草津 甲府 長野 新潟 麹町 三鷹 東京 新宿 上野

たンだよ。でも、半年ばかり、お母さん達と、草津の方に疎開してたの……。」

「ほう……草津にねえ、どうですか？　あすこは、宿屋は繁昌していますか？

ちゃんだけは、お父さんがビルマで戰死して、お母さんは甲府の疎開さきで病氣で亡くなって、お姉さんと二人で東京へ戻って來た

「長野まで行って、それから、湯田中と云う温泉場へ行くンでね。」

、揉みりょうじを頼む人もあまりないので、これから、長野の温泉場をまわってみると云うことだった。温泉にも組合があって

「上野へ着いて、二時何分の新潟行きの行列のところまで、送って行ってあげよう。」

と、ここもものすごい人の波で、やっとの思いで、新潟行の行列を探すと、その行列はもうだいぶ並んでいた。それで

空襲前のころは、四人とも麹町×町の同じ町内にいたのだけれども、空襲で自分の町が

「僕は、前には、麹町にいたンだけど、燒けちゃったンだよ。でも、半年ばかり

繁ちゃんは三鷹の叔父さんの家にいた。

は甲府の疎開さきで病氣で亡くなって、お姉さんと二人で東京へ戻って來た。いまは池上の叔父さんの家にいる。

二人の話によると、東京では、家もないし、揉みりょうじを頼む人もあまりないので、

ていたので、見るもの聞くもの珍らしく、とうとう歩いて新宿驛に行ってみた。

新宿驛は、まるでもう人の河のようである。流れてゆく人の波

もどしながら、その女驛員に近よって行った。そして、新宿驛からのことを話そうとしたのだけれど、女驛員はみなまで

「上野まで行くんですが、切符はどこで買ったらいいのか判らなくなった

「さア、これ切符、僕、上野まで送って行って上げましょう。」

「上野から、君たち、何處へ行くの？」

「上野へ着いて、二時何分の新潟行きの行列のところまで、送って

は、いい事をしたと思うのだった。――上野へ着くと、ここもものすごい人の波で、やっとの思いで、新潟行

はしゃぎやの巖ちゃんは、盲目のひとを上野驛へ送って行った話は、なぜかしなかった。何だか、