。狂人病院。警察。ヒミツタンテイ。ステッキガール。玉の井。根津あたりの素人淫売宿。あらゆる世相が都会の背景にある。
……。行商も駄目、書く事も駄目となれば、玉の井に躯を売り込むより仕方がないね。三好野で、三角の豆餅を一皿取っ
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紫におう江戸の春
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持光寺の石段下に、母の二階借りの家をたずねる。びちょびちょの外便所の
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とかしなくてはと思いながら、古い蚊帳の中に、樺太の女や、金沢の女達と三人枕を並べているのが、私
になった。俊ちゃんは先の御亭主に連れられて樺太に帰ってしまった。
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扇子も均一の十銭で、鯉の絵や、七福神、富士山の絵が描いてある。骨はがんじょうな竹が七本ばかりついている。
富士山を見た
富士山を見た
富士山は日本のイメージイだ
富士山を見ろ
富士山の肩を叩いてやれ
富士山よ!
富士山よ富士よ
ながら二階の窓をあけに行くと、遠い向うに薄い富士山が見えた。あああの山の下を私は幾度か不幸な思いをして
富士山――暴風雨
停車場の待合所の白い紙に、いま富士山は大あれだと書いてある。フン! あんなものなんか荒れたってかまいは
に行く。着物をぬぐと私は元気になって来る。富士山のペンキ絵がべろんと幕を張ったよう。松が四五本あって、その
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余丁町の方へ出て、暑い陽射しのなかに、ぶらぶら歩く。亀が這っている
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で、可愛い十五の少女であったが、間もなく、青島へ芸者に売られて行ってしまった。「ひろちゃん」干物屋の売り子で
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よ。鹿児島が恋しいとはお思いになりませんか。霧島山が、桜島が、城山が、熱いお茶にカルカンの甘味しい頃ですね。
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射す山々、サウロ彼の殺されるをよしとせり。その日エルサレムに在る教会にむかいて大いなる迫害おこる……。ああ、すべては今日より葬れ。
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されて父と落ちつき場所を求めたところは、山口県の下関と云う処であった。私が生れたのはその下関の町である。
下関と云う処であった。私が生れたのはその下関の町である。――故郷に入れられなかった両親を持つ私は、したがっ
て行った。それを振り出しにして、佐世保、久留米、下関、門司、戸畑、折尾と言った順に、四年の間に、七度
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どこへ散乱して行っていることだろう――。日暮里の金杉から来ているお千代さんは、お父つぁんが寄席の三味線ひきで、妹弟
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「丹波の山の中です」
「ほう、丹波たア何処だい?」
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のようなものをかき始める。外は雨の音なり。玉川の方で、絶え間なく鉄砲を打つ音がしている。深夜だと云うの
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や、尾道の千光寺の桜や、ニユ川で覚えた城ヶ島の唄やああみんななつかしい。絵をならい始めていた頃の、まずいデッサンの幾
に恋しくなって来た。こんな夜だった。あの男は城ヶ島の唄をうたっていた。沈鐘の唄もうたった。なつかしい尾道の海は
ほめてくれた事もあった。あの頃、町には城ヶ島の唄や、沈鐘の唄が流行っていたものだ。三銭のラムネを
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昼は伊勢佐木町に出て、三人で支那蕎麦を食べた。
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女中みたいに、眠ったような顔をしていた。関西の女は物ごしが柔かで、何を考えているのだかさっぱり判らない。
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ではベニがねと云っていた。ベニのパパはハワイに長い事行っていたとかで、ビール箱でこしらえた大きいベッドにベニ
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仕方なく歩き出した私の目にも段々心細くうつって来る。上野公園下まで来ると、どうにも動けない程、山下が恐ろしくて、私は
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晩春五月のことだった。散歩に行った雑司ヶ谷の墓地で、何度も何度もお腹をぶっつけては泣いた私の姿を思い出すなり
御感想は……私はこの言葉を胸にくりかえしながら、雑司ヶ谷の墓地を抜けて、鬼子母神のそばで番地をさがした。本郷のごみごみした所
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湯島天神に行ってみた。お爺さんが車をぶんぶんまわして、桃色の綿菓子
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夜更けて谷中の墓地の方へ散歩をする。
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をして、かなりの財産をつくっていた父は、長崎の沖の天草から逃げて来た浜と云う芸者を家に入れてい
いたのである。私がはじめて小学校へはいったのは長崎であった。ざっこく屋と云う木賃宿から、その頃流行のモスリンの改良服
いた。門司のように活気のある街でもない。長崎のように美しい街でもない。佐世保のように女のひとが美しい町
長崎の、長崎の
長崎の、長崎の
にひっくり返してみると懐しい昔の夢が段々蘇って来る。長崎の黄いろいちゃんぽんうどんや、尾道の千光寺の桜や、ニユ川で覚えた
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。母は他国者と一緒になったと云うので、鹿児島を追放されて父と落ちつき場所を求めたところは、山口県の下関と
の遺物だ。貴方と私は同じ郷里なのですよ。鹿児島が恋しいとはお思いになりませんか。霧島山が、桜島が、城山
させて赤い唇を鳴らしている。秋田とサガレンと、鹿児島と千葉の田舎女達が、店のテーブルを囲んで、遠い古里に手紙を
透かしては、私の頭の虱を取ってくれた。鹿児島は私には縁遠いところである。母と一緒に歩いていると、時々
程あわせて、私たちは毎日せっせと帯封書きだ。今日は、鹿児島と熊本を貰う。まだ時間が早いので、窓ぎわで池田さんと、宮本
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今の私の父は養父である。このひとは岡山の人間で、実直過ぎるほどの小心さと、アブノーマルな山ッ気とで
しばらくして父は祖父が死んだので、岡山へ田地を売りに帰って行った。少し資本をこしらえて来て、唐津物
絶体絶命のどんづまり故、沈黙って汽車に乗るより仕方がない。岡山まで切符を買ってやる。薄い灯の下に、下関行きの急行列車が沢山
られはしない。――家へ帰ると、母は、岡山の祖母がキトクだと云う電報を手にしていた。私にも
呼びあっている。私は宿のお上さんに頼んで、岡山行きの途中下車の切符を除虫菊の仲買の人に一円で買ってもらうと
逢いたいものなり。英子さんの旦那さんより十円かりる。岡山まで行きさえすれば、帰りは何とかなるだろう。昼、西片町に荷物
行かないかと云う。大阪へ行く気はしないけれど、岡山へは帰りたい。久しぶりに、母にも逢いたいものなり。英子さんの
つづけていたいようなのんびりさだ。汽車に乗って、岡山へ帰るなぞとは昨日まで考えつかなかった事だけに愉しくて仕方がない。
岡山の内山下へ着いたのが九時頃。橋本では、まだみんな起き
のか、誰も尋ねてはくれない。それも助かる。岡山は静かな街だとおもう。どおんとしたなぎ。むし暑くて寝る気が
遠い昔のことのような気がして来る。義父が岡山の鶴の卵と云う菓子を買って来てくれた事を思い出した。
広島も岡山も商売は不景気な由なり。
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。夜は近所の貸本屋から、腕の喜三郎や横紙破りの福島正則、不如帰、なさぬ仲、渦巻などを借りて読んだ。そうした
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もう一度チエホフを読んでもいいのにと思った。京都のお女郎の話なんか、私には縁遠い世界だ。
「実家は京都の聖護院の煎餅屋でな、あととりやけど、今こっちい来て市役所へ
かも水っぽい舌ざわりだ。東京は悲しい思い出ばかりなり。いっそ京都か大阪で暮してみようかと思う……。天保山の安宿の二階で
さんの手紙をもらって、私は何もかも投げ出して京都へ行きたくなっていた。
て京都へ発って行った。――午後六時二十分京都着。お夏さんは黒いフクフクとした肩掛に蒼白い顔を埋めてむかえに
お店から一日ひまをもらうと、寒い風に吹かれて京都へ発って行った。――午後六時二十分京都着。お夏さんは
は子供のようにしっかり手をつなぎあって、霧の多い京都の街を、わけのわからない事を話しあって歩いた。京極は昔の
京都はいい街だ。夜霧がいっぱいたちこめた向うの立樹のところで、夜鳥
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を始めたのか、ジロジロ私の様子を見ている。下谷の寿司屋の女中さんの口に紹介をたのむと、一円の手数料を五十
気持ちがよくなったら、この五円を階下へあげて、下谷の家を出ようと思う。
も沓下もステテコもなかなか売れそうにもない。オッカサンは下谷までお使い。
下谷の根岸に風鈴を買いに行き、円い帽子入れに風鈴を詰めて貰って
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いた。新らしい土地へ降りてみたいなと思うなり。静岡にしようか、名古屋にしようか、だけど何だかそれも不安で仕方
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千も万も叫びたいほど、いまは切ない私である。高松の宿屋で、あのひとの電報を本当に受取った私は、嬉し涙を流し
の寝ざめなり。郷愁をおびた土佐節を聞いていると、高松のあの港が恋しくなってきた。私の思い出に何の汚れもない
の人に一円で買ってもらうと、私は兵庫から高松行きの船に乗る事にした。
煎餅を一箱買うと、私は古ぼけた兵庫の船宿で高松行きの切符を買った。やっぱり国へかえりましょう。――透徹した青空
久し振りで見る高松の風景も、暑くなると妙に気持ちが焦々してきて、私は
やしない。何も考えようがないのだ。昨日は高松のお母さんへ電報ガワセを送ったし、私はこうして海の息を
鉄を打つ音がひびいていた。尾道についたら半分高松へ送ってやりましょう。東京へかえったら、氷屋もいいな、せめて暑い
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をした。怪談なんかに話が飛ぶと、たい子さんも千葉の海岸で見た人魂の話をした。この人は山国の生れな
て赤い唇を鳴らしている。秋田とサガレンと、鹿児島と千葉の田舎女達が、店のテーブルを囲んで、遠い古里に手紙を書いて
の鼾も平らだ。お計さんは子供の病気で昨夜千葉へ帰って留守だった。――私達は学生や定食の客ばかりでは
。娘はお信さんと云って、お天気のいい日は千葉から木更津にかけて魚の干物の行商に歩くのだそうである。店
に論文を書いたと云う。中央公論ってどんなのさ。千葉亀雄がおじさんだとかで、この人の紹介だそうだ。別に
千葉亀雄さんが親類だと云うのだから、あのひとに話してみようかと
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秋田から来たばかりの、おみきさんが鉛筆を嘗めながら眠りこんでいる。酒場
真黒な眼をクルクルさせて赤い唇を鳴らしている。秋田とサガレンと、鹿児島と千葉の田舎女達が、店のテーブルを囲んで、
ミシンのペタルを押している。毎日の生活断片をよくうったえる秋田の娘さんである。古里から十五円ずつ送金してもらって、あとは
、漱石の墓にお参りした事もあった……。秋田氏は風邪を引いていると云って鼻をかみながら出ていらした。
、とにかく私は街に出てみたのだ。訪問先は秋田雨雀氏のところだった。この頃の御感想は……私はこの言葉を
取りが談話がとれなくて、油汗を流していると、秋田さんは二三枚すらすらと私のノートへ手を入れて下すった。お寿司
優しく遇してくれた女の人を知らない。二階の秋田さんの部屋には黒い手の置物があった。高村光太郎さんの作で
秋田氏は楽し気にコツコツ靴を鳴らしている。
。変ったマダムだって誰かに聞いたことがある。秋田氏はそのまま銀座へ行かれた。
は何とした事であろう。五円もあれば、秋田米のぱりぱりが一斗かえる。ほっこりとたきたてに、沢庵をそえてね。
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と思いながら、古い蚊帳の中に、樺太の女や、金沢の女達と三人枕を並べているのが、私には何だ
「お姉さん! 私金沢へ帰るのよ、パパからの言伝けなの、そこはねえ、皆他人
をくっつけて歩いている女が、もう二時間もすれば金沢へ行く汽車の中だなんて、本当にこのベニコがみじめでありませんよう
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たよりが来て、こちらも随分寒くなった。屋並の低い徳島の町も、寒くなるにつれて、うどん屋のだしを取る匂いが濃く
町隅に、古ぼけた旅人宿を始め出して、私は徳島での始めての春秋を迎えたけれど、だけどそれも小さかった時の
もたない私達親子三人が、最近に落ちついたのがこの徳島だった。女の美しい、川の綺麗なこの町隅に、古ぼけた旅
とはよくつけたものなり。私の母さんは阿波の徳島十郎兵衛。夕御飯のおかずは、いつもの通りに、するめの煮たのに
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「神戸にでも降りてみようかしら、何か面白い仕事が転がっていやしないか
明石行きの三等車は、神戸で降りてしまう人たちばかりだった。私もバスケットを降ろしたり、食べ残りの
製ってあげますよ。」本当にこの人は好人物らしい。神戸に家があって、九人の子持ちだとこぼしていた。
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玉づけをならって行く事だった。相棒の彼女は、岐阜の生まれで小学校の教師をしていたとかで、ネーと云う言葉
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利秋君が、富山の薬袋に米を一升持って来てくれる。この男には、何度
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それから、一日に三里ずつ歩けば、何日目には巴里に着くだろう。その間、飲まず食わずではいられないから、私
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のところも一銭もないのだと云う。恭ちゃんは前橋へ金策の由なり。
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いわれを妙な事だと思う。――奥さんは近いうち新潟へ帰郷の由。早くこの家を出なければならぬ。
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て、私たちは毎日せっせと帯封書きだ。今日は、鹿児島と熊本を貰う。まだ時間が早いので、窓ぎわで池田さんと、宮本さんと
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きものは小さいのが一きれ、あとは玉葱ばかり。飯は宇都宮の吊天井だ。
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いる。辛抱強く。何事も辛抱強くだ。いざという時には、甲府行きの汽車にひかれて死ぬ事も賑やかな甘酢っぱい空想。だが、神
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講談を書こうと思い始める。漱石調で水戸黄門。藤村調で唐犬ゴンベエ。鴎外調で佐倉ソウゴロ。はっしはっしと切り結ぶと
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広島も岡山も商売は不景気な由なり。
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新宿の旭町の木賃宿へ泊った。石崖の下の雪どけで、道が餡こ
夕方新宿の街を歩いていると、何と云うこともなく男の人にすがり
が、私は一番愉しい。五月の埃をあびて、新宿の陸橋をわたって、市電に乗ると、街の風景が、まことに天下
を一台頼んでもらうと、二人は約束しておいた新宿の八百屋の二階へ越して行った。自動車に乗っていると、全く
風をうけて、若松町の通りを歩いていると、新宿のカフエーにかえる気もしなかった。ヘエ! 使い果して二分残る
「とても面白かったわ、新宿の待合室で四人も私を待っていたわよ、私は知らん
ひとりで、新宿の街を歩いた。
「新宿まで行くんですが、大丈夫でしょうかね。」
二階に臥せっていた。――又明日から私は新宿で働くのだ。まるで蓮沼に落ちこんだように、ドロドロしている私で
新宿の以前いた家へ行ってみた。お由さんだけがのこっていて
、長い手紙を書きたかったけれど、紙もインクもない。新宿の甲州屋の陳列のなかの万年筆が、電信柱のようににゅっと眼に浮ぶ
新宿までの電車賃をけんやくして、鳴子坂の三好野で焼団子を五串
新宿の通りはがらんとしている。花屋のウインドウに三色すみれや、ヒヤシンス
夕方新宿へ帰る。行くところもないので店へ戻る。二階で勝ちゃんが
―芸妓募集、年齢十五歳より三十歳まで、衣服相談、新宿十二社何家と云う風に申込みの人の註文を三行に縮めて
暗くなったので、やぶれかぶれで、四谷から夜店を見ながら新宿まで歩く。
歩く。焼鳥の匂いがしている。夜霧のなかに、新宿まで続いた夜店の灯がきらきらと華やいで見える。旅館、写真館、うなぎ屋、
、大久保へ出て、浄水から、煙草専売局へ出て、新宿まで歩く。油照りのかあっとした天気だ。抜弁天へ出て、一
古い文章倶楽部を出して読む。相馬泰三の新宿遊廓の物語り面白し。細君はとり子さんと云うのだそうだが、
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お母さんだけでも東京へ来てくれれば、何とかどうにか働きようもあるのだけれど
故郷へ帰りたくなって来た。目当もないのに東京でまごついていたところで結局はどうにもならないと思う。電車を
も糞もあったものではない。ピンからキリまである東京だもの。裸になりついでにうんと働いてやりましょう。私はこれよりも
誰も知人のない東京なので、恥かしいも糞もあったものではない。ピンからキリまで
のである。あああの十四円は九州へとどいたかしら。東京が厭になった。早くお父さんが金持ちになってくれるといい。九州も
久し振りに東京へ出て行った。新潮社で加藤武雄さんに会う。文章倶楽部の詩の
たらしい。子供は朝鮮のお母さんにあずけて、新らしい男と東京へ流れて来ると、お由さんはおきまりの男を養うためのカフエー生活
ピヤノをならわせてくれたのよ。ピヤノの教師っても東京から流れて来たピヤノ弾き。そいつにすっかり欺されてしまって、私子供
云って、八端のドテラをかたみに置いて俊ちゃんは東京をたってしまった。私は朝から何も食べない。童話や詩を
くる。――ああ、何もかもに負けてしまった。東京を遠く離れて、青い海の上をつっぱしっていると、色々に交渉の
仕事になってしまった。父を捨て、母を捨て、東京に疲れて帰ってきた私にも、昔のたどたどしい恋文や、ひさし髪の
東京へ行きましょう。夕方の散歩に、いつの間にか足が向くのは
淋しい喜劇である。ああ、東京の友達がみんな懐しがってくれるような手紙をいっぱい書こう。
東京へ旅立つその日
黒豆がならんでいる。何もかも水っぽい舌ざわりだ。東京は悲しい思い出ばかりなり。いっそ京都か大阪で暮してみようかと思う……
ハガキをみつめて、いつからか覚えた俳句をかきなぐりながら、東京の沢山の友達を思い浮べていた。皆どのひとも自分に忙がしい人ばかり
「東京からどうしてこっちへお出やしたん?」
出鱈目の原籍を東京にしてしまった私は、一寸どう云っていいのかわからなかった。
、もう日が暮れて、船が沢山はいっていた。東京のお君ちゃんからのハガキが来ている。
東京で吸う赤い味噌汁はなつかしい。里芋のコロコロしたのを薄く切って、小松菜
今朝はるばると幾十日目で又東京へ帰って来たのではないか。
寄って来ている。人生鳩に生れるべし。私は、東京の生活を思い出して涙があふれた。
「東京はもう地震はなおりましたかいな。」
てよこして、恋を教えてくれた男じゃないか、東京へ初めて連れて行ったのもあの男、信じていていいと言った
ないがの……サイナンと思うてお母さん達と一緒に又東京へ行った方がええ。」
私は男と初めて東京へ行った一年あまりの生活の事を思い出した。
姿を思い出すなり。梨のつぶてのように、私一人を東京においてけぼりにすると、いいかげんな音信しかよこさない男だった。
、二度目の尾道帰りをいつもよろこんでいて、母は東京の私へ手紙をよこしていた。帰ってみると、家は違って
。あのひととはもう三カ月も会わないのだもの、東京での、あの苦しかった生活をあのひとはすぐ思い出してくれるだろう……。
れると、少女らしく涙があふれた。尾道でのはなし、東京でのはなし、私は一年あまりのあのひととの暮しを物語って見
、田舎でこそ知人の世話で仕事があるんだが、東京なんかじゃ、大学出なんか食えないんだからね。」
私は沈黙って泣いていた。東京での一年間、私は働いてこの男に心配かけないでいた心づかい
云うんじゃありませんもの。私はそのうち又ひとりで東京へ帰ります。」
言おうと思っていた気持ちが、もろく叩きこわされている。東京で描いていたイメージイが愚にもつかなかったと思えて、私は
お養父さんは、東京行きの信玄袋をこしらえている私の後から言った。
へおっても仕様のない事じゃし、いずれわし達も東京へ行くんだから、早くやっても、同じことじゃがな。」
いつまでも私の心から消えないお母さん、私は東京で何かにありついたらお母さんに電報でも打ってよろこばせてやりたいと
この広場の人達がタイキャクするまでいますよ、僕は東京が原始にかえったようで、とても面白いんですよ。」
ツルツルした富久娘のレッテルの裏に、私の東京の住所と姓名と年齢と、行き先を書いたのを渡してくれた。
はね、外国航路の厨夫だったんですが、一度東京の震災を見たいと思いましてね、一と船休んで、こっちに
ので誰も信用をしてくれないのです、だから東京に原籍を書きなおすと、非常に肩が軽くて、説明もいらない。
「東京ですの。」
……。だが、何年と見きわめもつかない生活を東京で続けていたら、私自身の姿もあんな風になるかも知れないと
でしょう、初め田舎からみっちり修業してかかれば、いつだって東京へ帰れるじゃないの、お姉さんも一緒にやらない。」
「昨日、信越の旅から来たのですか、東京はあたたかですね。」
「忘れないわ、二三年あっちでくらして、ぜひ東京へ来ようと思うの、田舎の生活なんて見当がつかないわ。」二人は
のかなたになった。二週間の労働賃銀十一円也、東京での生活線なんてよく切れたがるもんだ。隣のシンガーミシンの生徒?さんが
両親をかかえた私は、当もなく、あの雑音のはげしい東京を放浪していたのだけれど、ああ今は旅の古里である尾道
があったけれど……。「ねえ、お母さん! 私達の東京行きに火が燃えるのは、きっといい事がありますよ。」しょぼしょぼし
貧しい私達親子三人が、東京行きの夜汽車に乗った時は、町はずれに大きい火事があったけれど…
そっと自分の腕にはめてみた。涙があふれた。東京で苦労した事や、裸で門を壊していた昼間の職工達
ても、どこにも仕様のない事だらけなのだ。東京へ帰ろう。私の財布は五六枚の十円札でふくらんでいた。
いた。尾道についたら半分高松へ送ってやりましょう。東京へかえったら、氷屋もいいな、せめて暑い日盛りを、ウロウロと商売を
あの東京の下宿で、男は私に思い知れ、思い知れと云う風な事を云うの
「ね、東京にかえりたくなったわ。」
―ここのマダム・ロアは、独逸人で、御亭主は東京に独逸ビールのオフィスを持っている人だった。何時も土曜日には帰って
とこの人に紹介されて来たので、本当は東京へ帰りたいんだけれど、遠慮をしていたのよ。」
、私はまるでお伽話のような蛙の声を聞いた。東京の生活の事、お母さんの事、これからさきの事、なかなか眠れない。
眠っている。もらい一円たらず、私も坊や達と東京へ帰ろうと思う。
スヴニールのレコードをかけていた。マダム・ロアは今日は東京へ外出していない。椅子を二つ並べてコックはぐうぐう眠っている
バナナをむきながら、お君さんがこう言ってくれた。東京へ行ったところで、ひねくれたあの男は、私を又殴ったり叩いたり
どっか遠い旅に出たいものだと思う。真実のない東京にみきりをつけて、山か海かの自然な息を吸いに出
「ああ俺アつまらねえ、東京へ帰って、いまさんの座にでもへえりていや、いつまでこう
世界だろう。煤けた駅のベンチで考えた事は、やっぱり東京へかえる事であった。私が死んでしまえば、誰よりもお母さんが
、母は国を出て三十年にもなるのに、東京の真中で平気でつかっているのだ。――長い事たよりのなかった
患っているもののみの東京!
は何百里も遠い。まるで、虫けらみたいな生きかただ。東京には、いっぱい、いい事があると思ったけれど何もない。
私も背中に雑貨を背負って歩いている。全く暑い。東京は暑いところだ。
ごとに、大量に人がふえてゆく。悲劇の巣は東京ばかりでもあるまい。田舎の女学校では、ピタゴラスの定理をならい、
芳さんから手紙。思わしくないので、正月前に、また東京へ戻りたい由。子供は風邪ばかり引いて、百日咳のひどいのにかかっ
仕入れたので、それを東京で売るのだそうだ。東京には百貨店と云う便利なものがあるのを知らないのだ。夜店で
父は輪島塗りの安物を仕入れたので、それを東京で売るのだそうだ。東京には百貨店と云う便利なものがあるの
「東京も不景気かの?」
か……。左団次の桐一葉の舞台が瞼に浮かぶ。ああ東京はいろんな事があったと思う……。辛いことばかりのくせに、辛い
東京の哀愁を歌うにふさわしい寒々とした日。足が冷いので風呂を
薄曇り四年にわたる東京の
行く。汽車へ乗る事も久しぶりだけれども、何となく東京へなごりおしい気持ちなり。別れた人が急になつかしくなって来る。八十銭
人もまばら。ホームを涼しい風が吹いている。流暢な東京言葉にもお別れ。横浜を過ぎる頃から車内がひっそりして来る。山北
だけれど、この汽車に乗れる幸福はまことに有難いことだ。東京へ再び来る事があったら十円は身を粉にしても返さなけれ
の話なぞは、夢のような事なのでやめる。東京での様々を打明けたらこのひとは驚くであろう。
中根さん、カインの末裔を読んだかと云う。私は東京の生活が荒れているので、そんな静かなものは読んではいられ
中根さんも東京へ行きたいとぽつりぽつり話しているけれども、私はうわのそらで、銅貨を数える
東京は景気はどうかの。東京は不景気です。俺も今度こそ、何とかしようとは思うンじゃが
東京は景気はどうかの。東京は不景気です。俺も今度こそ、何と
東京へ帰るには、二十円も工面しなければならぬと云う事が頭
母も、もう一度、東京へ出て夜店を出したいと云う。義父と別れてさえくれれば、私
、何の運命もない、風琴と魚の町の原稿を東京へ持って行ったところで、ぱっと華咲くようないい日が来ると
どうしても東京へ行きたいのだけれども、いまがいま、二十円の金つくりは出来
。うん、別れようかのう。別れなさいよ。そして、二人で東京へ行って、二人で働けば、毎日飯が食べられる。飯を食う事
うんうんと力まなければ生きてはゆけぬ。だが、東京で有名な詩人も、尾道では何のあとかたもない。それでよいの
来て、いつまでも同じ事のくりかえしなのである。東京で別れたところで、お義父さんはさしずめその日から困るンじゃからのう
ちらちらと人家の灯がまたたく。川添町と云ったところで、東京もここは郊外の郊外、大根畑の土の匂いが香ばしく匂う。
。石材を乗せて走っている。材木も乗っている。東京は大工の書きいれ時だ。あんな石なんかを走らせて、あの石の上
東京へ戻ったのが七時頃。雨が降っていた。
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昼から荷物を宿屋にあずけて、神田の職業紹介所に行ってみる。
がおくれていたのか、市電はとっくになかった。神田から田端までの路のりを思うと、私はがっかりして坐ってしまいたい
来たんたけれど、浅草の占師に見てもらったら、神田の小川町あたりがいいって云ったので来たのだと云ってい
来たという気持ちです。随分長い事会いませんね、神田でお別れしたきりですもの……。もう、しゃにむに淋しくてならない、
の女の姿はこの男には却って好都合なのだろう。神田の三崎町のホテルに事務所があると云うのでついて行ったけれど、出
美人はざくざく。只若いだけではどうにもならない。神田の古本屋でイバニエスを売る。二十銭にうれる。四十銭が二十銭に下落
運を天に任せて渋谷へ出て、それから市電で神田へ出てみる。街は賑やかで、何処も大売出し。明るい燈火が夜空に
いっその事、神田の職業紹介所まで行って、また、あの桃色カードの女になってみようか
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で眉ずみをつけてみた。――午前十時。麹町三年町の伊太利大使館へ行ってみた。
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いとしいお母さん! 大久保百人町の派出婦会に行ってみる。中年の女の人が二人、店
これだけあれば一二カ月は黙って暮らせるのだと思う。大久保の家主は大きい植木屋さん。帳面に受取りの判こを貰って、お茶を
朝、大久保まで使いに行く。家賃をとどけに行くのだ。いくらはいっているの
のようないい天気をとりにがすのも変な話だと、大久保へ出て、浄水から、煙草専売局へ出て、新宿まで歩く。油照りの
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何でもこのひとの父親は日本橋で薬屋をしているとかで、私の仕事は薬見本の整理で
はくらい、いつでも鬼メが窓からのぞく。二人は日本橋の上に来ると、子供らしく欄干に手をのせて、飄々と飛んで
お江戸日本橋のマークのはいった
――娘があなた、お江戸の日本橋から買って送って呉れましたが、まあ一ツお上りなして
日本橋に立ちました。
日本橋! 日本橋!
日本橋! 日本橋!
日本橋はよいところ
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。まだ気のきいた春の唄があるなり。いっそ、銀座あたりの美しい街で、こなごなに血へどを吐いて、華族さんの自動車に
。もっと勉強して立派な詩を書こうと思う。夕方から銀座の松月と云うカフエーへ行った。ドンの詩の展覧会がここであるから
「着物が一二枚出来たら、銀座へ乗り出そうかしらと思っているのよ。」
たものと美しいものとけじめのつかない錯覚だらけのガタガタの銀座よ……家へかえったら当分履歴書はお休みだ。
た。銀座の鋪道が河になったら面白いだろうと思う。銀座の家並が山になったらいいな、そしてその山の上に雪が光っ
のような細い鮎が、何尾も泳いでいた。銀座の鋪道が河になったら面白いだろうと思う。銀座の家並が山になっ
ような女達に別れて、銀座まで歩いてみた。銀座を歩いていると、なぜか質屋へ行くことを考えている。とある陳列
私はこの魚群のような女達に別れて、銀座まで歩いてみた。銀座を歩いていると、なぜか質屋へ行くこと
って誰かに聞いたことがある。秋田氏はそのまま銀座へ行かれた。
、お父さん家にいるよ、お婆ちゃんも、小母ちゃんも銀座の方にこの頃通って、とても夜おそいの、だから僕だの父ちゃんが
その後銀座の方に働いていたと云うお君さんには若い学生の恋人が
から街はりょうあんである。昼からたい子さんと二人で銀座の方へ行ってみた。
が唯一の理想のように云った。歩けるだけ歩きましょう。銀座裏の奴寿司で腹が出来ると、黒白の幕を張った街並を足
銀座へ出て滝山町の朝日新聞に行く。中野秀人と云うひとに逢う。花柳はるみ
女の詩なんか、どこの新聞社だって迷惑なのだ。銀座通りを歩く。
銀座の滝山町まで歩く。昼夜銀行前の、時事新報社で出している、少年少女
したのだそうだ。死傷者多数ある見込み……。銀座の鋪道はなまめかしくどろどろに暑い。太陽は縦横無尽だ。新聞には、株で
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今頃はどこへ散乱して行っていることだろう――。日暮里の金杉から来ているお千代さんは、お父つぁんが寄席の三味線ひき
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もない。正反対の電車に乗ってしまった私は、寒い上野にしょんぼり自分の影をふんで降りた。狂人じみた口入屋の高い広告燈
に行ってみる。夕方ポーチで犬と遊んでいたら、上野山と云う洋画を描く人が遊びに来た。私はこの人と会う
精励を祈りまつる。――私は窓をいっぱいあけて、上野の鐘を聞いた。晩はおいしい寿司でも食べましょう。
今日は風強し。上野の桜は咲いたかしら……桜も何年と見ないけれど、早く若芽
上野の桜、まだ初々たり。
たってかまいはしない。風呂敷包み一つの私が、上野から信越線に乗ると、朝の窓の風景は、いつの間にか
「吉さん! 上野へ連れて行っておくれよ。」
は御飯がたべたい。荒れてザラザラした唇には、上野の風は痛すぎる。子供のスケート遊びを見ていると、妙に切
茅町から上野へ出て、須田町行きの電車に乗る。埃がして、まるで夕焼みたい
夜、上野の鈴本へ英子さんと行く。
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ていたのか、市電はとっくになかった。神田から田端までの路のりを思うと、私はがっかりして坐ってしまいたい程悲しかっ
「すみませんが田端まで帰るんですけれど、貴方のお出でになるところまで道連れになって戴け
そうして、はち切れそうな土産物を抱いて、いま、この田端の家へ帰って来たはずだのに――。半月もたたないうち
は勤め人なので九時頃には寝てしまう。時々田端の駅を通過する電車や汽車の音が汐鳴りのように聞えるだけで、
、気の毒に思えて仕方がなかった。私はこの男と田端に家を持った時、初めて肩上げをおろしたのを覚えている。「
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なので五十里さんと静栄さんと三人で久しぶりに、吉祥寺の宮崎光男さんのアメチョコハウスに遊びに行ってみる。夕方ポーチで犬と遊ん
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が多いものだ。激しい雨の中を、私の自動車は八王子街道を走っている。
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んたけれど、浅草の占師に見てもらったら、神田の小川町あたりがいいって云ったので来たのだと云っていた。
、これはまるで切実な一つの漫画のようだった。小川町の停留所で四五台の電車を待ったけれど、登校時間だったせいか来る
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て、友達にいじめられて出て来たんたけれど、浅草の占師に見てもらったら、神田の小川町あたりがいいって云ったの
話をしていたが、正直な人と思った。浅草の大きなカフエーに居て、友達にいじめられて出て来たんたけれど
浅草はいつ来てもよいところだ……。テンポの早い灯の中をグルリ
浅草は酒を呑むによいところ。浅草は酒にさめてもよいところだ。一杯五銭の甘酒、一杯五
浅草は酒を呑むによいところ。浅草は酒にさめてもよいところだ。
、明日からうんと働くから元気を出して勉強してね。浅草を止めて、日比谷あたりのカフエーなら通いでいいだろうと思うの、酒の
して下さい。指輪をもらった人に脅迫されて、浅草の待合に居ります。このひとにはおくさんがあるんですけれど、それ
所を知らせないで。浅草の待合なんて何なのよッ。
「ねイ! 林さん、今晩須崎さんがねイ、浅草をおごってくれるんですって……」
なかった。小屋を出ると、ラムネとアイスクリーム屋の林立の浅草だ。上州生れのこの重役は、「ほう! お祭のようだんべえ。
二人で浅草へ来た時は夕方だった。激しい雨の降る中を、一軒一
浅草の都寿司にはいると、お酒を一本つけてもらって、私達は
」浅草はいい処だと思うなり。灯のつき始めた浅草の大提灯の下で、私の思った事は、この二円十銭
を食いあきたから、こんどは、空を食うつもりです。」浅草はいい処だと思うなり。灯のつき始めた浅草の大提灯の下
にてらしあわせてとっくりとよくお考えの程を……ところで浅草のシャアローは帽子を振って言いました。「地上のあらゆるものを食いあきた
です。そんなことをどっかの屋根裏作家が云いました。浅草は下品で鼻もちがならぬとね。どのお方も一カ月せっせと豚の
浅草へ行った。浅草はちっぽけな都会心から離れた楽土です。そんなことをどっかの屋根裏作家
浅草へ行った。浅草はちっぽけな都会心から離れた楽土です。そんなことを
浅草の真中の劇場の中で久し振りに、私は別れた男の声を聞い
浅草に行く。
浅草はいいところだ。
一晩じゅう浅草を歩いていたい。
私はおかしくなった。浅草に夜が来た。みんな活々と光る。楽隊は鳴りひびく。風はまことに
でおいた口入所へ行く。稲毛の旅館の女中と、浅草の牛屋の女中の口が一番私にはむいている。
さんは、子供づれで稲毛へ行くと云うし、私は浅草がいいときめた。何も遠い稲毛の旅館の女中にならなくても
浅草の古本屋で、文章倶楽部の古いのをみつけて買う。黄いろい色頁の広告
浅草へ行く。公園のなかで、うどんを一杯ずつ食べて、ついでに腹
浅草は人の波、ゆくえも知らぬさすらい人の巷なりけり。
横寺町の狭い通りを歩きながら、私は浅草のヨシツネさんの事をふっと思い浮べた。プラトニックラブだよと云ったヨシツネさん
好晴なり。ヨシツネさんを想い出して、公休日を幸い、ひとりで浅草へ行ってみる。なつかしいこまん堂。一銭じょうきに乗ってみたく
もない散歩でございます。少々は酔い心地。まことに、なつかしい浅草の匂い。淡嶋さまの、小さい池の上の橋のところに出て少し休む。
酔いどれでいっぱい。辻潤の禿頭に口紅がついている。浅草のオペラ館で、木村時子につけて貰った紅だと御自慢。集まる
申込みの人の註文を三行に縮めて受付けるのだ。浅草、松葉町カフエードラゴン、と云うのが麗人求むなのだから、私は色々
誰かが日本のモンマルトルだと云った。私には、浅草ほど愉しいところはないのだ。八ツ目うなぎ屋の横町で、三十銭の
夜、独りで浅草に行く。ジンタの音を聴くのは気持ちがいい。誰かが日本の
みる。天幕のなかで広告とりをしていた夢、浅草の亀。物柔らかな暮しと云うものは、私の人生からはすでに燃えつくし
正木不如丘編輯の四谷文学という古雑誌と、藤村の浅草だよりという感想集三冊を八十銭で求める。獄中記はもうぼろぼろなり
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から元気を出して勉強してね。浅草を止めて、日比谷あたりのカフエーなら通いでいいだろうと思うの、酒の客が多いんだ
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「そうですか、水道橋までおくってあげましょうか。」
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十四円七十三銭也。八ツ山ホテル、品川へ行ったのかしら、二人で十四円七十銭、しかもこれが四日間の
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東中野と云うところへ新聞を見て行ってみた。近松さんの家にい
よくもこんなに売るものがあると思うほどなり。今日は東中野まで歩いて帰るつもりで、一杯八銭の牛丼を屋台で食べる。肉
東中野のボックスのような小さい駅へ出て、釣り堀の藪の道の方へ
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上野広小路のビールのイルミネーションが暗い空に泡を吹いている。宝丹の広告燈も
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渋谷の百軒店のウーロン茶をのませる家で、詩の展覧会なり。
たらおしまいだと思ったけれども、運を天に任せて渋谷へ出て、それから市電で神田へ出てみる。街は賑やかで、
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にうれる。四十銭が二十銭に下落してしまった。九段下の野々宮写真館のとなりの造花問屋で女工募集をしている。何しろ手さき
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合羽橋へ出て、頼んでおいた口入所へ行く。稲毛の旅館の女中と、浅草の牛屋の女中の口が一番私にはむい
なかったし、第一、それが本当ならば、何も稲毛まで行く事もあるまい。
筈だと思うのだけれど、お芳さんは、馬鹿に稲毛が気にいっている。子供が小児ぜんそくと云うので、海辺で働い
云うし、私は浅草がいいときめた。何も遠い稲毛の旅館の女中にならなくてもいい筈だと思うのだけれど、お
お芳さんは、子供づれで稲毛へ行くと云うし、私は浅草がいいときめた。何も遠い稲毛
がして来る。お芳さんは今日は子供を連れて稲毛へ行ったかしら……。私はここにいられるだけいて、その上
ない。もう、とっくに近眼になっているのだもの。稲毛のお芳さんから手紙。思わしくないので、正月前に、また東京へ
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おかしいのか私には判らない。酔ったまぎれに、紺屋高尾を唸ってみせる。みんな驚いている。
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私は洋服を見たり、賑やかな神保町の街通りを見たりして、仲々考えがさだまらなかった。やっとの思い
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飯田橋まで歩いて、松竹食堂と云うのにはいる。卓子は砂ぼこり。丼飯にしじみ汁
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云う。私はさんばしの方までおよぐ。燐が燃える。向島のドックで、人の呼んでいる声がしている。こんなことでは
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と云ってみる。征露丸を飲みたいと云うけれど、大宮の町には遠い。
が啼いている。荷物に凭れて、暫く休む。今夜は大宮へ泊りたいのだけれども、我まんして帰れば帰れない事もないの
大宮の町へ行って銭湯にはいりたくなった。下駄をぬぐと、鼻緒の
大宮の町へ出たのは三時。どおんと暑い。八百屋の店先きに
て町角を曲る。お母さんは影もかたちも見えぬ。どうせ大宮の駅で逢えばいいのだ。
大宮は少しも面白くない町なり。
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。一銭じょうきに乗ってみたくなる。石油色の隅田川、みていると、みかんの皮、木裂、猫のふやけたのも