多摩川 / 林芙美子
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十一時頃、二人は新宿まで戻つて來た。くみ子は牛込の藥王寺町に友人の家があると云ふので、周次はひとまづくみ子を
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周次は初めてくみ子に會つたのは大阪の叔父の家である。商人の娘で、女學校を出たばかりだが
周次の嫁にどうかと云ふことで、周次は母と大阪へ行つたついでに叔父の家でくみ子とみあひをしたのだつ
ない愉しさだつた。周次はそれから、一ヶ月あまりも大阪の叔父の家にゐたのだ。
早々には結婚式をしたらどうかと、周次の方で大阪の叔父へ相談の手紙を出した時、折返して來た叔父の手紙には
さつぱり判らなかつたので、周次の母がひとりでわざわざ大阪へ自分から樣子をききに出向いて行つたりもした。――大阪へ出向い
から樣子をききに出向いて行つたりもした。――大阪へ出向いて行つた母は、軈て間もなくぷんぷん怒りながら戻つて來て、
と、無性に大阪の叔父夫婦までを意氣地がないとののしつてゐるのであつた
ええ、ほんとですの……でも、近いうちに一寸大阪へ戻りますのよ。――だつて、私が主人のもの全部取つて
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やうな間柄になつた二人は、日がへりで奈良や京都にも遊びに行つたりした。周次が東京へ戻つて來ると、くみ子
も信じられない事だつた。しかも不思議なことには、京都の大學では周次と同じ法科で、卒業もいつしよだつた八田義之の
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許婚のやうな間柄になつた二人は、日がへりで奈良や京都にも遊びに行つたりした。周次が東京へ戻つて來ると
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ツヤは訛りがあるけど、何處だい、國は? 新潟?」
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「私、くみ子です……御無沙汰してをります。今日、東京へ出て參りましたの……」
驛へ預けつぱなしですの、――當分、私、東京にゐようと思つてゐるんですけど……」
のみれんはないでもない。――やがて、周次は、東京驛へくみ子を待たしておいて自分はオフイスへ戻つて行つた。さうし
した。周次が東京へ戻つて來ると、くみ子もすぐ東京へ遊びに來たりして、周次の家へ一週間も寢泊りしてゐ
で奈良や京都にも遊びに行つたりした。周次が東京へ戻つて來ると、くみ子もすぐ東京へ遊びに來たりして、周次の
何時だつたか、くみ子が風邪をひいて東京で二日ばかり寢ついたことがあつた。もう、明日は起きても
「私ね、本當は、東京で何かして働きませうと出て來たんですの……二三
東京訛りのある低い聲だつたが、何となく誘はれる聲音だつた。小柄
にはいこひの場所も、泣く場所もないのです。東京へ出て、友達の家へ參りましたが、ここへも私は
へ行きませう? 別に大した處ぢやないけど――東京つて、さてとなると、行くところがないんでねえ」
「東京へ出て來てなさるンですつて? ほんまですかいな?」
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をさせてゐた。――十一時頃、二人は新宿まで戻つて來た。くみ子は牛込の藥王寺町に友人の家があると
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東中野へ着いたのは一時ちかかつた。
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「信州つても小諸なんでございますよ」
やアいい處だね。――何だつたかな、小諸なる古城のほとり雲白くつて歌があつたな……山國のひと
「小諸、そりやアいい處だね。――何だつたかな、小諸なる
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私は居辛く、昨日、ある知人の紹介で、私は内幸町にある小さい商事會社の事務員になることが出來ました。月給は四拾